意味経済の不思議さ
ビタミンB、プラセンタ、NMNなど美容注射のいろいろな商品について、医学的エビデンスよりも感染リスクなどが高いにも関わらず、口コミなどでバズることによって、プライシングパワーがつくのは不思議で、それにより、雇用が発生し、事務、看護師、医師が狭い300平米くらいの敷地に10人雇えるのは不思議である。これはベンチャーキャピタル業界に近い構造である。医師免許を持った医師が何人も集まり、協議した上で、薬剤の吟味をして調達をして商品化しており、それを消費者が買ってくれない場合は商品が維持できないが、消費者が買ってくれるから商品が維持できている。それがたとえ医学的エビデンスのないものであっても、構造的に購買されるというのは不思議な構造である。もしかすると、意味のないものであっても構造的に買うことが種の保存や多様性維持にとって重要なのかもしれない。
1. 医学的エビデンスと経済構造の乖離
ビタミンB注射、プラセンタ、NMNなどは、厳密な臨床試験による有効性エビデンスが乏しい一方で、口コミやSNSでの「効いた気がする」「美容に良い」というナラティブが強く作用します。この「主観的体験＋社会的証言」が、エビデンスよりも大きな購買動機になり、プライシングパワー（価格決定権）を生み出します。
つまり 科学的根拠ではなく、意味や物語が価格を決めている 構造です。
2. リスクと雇用創出の逆説
これらの施術は注射という医療行為を伴い、感染リスクなどが高いのに需要が強いのは矛盾に見えます。しかし、需要があることで安定した売上が生まれ、事務・看護師・医師など複数の雇用が、わずか300㎡の空間でも維持されます。
これは「エビデンスに基づく医療（EBM）」というよりも、市場が求めるものに応じたマイクロ経済圏を形成しているといえます。
3. ベンチャーキャピタル的な構造
これはベンチャーキャピタルの構造に似ています。
- 医師の集団意思決定 → VCの投資委員会
- 薬剤の調達・商品化 → 投資先企業の選定と育成
- 消費者が買えば存続、買わなければ消滅 → 投資案件がEXITすれば回収、失敗すれば損失
- 不確実だが高い利益率 → VC的リスク・リターンの非対称性
つまり、商品が「本当に効くか」よりも、市場に受け入れられるかが存続条件になっている。
4. 構造的消費と種の保存
「意味のないものでも構造的に買う」という点は、生物学的にも経済学的にも面白い示唆があります。
- 進化的多様性の確保：自然界でも「すぐに役立たない形質」が、将来的に生存に有利になることがある。
- 社会的実験の継続：人々が多様な商品やサービスにお金を払うことで、成功・失敗を問わずイノベーションの余地が広がる。
- 文化的意味生成：医学的効用よりも「安心感」「美意識の共有」「自己投資の物語」が、人間社会の維持に寄与する。
つまり、無駄に見える購買活動が、実は多様性維持や社会的実験の温床になっている可能性があります。
- 美容注射の市場は、医学的エビデンスよりも口コミや物語に基づく「意味経済」で動いている。
- 感染リスクなど医学的合理性に反しても、需要があれば小空間でも雇用と収益が維持できる。
- VCのように「集団が選び、消費者が支持すれば存続する」投資的構造を持つ。
- 無駄に見える消費は、多様性維持や文化的進化に寄与している可能性がある。
これはビットコインの購買動機とも似ている。ビットコインは実物経済とほとんどつながりがないので、毎日の決済に使われている米ドルと比べると通貨の耐用性が全く異なり、Reserve Currency やPayment Currencyとしてのストレステストはほとんどされていないが、ビットコインを持っていないことが何らかのリスクになると思わせている市場の力は美容業界やスタートアップ業界に似ている。
1. 実体経済との接続の希薄さ
- 米ドル：日々の決済・給与・貯蓄・投資など、実物経済と強固に結びついている。
- ビットコイン：ほとんど日常決済に使われず、耐用性のストレステストは未検証。
- 美容注射：医学的エビデンスに乏しいが、日常の健康維持ではなく「効いた気がする」「美容的満足」という主観的価値で成立。
👉 どちらも「実体経済的な必然性」は弱いが、市場が自己言及的に維持している。
2. 市場心理とリスク回避の逆説
- ビットコイン：「持っていないことがリスク」と思わせる集団心理。
- 美容注射：「やらないと老化する・損をする」というナラティブ。
- スタートアップ投資：「次のGoogleを逃したくない」というFOMO（Fear of Missing Out）。
👉 「効用があるから買う」というより、**「買わないことで取り残される不安」**が購買動機を作る。
3. ネットワーク効果と合意形成
- ビットコイン：ブロックチェーンという技術的基盤よりも、「多くの人が価値を認める」ことが本質。
- 美容注射：口コミ・インフルエンサーの推奨による社会的証言。
- スタートアップ：VCや市場が「これは将来伸びる」と合意することで資金調達が成立。
👉 いずれも 「機能的有効性」よりも「社会的合意の厚み」 に依存している。
4. 種の保存・多様性維持の観点
- ビットコイン：たとえ現時点で決済通貨にならなくても、法定通貨リスクや地政学リスクへの「実験的オプション」として多様性を提供。
- 美容注射：効用の証明はなくても、文化的実験や心理的充足の多様性を維持。
- スタートアップ：9割が失敗しても、残り1割がイノベーションを社会にもたらす。
👉 「無駄に見える投資や購買」が、進化やイノベーションのオプション価値を持つ。
まとめ
- ビットコイン、美容注射、スタートアップ投資はいずれも 「実体的効用よりも、意味・物語・合意によって存続する市場」。
- そこでは「持たないこと」「参加しないこと」自体がリスクとされる。
- 経済合理性よりも、FOMOとネットワーク効果が価値を創る構造を持つ。
- 無駄に見えても、その多様性が種や社会の存続に寄与する。