induction, deduction, abduction|1を聞いて∞,∞-categoryを知る
人類は全ての宇宙を観測するという帰納法(Induction)ではなく、手元にあるわずかな局所情報だけで宇宙全体を推測するという帰納法(Induction)と演繹法(Deduction)のハイブリッドな推論(Abduction)で発展してきた。つまり、宇宙の全ての粒子を集めることなしに、宇宙全体の形状がどうなっているのか、高い蓋然性で推測することができる。
例えば野球のピッチャーは、あらゆる環境で、あらゆる同じ形のボールを投げたことがないのに、ストライクゾーンに投げ込むことができるのは、inductionでもdeductionでもなく、abductionである。これをロボットにやらせようとすれば、風、雨、湿度、温度、打者の過去の統計など全て学習させないといけない。
つまり、局所で全体を推論するような隠れマルコフモデルにおけるビタビアルゴリズムのような復号手法が計算可能宇宙には備わっているのではないか。この点はLevyのReflection Principleやsolomonoffの完全性定理によって証明されている。
1を聞いて10を知るという諺があるが、実は1を聞いて∞,∞-categoryを知ることができる。
「数個の具体的な事例(帰納)」から、それらを一貫して説明できる「背後のルール」を見つけ出し、今度はそれを前提として「新しい推論(演繹)」を可能にする手法アブダクションと呼ばれる。
1. アブダクション(Abduction / 仮説的推論)
アメリカの哲学者パースが提唱した、帰納と演繹をくみわせた「第3の推論」です。
- 仕組み: 「驚くべき事実 B」が観察されたとき、「もし仮説 A が真であれば、B は当然の結果として説明がつく」と考え、仮説 A を導き出す推論です。
- 特徴: 帰納法が「事例の積み重ね」であるのに対し、アブダクションは「納得のいく説明(ルール)の発見」に重きを置きます。
- 例: * 観測(局所):「道が濡れている」
- アブダクション:「もし雨が降った(ルール)なら、道が濡れるのは当然だ。だから雨が降ったに違いない」
2. 仮説演繹法(Hypothetico-deductive method)
現代科学の標準的なプロセスです。「帰納でルールを立て、演繹で検証する」というハイブリッドな手法です。
- 帰納的段階: いくつかの観察事実から「普遍的なルール(仮説)」を思いつく。
- 演繹的段階: そのルールが正しいと仮定して、「それならば、まだ見ていない場所で○○という現象が起きるはずだ」と予測する。
- 検証: 予測が当たれば、そのルールは強化される。
3. アルゴリズム的記述:逆強化学習やプログラム合成
- プログラム合成 (Program Synthesis): わずかな入出力例(局所情報)から、それを生成した「プログラム(演繹的ルール)」を推定すること。
- 逆強化学習 (Inverse Reinforcement Learning): エージェントのわずかな振る舞い(局所情報)から、その背後にある「報酬関数(行動を支配するルール)」を推定すること。
4. 1を聞いて「法則」を知る
「1を聞いて10を知る」という諺は、せいぜい10倍の情報圧縮であるが、現代の数学、物理、コンピューティングは1を聞いて極大を知る、あるいは1を聞いて無限を知る、あるいは1を聞いて∞,∞-categoryという宇宙の生成前の濃度についても色分けしていく営みである。
「極めて少ないサンプルからのアブダクション」と言える。逆に、極めて少ないサンプルからのアブダクションをしていないとすれば、それはエントロピーの増大であり、すでに熱運動の散逸機構に巻き込まれており、意思決定できていないこととなる。
数個のデータポイント(帰納)を結び、マルティンレーフランダムネスの背後に潜む「最短のコルモゴロフ的アルゴリズム」を見つける。一度そのアルゴリズムが手に入れば、あとは隠れマルコフモデルにおけるビタビアルゴリズムのように、voevodskyのunivalence axiom、レヴィのreflection principle、ソロモノフの完全性定理のように、無限の可能性をシミュレート(計算)したのと同等のバイパス回路を獲得できるようになる。
この「ルールを発見する瞬間の跳躍と相転移」が、単なるデータの集計(帰納)とは異なる、知性の本質的な機能(アブダクション)による計算バイパスの旨みであり、個人レベルでも組織レベルでもオペレーティングレバレッジを生み出すことができる。

