AI時代とEコマース

Decrypt history, Encrypt future™

AI時代とEコマース

国内アパレルの定番「少子高齢化」の言い訳

国内の衣料品量販店の売り場を歩くと、かつての活気が嘘のような静けさに包まれている。多くのドメスティックなアパレル企業の有価証券報告書を開くと、そこには判で押したように同じ理由が並んでいる。「少子高齢化に伴う国内市場の縮小、および個人消費の低迷」。

一見、誰もが納得しそうなマクロ経済の正論に見える。しかし、本当にそれが衣服が売れない根本的な理由なのだろうか。

目を世界に転じてみよう。POPMART、SKIMS、GYMSHARK、LULULEMON、あるいはAlo Yogaといった、インターネットとソーシャルメディアを主戦場とする新興ブランド群は、わずか5年で1000億円の売上成長という驚異的なスケールを見せつけている。

「アメリカは人口が増えているからだ」という反論があるかもしれない。しかし、先進国はどこも大同小異で高齢化の波に洗われており、米国の人口増加率とて年+2%程度に過ぎない。仮に日本の市場が年ー1%で縮小しているとしても、日米の構造的な差異は理論上「3%」のはずだ。

だが、現実に起きている伝統的量販店と新興デジタルブランドの増収率の差は、3%どころではない。30%以上の圧倒的な乖離が存在しているのだ。この事実は、「少子高齢化だから服が売れない」という言説が、本質から目を背けるための免罪符に過ぎないことを証明している。

チューリングマシンの時代

チューリングマシンとは1936年にイギリスのアランチューリングが論文に書き留めたcircle free machineのことである。これは人間のあらゆる思考を0と1の2つの記号に置き換えて、記号とステップを淡々と処理し続ける理想のマシンがあったらいいなという妄想であった。そしてこれはフォンノイマンアーキテクチャのもと、ニュージャージーのベル研究所やアメリカのシリコンバレーで現実化することとなる。そして世界中に針巡られたデータセンターと海底ケーブルのネットワーク、通信基地のネットワークにより今のイーコマースが成り立っている。便利なスマートフォンを使う側はしばしばこのコンピューターが厳密な0と1の確実な一致でしか成り立たないことを忘れてしまう。冒頭の国内衣料品量販店が減収減益しているのは、世界がチューリングマシンによるコミュニケーションに変わったことに、気づかないふりをし続けているからである。根本的な原因は、今や人間は、ロボットにわかるような製品しか知ることができないという、チューリングマシン性にある。

ロボットがわかる服しか探せない現代

例えば、人間がgoogleやyahooで服を探すとき、「白、Tシャツ、L」などのキーワードで探す。しかし、google shoppingのAIは白という漢字をそのまま認識することはできず、白→white→2進数のbyteに変換しないとそれが白であることを認識できない。出品する側はホワイトと書いてもコンピューターは丁寧に認識してくれるとは限らない。whiteと書かないといけない。

衣料品メーカーや小売店はいまだに着心地、デザイン、機能性、新しさ、流行という人間味を伝えるための努力をしている。テレビCMやインターネット広告はその最たるものである。インフルエンサーを使ったりということは昔から変わらない。しかし、実は、インフルエンサーを使うよりも、文字を整える方が効果が高いのである。

商品がいい、悪いは別として、伝わるための前提の儀式とプロトコルとして、まずはロボットにわかるような記述をしてあげないと、情報は人間は辿り着けない仕組みになっているのがインターネット社会である。

丁寧な記号の記述ができないと、よさを伝えることすらできない

検索は全て一つ一つ丁寧なクエリ(質問)への回答の文章で成り立つ。

素材、サイズ、カラー、手入れ方法、原産国、送料、返品交換ポリシー、価格、名称、名称を取り巻く言語トポロジー、自社が何を扱っているかのカテゴリー、、タクソノミーなど、商品を構成する言語トポロジーを一言一句2進法で定義しないと、まずユーザーの目にも触れることができない。これをさらにgoogle, yahoo, amazon, rakutenがわかるスキーマに整えることも必要で、日本語で商品概要を書いたからといって英語に自動翻訳してくれるわけでもない。原産地 日本と書けば、そのページに辿り着いた人間は読むことができるが、人間を連れてくるコンピューターはcountry origin: JPと書いてあげないと、原産地日本のものを探している人はたどり着くことができない。

このような膨大な記号記述の手間をかけた上で、やっと閲覧し、カートに入れ、決済し、購入し、リピートするというのが今の時代なのである。この手間を軽視する企業は毎年減収減益しているというだけなのだ。これは昔個人商店が多かった時代にPOPを書いて店頭に接客担当を設置して、トーク内容も含めて皆で試行錯誤していたのと同じことであり、現在は倉庫とデータセンターにその接客が移っているだけなのである。

倉庫に在庫があっても、ストアに出品し、在庫点数 1と表示しないと顧客はその商品を見ることもできない。このような基本的なところで意外とつまづくのである。

chatgptはロボットに対するおもてなしのあるサイトしかクロールしない

ユーザーはchat gptやgeminiで自分に合う商品を探す。しかし、chat gptやgeminiは丁寧にあらゆる商品を全探索するようなことはしない。データが整然と並んでおり、質問に対する一問一答が簡単に発見できる、「ロボットに対するおもてなし」があるショッピングサイトにしか見に行かないし、そのようなサイトでないとchatgptの回答に出現することもないのである。