スタートアップが失敗する理由は収益拡大アルゴリズムの機能不全である

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スタートアップが失敗する理由は収益拡大アルゴリズムの機能不全である

TANAAKK創業からの13年間の間ではいろいろな対照実験をしてみた。

  • 収益拡大アルゴリズムがない事業
  • 収益拡大アルゴリズムがある事業
    • アルゴリズムがあるが、決済決定権を譲渡した事業
    • アルゴリズムがあり、決済決定権を持つ事業
      • アルゴリズム、決済決定権はあるが資本決定権がない事業
      • アルゴリズム、決済決定権、資本決定権、3つを抑えた事業

結果的に、アルゴリズムが最も重要なのであるが、アルゴリズムを持っていても支出決定ができないと機能不全に陥り、支出決定ができるとしても、会社法上の意思決定権を持たないと機能不全に陥る。アルゴリズムを持ち、支出の決定ができ、議決権を保有する。この3つの条件が揃うと、問題は解があるかないか判定できず、判定できて解けない問題(NP-hard)から、組み合わせが膨大ではあり、直列プロセスはあるが解ける複雑性クラス(P)に変化する。

 

1. なぜ「収益拡大アルゴリズムの機能不全」と言えるのか

多くのスタートアップは、次のような入力と出力の数式(アルゴリズム)が解けていないままアクセルを踏んで自爆する。

$$\text{収益拡大} = f(\text{限界売上}, \text{限界費用}, \text{先行投資})$$
つまり、収益拡大問題は、限界売上と限界費用(変動費)に加えて、先行投資の固定費と、固定費支出の損益分岐点までのブレイクイーブンリードタイムが絡み合うことになる。銀行経験者が必ずしも収益拡大できないのは、このディスカウンテッドキャッシュフロー、つまりブレイクイーブンポイントに至るまでのCAPEX支出についてのアルゴリズム欠如によるものだ。

この関数 f が破綻している典型的なパターンは3つに集約される。

① 「スケールの経済」ではなく「スケールの不経済」が働く

売上が2倍になると、問い合わせ・例外処理・現場の不整合・補償コストが2倍以上に膨らむ構造。整係数の排他制約(配車不能、在庫バッティング、オペレーション過多)をアルゴリズム側で制御しないと、売れば売るほど例外処理が増え、赤字が増える。

② 限界利益が存在しない支出を行う。

マーケティング費を投じれば一時的にGMV(総取引額)は伸びるが、それは「資本と売上の等価交換」であり常に営業利益を減らす結果に終わる。広告費は1%しか役に立っていないという調査もあるくらいである。CONSUMER HETEROGENEITY AND PAID SEARCH EFFECTIVENESS:A LARGE SCALE FIELD EXPERIMENT 2014

③ 時間によって経済価値がどう変化するかを算定していない

例えばアパレル企業は倉庫費用が嵩むからといって50%割引のセールを行う。一方、50%とは割引現在価値で1年間の現金価値を-10%と多めに見込んだとしても5年後の現金価値である。果たして5年間の倉庫費用は50%も行くだろうか?もし5年持つ費用と50%引きをDCF算定した場合にセールの方が非合理だとしてもほとんどのプロフェッショナルたちはセールすることをやめられない。

2. スタートアップの敗因:3つの誤解

表面的な失敗理由 本質:収益拡大アルゴリズムの機能不全
資金ショート アルゴリズムの収益効率が低すぎて、資本の燃焼速度に追いつかなかった。→そもそも資本は燃焼するものではなく、1円使ったら必ず1円以上増えるアービトラージであることから目を逸らしている。キャッシュバーンという概念すら許容されない。
PMFの未達成 顧客の「欲しい」を、「再現性をもって収益化できる仕組み」へと変換するプロダクトマーケットフィット(PMF)のロジックを作れなかった。→価格形成は厳密なチューリングマシンプロセスであり、整係数ディオファントス方程式のアルゴリズム組み合わせ問題である。すなわち、収益拡大とは0と1の決定シーケンスに完全に置換することができる。
大企業との提携失敗 独自のアルゴリズム(最適化ロジック)を確立する前に主権(決済やデータ)を奪われ、単なる「下請け端末」になった。→アルゴリズムは土地、建物、演算資源の占有を許可されるためのパスポートである。

3. 生き残るアルゴリズムに必要な条件

スタートアップが生き残るための「収益拡大アルゴリズム」とは、単に「価格 × 数量」の計算式ではありません。

  1. worst scenario caseに対する例外処理の自動調停能力:

    キャンセル、遅延、過剰予約、事故、戦争、経済変動などの「現実に起こりうるノイズ」が発生しても、利益率が崩壊しないロジックを持っているか。

  2. スケールに伴う限界費用をゼロに近づける制御:

    取引数が増えても、人間による手動介入(カスタマーサポートや現場対応)を比例して増やさない仕組みがあるか。

  3. コンセンサスアルゴリズムについての主権の保持:

    プラットフォームや資本に依存せず、自らのロジックで顧客名簿、価格、資本配分、コンフリクト処理を適正性判定し続けられるか。

資本は「計算を高速化する電力を生み出す石炭石油」に過ぎず、「どうやったら利益を生みながら拡大できるか」というプログラム(アルゴリズム)を作れなかったスタートアップから順に淘汰されていく。