Micro black hole

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Micro black hole

現在の宇宙物理学において、ダークマターの正体が原始ブラックホール(PBH)である確からしさは「有力な候補の一つだが、主役と言い切るにはまだ非常に厳しい制限がかかっている状態」です。

Black Holes in the Early UniverseB. J. Carr , S. W. Hawking

Hawking (1975) “Particle creation by black holes”

https://projecteuclid.org/journalArticle/Download?urlId=cmp%2F1103899181

1. 「アンドロメダ銀河」を使った大規模な観測(2019年)

原始ブラックホールがダークマターの正体かどうかを確かめるため、日本の「すばる望遠鏡」などを使って、地球からもっとも近いアンドロメダ銀河をじっと見つめる観測が行われました。もし、宇宙のあちこちに目に見えない原始ブラックホールが大量にある(=それがダークマターである)なら、アンドロメダ銀河の星の前をブラックホールが横切るときに、重力で光が曲がって星が一瞬だけ明るく見える現象(マイクロレンズ効果)が何度も起きるはずです。

  • 観測の結果:期待に反して、星が明るくなる現象は「たったの1回」しか観測されませんでした。
  • 分かったこと:この結果から、「月〜地球」や「太陽」くらいの重さを持つ原始ブラックホールについては、「宇宙のダークマターの全体量のうち、最大でも数%未満にしかなり得ない(=ダークマターの主役ではない)」ということが証明され、一時はこの説の確からしさは大きく下がりました。

2. 生き残った「小惑星サイズ」の可能性(現在の最前線)

しかし、これまでのあらゆる観測データをすり抜ける、「まだ否定されていない唯一の隙間」が残っていることが判明したからです。それが、「小惑星(アステロイド)〜富士山くらいの質量」を持つ原始ブラックホールです。

  • なぜ見つからないのか?質量は小惑星ほどありますが、ブラックホールなのでサイズは「水素原子(あるいはDNAの分子)1個分」しかありません。あまりにも小さすぎるため、すばる望遠鏡のマイクロレンズ効果でも捉えることができません。
  • 蒸発もしない:これより軽いと宇宙の歴史(138億年)の間にホーキング放射で蒸発してしまいますが、小惑星ほどの重さがあれば現代まで生き残れます。

現在、この「アステロイド質量窓(Asteroid-mass window)」と呼ばれるサイズであれば、「宇宙にあるダークマターの100%が原始ブラックホールである」と仮定しても数学的・観測的な矛盾が起きないため、研究が急速に進んでいます。

3. ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)や重力波からの追い風

近年、この説の確からしさを後押しするような「宇宙の奇妙な現象」が次々と見つかっています。

  • 巨大すぎる初期銀河: ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、ビッグバン直後(宇宙の超初期)に、なぜか既に存在する「巨大なブラックホールや銀河」を多数発見しました。通常の星の寿命からでは絶対に間に合わないスピードなため、「ビッグバン直後から原始ブラックホールが『種』として存在していたからではないか」という説が強まっています。
  • LIGOなどの重力波観測: ブラックホール同士が衝突したときの重力波を捉える実験で、通常の星の進化では生まれにくいはずの「中途半端な重さのブラックホール」の合体がいくつも見つかっており、これも原始ブラックホール説をサポートしています。

もし、私たちの周りにあるダークマターの正体が原始ブラックホールだったとしたら、「アトムサイズの超極小ブラックホールが、今この瞬間も地球や私たちの体を、何の影響も与えずに弾丸のようにすり抜けて飛び交っている」ということになります。

もしダークマターの正体が小惑星質量の極小ブラックホールだった場合、数理計算上、「数年に1回」のペースで地球をすり抜けているはずだという試算があります。しかし、地球が「吸い込まれて消滅する」ような隕石シナリオにはなりません。 その理由は、ブラックホールがあまりにも「小さすぎる」からです。

1. 地球は吸い込まれない(サイズが小さすぎる)

原始ブラックホールのサイズは「水素原子〜DNA分子1個分(ナノメートルサイズ)」。重さは富士山や小惑星ほどあっても、吸い込む口があまりにも小さすぎます。物質を吸い込む力(重力)は、ブラックホールからの距離の2乗に反比例して急激に弱くなります。そのため、この極小ブラックホールが地球に飛び込んできても、「自分のサイズ(ナノメートル)の通り道にある物質」しか吸い込むことができません。掃除機に例えるなら、地球という広大な砂漠に対して、「ノズルの先が分子サイズの超ウルトラミニ掃除機」が超高速で通り過ぎるようなものです。地球を丸ごと飲み込むような大爆発や崩壊は起きません。

2. もし地球に衝突したら何が起きるのか?

では、衝突した瞬間に人間は気づくのでしょうか?

