低強度トレーニングは高負荷トレーニングよりも効率が高い
高強度の無酸素運動で体を追い込まないと試合に勝てないというのは幻想であり、低強度(120-150bpm)の有酸素運動で処理できる情報量を増やすというソフトウェア駆動型ハードウェアトレーニングの方が主流になっている。
What is the Chairs’ Choice? Quantifying Training Intensity Distribution in Elite Endurance Athletes (2010)
https://scispace.com/pdf/quantifying-training-intensity-distribution-in-elite-38mdsdam75.pdf
Does High-Intensity Training Dwell on the Limits of Physiological Adaptation?
https://scispace.com/pdf/physiological-adaptations-to-low-volume-high-intensity-3li4sknb0x.pdf
「8割は低強度(150bpm未満)でいい」という持久系運動科学理論の基礎を作ったセイラー博士の論文。
- 研究内容: オリンピックのメダリストや世界クラスのトップアスリート(ランナー、サイクリスト、クロスカントリースキー選手など)の数年間にわたる膨大なトレーニングログを解析しました。
- 結論: 驚くべきことに、世界のトップ選手たちは、全トレーニング時間の 「約80%〜85%」を、乳酸がたまらない低強度(120〜140bpm、LT1/AT値未満の領域)で費やしていました。180bpmに達するような過酷な高強度運動は、全体のわずか15〜20%しか行っていなかったのです。
- 数理的証明: 博士は「低強度を大量に行うことでしか、ハードウェア(ミトコンドリアの密度と毛細血管網)のベースラインは拡張できない。高強度ばかりやるグループは、過剰なストレス(自律神経の不調)により、システムの総出力がむしろ低下する」ことを証明しました。
Assessment of Metabolic Flexibility in Elite Athletes and Patients with Type 2 Diabetes (2017)
https://escholarship.org/content/qt6jb6q5w4/qt6jb6q5w4.pdf
ツール・ド・フランスを5連覇した絶対王者タデイ・ポガチャル選手の専属コーチであり、コロラド大学医学部の教授でもあるサン・ミラン博士の、代謝(エネルギー演算)に関する論文。
- 研究内容: トップアスリートと一般人の「心拍数ごとの乳酸値と、燃料(脂肪と糖)の消費バランス」を細胞レベルで測定しました。
- 結論: 博士は、「ゾーン2(Zone 2)」と呼ばれる、まさに心拍数120〜140bpm台(150bpm未満)のトレーニングこそが、筋肉内のミトコンドリアの機能(脂肪をエネルギーに変換する効率)を最も最大化させる仕様であると突き止めました。
- 数理的証明: 150bpmを超える高強度(ゾーン4以上)に突入すると、ミトコンドリアでの脂肪燃焼が物理的に「ストップ」し、糖解系(糖質の強制的消費)に相転移します。博士は「ゾーン2(150bpm未満)のベースラインを徹底的に太くすることこそが、本番で180bpmの熱暴走を起こさずに高出力を出す唯一の手段である」と言い切っています。
The Polarized Training Model Is Best for Endurance Athletes (2014)
https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2014.00033/full
練習は150bpm未満を主流にした方が強いのか?を、実際にアスリートを集めて実験・比較した論文。
- 研究内容: よくある部活のように「常に中〜高強度(150〜170bpm)でハァハァ息を切らして頑張るグループ」と、「8割は150bpm未満のぬるいペースで走り、残りの2割だけ本番の強度を出すポラライズド・グループ」に分け、9週間トレーニングさせました。
- 結論: 150bpm未満を主流(8割)にしたグループの方が、VO2 Max(最大酸素摂取量)、タイム、経済性(燃費)のすべてのハードウェア指標において、圧倒的な向上を示しました。
- 数理的証明: 毎日きつい練習(160bpmなど)をしていたグループは、細胞が常に中途半端なダメージを受け続け、エラー(乳酸)の蓄積によってハードウェアのアップデート(超回復)が阻害されていました。
肉体はチューリングマシンである
この結果は肉体がチューリングマシンであることを示している。現代的コンピューターはソフトウェアが予測できないことを前提に膨大な選択肢を事前枝切りしている。過去の統計や相手の癖はノイズと処理し、高精度の未来予測を諦め、直前の出来事を前提としたベイズ推論と隠れマルコフモデル、ビタビアルゴリズムによる枝切りを主流とする。リアルタイムの状態空間を二次元マッピング問題に落とし、最大事後確率推定の局所フィルタリングを、worst case scenarioを前提としたミニマックスHMMの動的枝切りによって実現するのである。有酸素トレーニングでは70歳でも20歳くらいの酸素効率を作ることができるということなので、科学的にアプローチしている選手は今後、選手生命が伸びていくかもしれない。

