不協和は協和の方向に進む力学である

半音番号で見た場合の協和と不協和の関係性
半音番号 | 度数表記 | 音程名 | 協和/不協和 | 解説 |
---|---|---|---|---|
1 | 1度 | 同度(ユニゾン) | 完全協和 | 最も安定、融合度100% |
2 | 短2度 | m2 | 強い不協和 | 激しい摩擦、解決を求める |
3 | 長2度 | M2 | 不協和 | やや緩い摩擦、旋律的に多用 |
4 | 短3度 | m3 | 協和(やや安定) | マイナー感情を表現、和音基礎 |
5 | 長3度 | M3 | 協和(やや安定) | メジャー感情を表現、和音基礎 |
6 | 完全4度 | P4 | 不協和(中庸) | 古典和声では不安定扱い、対位法で制限あり |
7 | 増4度 / 減5度 | Tritone | 強い不協和 | 「悪魔の音程」、解決力大 |
8 | 完全5度 | P5 | 完全協和 | 安定、和音の柱 |
9 | 短6度 | m6 | 協和(やや不安定) | 柔らかい響き、旋律的に美しい |
10 | 長6度 | M6 | 協和(やや不安定) | 開放感、和声に彩りを与える |
11 | 短7度 | m7 | 不協和 | ドミナントセブンスで解決力を持つ |
12 | 長7度 | M7 | 強い不協和 | 根音に半音でぶつかるため、強い緊張 |
ジャンル | 進行例 | 数字での表現 |
---|---|---|
クラシック | V7 → I | {8,12,3,6} → {1,5,8} |
ジャズ | II–V–I | {3,6,10,1} → {8,12,3,6} → {1,5,8,12} |
ポップス | I–V–vi–IV | {1,5,8} → {8,12,3} → {10,1,5} → {6,10,1} |
1. 三和音(トライアド)が基盤だった理由
- 中世〜ルネサンスの音楽では、協和音(consonance)として重視されたのは 完全1度・完全5度・完全8度、やがて 3度・6度 も協和と認められるようになりました。
- その結果、「根音+3度+5度」の三和音が 最も安定する和音 として体系化され、和声の基本になった。
2. 7度の音は「不協和音」として重要視された
- 7度(特に短7度)は強い不協和を持ち、解決を生む力 がありました。
- 例えば V7(ドミナント・セブンス) は、
- ルート(5度の根音)
- 3度(導音=トニックへの解決を求める)
- 5度
- 7度(トニックの根音に半音下で解決する)
を含み、トニック(I)への解決を非常に強く要求します。
- この「解決の推進力」が、クラシックからジャズまで 機能和声の中心 になりました。
- 悪魔の音程
3. 6度や9度ではなく、なぜ7度だったのか
- 6度:7度よりも協和的で、不協和な緊張を作りづらい → 「解決の推進力」が弱い。
- 9度:強い不協和を持つが、9度を自然に導入するにはすでに7度が前提になっていることが多い。
(例:9thコードは「7thコードに9度を足したもの」として定義される) - つまり、7度が「最初の拡張音」としてもっとも自然 だったのです。
4. 歴史的背景
- バロック時代:ドミナント・セブンス(V7)が和声の中心になり、機能和声が成立。
- 古典派以降:セブンスコードが常用され、転調・緊張と解決の手段が大幅に拡大。
- ロマン派・ジャズ:さらに9th, 11th, 13thへと拡張。だが、これらもすべて「セブンスを含む和音」の上に成り立っています。
✅ まとめると:
- トライアド(三和音)は最も安定する基盤。
- そこに7度を加えることで 緊張と解決 が生まれ、音楽に方向性が与えられた。
- だから「7度」が最初の拡張音として標準化され、「セブンス」と呼ばれるようになった。
🎼 コード進化の系統図
トライアド→セブンス→ナインス→イレブンス→サーティーンス
トライアド(Triad)
│
├─ メジャー・トライアド(C = {1,5,8})
├─ マイナー・トライアド(Cm = {1,4,8})
├─ ディミニッシュト・トライアド(Cdim = {1,4,7})
└─ オーギュメント・トライアド(Caug = {1,5,9})
↓
セブンス(7th chord)= トライアド + 7度
│
├─ ドミナント7th(C7 = {1,5,8,11})
├─ メジャー7th(Cmaj7 = {1,5,8,12})
├─ マイナー7th(Cm7 = {1,4,8,11})
├─ ハーフディミニッシュ7th(Cø7 = {1,4,7,11})
└─ ディミニッシュ7th(Cdim7 = {1,4,7,10})
↓
ナインス(9th chord)= セブンス + 9度
│
├─ C9 = {1,5,8,11,3}
├─ Cmaj9 = {1,5,8,12,3}
└─ Cm9 = {1,4,8,11,3}
↓
イレブンス(11th chord)= ナインス + 11度
│
├─ C11 = {1,5,8,11,3,6}
├─ Cmaj11 = {1,5,8,12,3,6}
└─ Cm11 = {1,4,8,11,3,6}
↓
サーティーンス(13th chord)= イレブンス + 13度
│
├─ C13 = {1,5,8,11,3,6,10}
├─ Cmaj13 = {1,5,8,12,3,6,10}
└─ Cm13 = {1,4,8,11,3,6,10}
🔑 ポイント
- トライアド(三和音) がすべての基盤。
- セブンス で不協和(緊張)が追加され、和声進行の推進力が生まれる。
- ナインス→イレブンス→サーティーンス は「セブンスの上に順番に積む」ことで発展。
- これらはジャズで特に多用され、緊張を含んだままの美しい響き を楽しむ文化が生まれました。
- サーティーンス(13th)まで積んでいった和音は、最終的にまた「トライアド」へ戻って解決
✅ つまり「トライアド」から始まり、「セブンス」で和声に方向性がつき、その後の「拡張コード」で音楽の色彩がどんどん豊かになっていった、という 進化の流れ 。
つまり、音楽は数学的に運動の性質を記述していると言える。
5分間のJPOPだとしても楽器の組み合わせや周波数の組み合わせはセンティリテオンスケールに到達する。巨大数を協和と不協和の進行で制御するというのが音楽の性質だとすると、実は音楽こそベンチャーキャピタルを表しているかもしれない。