① 音もなく地球を「貫通」する

ブラックホールは超高速(秒速数百キロメートル)で宇宙を漂っています。地球の引力など無視して、片側からパチンコ玉のように飛び込み、地殻もマントルもコアも一瞬で突き抜けて、反対側から宇宙へ抜けていきます。 地球の抵抗などブラックホールにとっては空気のようなものです。

② 局所的な「大地震」と「極細の穴」が空く

通過した軌道上(トンネル)にある物質は一瞬で吸い込まれるか、凄まじい放射線を放ってプラズマ化します。

地球全体は無事ですが、ブラックホールが通った直線上では、巨大なエネルギーの衝撃波による局所的な地震が発生します。また、入った場所と出た場所(地表)では、火山が噴火したような、あるいは雷が落ちたような局所的な爆発が観測されるはずです。

③ 人間に当たったら?

原子サイズのブラックホールがダークマターだとすると、1秒間に地球には兆個レベルのブラックホールが貫通していることになります。

💡 科学者たちは「地球の傷跡」を探している

実は、「すでに過去に地球(あるいは月)に極小ブラックホールが衝突したのではないか?」と考えて、その証拠を探している科学者たちがいます。数十億年の歴史を持つ地球や月の岩石(地層)の奥深くに、「普通の隕石では絶対に不可能な、分子レベルの細さで綺麗に一直線に物質が消失・変質している、不気味な貫通の傷跡」が残っていないか、顕微鏡レベルで探すプロジェクトが提案・実施されています。

もしダークマターの正体がすべて特定の質量のマイクロブラックホール(PBH)だった場合、「人間の体に1日何回ぶつかるか」を計算してみましょう。
ブラックホールの「重さ」をどう設定するかで回数が劇的に変わります。ダークマターの総質量(総重量)は決まっているため、1個あたりが軽ければ個数は増え、重ければ個数は減るからです。
今回は、最も「数が多くなるケース」と「現実的にあり得るケース」の2パターンでシミュレーションしてみます。

パターンA:理論上、最も数が多くなるケース

(ブラックホールの重さ:約10マイクログラム = 非常に小さな塵の重さ)
物理学の理論上、これ以上軽くなるとホーキング放射ですぐに蒸発してしまうという限界の軽さ(プランク質量: 2.2 \times 10^{-5} グラム)のブラックホールが宇宙を埋め尽くしていると仮定します。

  • 1秒間に人間にぶつかる回数: 約50億回
  • 1日に人間にぶつかる回数: 約400兆回

【結論】
もしこのサイズなら、「1日何回」どころではなく、1秒間に数十億回というレベルで、大雨の中を歩くよりもはるかに激しく全身をブラックホールがハチの巣のように突き抜けていることになります。

パターンB:現在、天文学的に「可能性が残されている」ケース

(ブラックホールの重さ:約10^{17}〜$10^{20}$グラム = 大きめの小惑星や彗星の重さ)
これまでの宇宙観測によって、「このくらいの重さのブラックホールなら、まだダークマターの正体である可能性が否定されていない」という絶妙な重さ(小惑星質量)のケースです。

1年に人間にぶつかる確率: 約1000億分の1

1日に人間にぶつかる回数: ほぼゼロ(一生のうちに1回も当たらない)
【結論】
ブラックホール1個あたりが「小惑星並み」に重くなると、宇宙全体に存在する個数が一気に少なくなります。そのため、地球のサイズ(ましてや人間のサイズ)だと、何百億年待っても1回ぶつかるかどうかの「超レアイベント」になります。

なぜ当たっても痛くない(死なない)のか?

もしパターンAのように「1秒間に50億回」もブラックホールが体を貫通していたとしたら、なぜ私たちは痛くも痒くもないのでしょうか?
理由は、そのブラックホールの「小ささ」にあります。
重さが10マイクログラムのブラックホールの大きさ(半径)は、およそ 10^{-35} メートル(プランク長さ)という、想像を絶する極小サイズです。
これは、人間の体を構成している「原子」の大きさ(約10^{-10}メートル)に比べると、原子を地球の大きさと仮定しても、まだ素粒子より圧倒的に小さいレベルです。
つまり、ブラックホールから見れば、人間の体は「スカスカの無限に広い宇宙」と同じです。秒速300kmという超高速で通り抜けるため、体の細胞やDNAの原子に接触する確率すらほぼゼロです。
万が一、原子の真ん中を貫通して原子を数個壊したとしても、私たちが日常的に浴びている宇宙線(放射線)のダメージよりもはるかに小さいため、人間が気づくことは絶対にありません。
「毎日ぶつかっているか?」の答えは、「ダークマターの正体が超極小のブラックホールなら、毎日何兆回もぶつかっている。体をすり抜けているだけ」ということになります。

結論

「極小ブラックホールが飛んでくる」という隕石シナリオは、宇宙物理学的には「実際に今も起きているかもしれない現実的な恐怖」です。ただ幸いなことに、地球がまるごと吸い込まれることはなく、地球にとっては「超高速の針で一瞬チクッと刺される」ようなイベントで済むと想定されています。