プライシングパワー、プレミアム、価格転嫁能力

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プライシングパワー、プレミアム、価格転嫁能力

自分を売り込もうとしているのに買い手がつかない場合、それは恐らく十分なものを提供していないからだ。投資銀行のバンカーで言えば、顧客との十分な関係を持っていないか、その関係を手数料収入につなげられていないかだ。Consumer Staples(生活必需品)で言えば、売れるものは自然と売れる。売れないものは多種多様な理由で売れない。顧客はなぜ売れるか、なぜ売れないかを全く教えてはくれない。良いものが売れるわけではないが、売れ続けているものは良いものである。さらにプライシングパワー、価格弾力性と顧客転嫁能力のあるプロダクトは社会が動的に変化しても強靭である。

プライシングパワー、プレミアム、価格転嫁能力を作る方法、つまりブランドの作り方には2通りある。供給制限をして需要を高めるという方法。これはラグジュアリーブランドがとっている。しかしこれはあくまで現在のマーケットの最適化に過ぎず、プロアクティブにルール自体を作っているわけではないため、フリーキャッシュフローの成長に限界があり、世界で最もFCFを伸ばしているプレイヤーに負ける。世界で最もFCFを伸ばすプレイヤーは相対的なマーケット競争をしているわけではなく、絶対的な理想空間を求めて動いており、相対的に勝つプレイヤーの立ち位置とともに、ルール自体を作る側、空間そのもののポジショニングをとっている。これはブランドとは呼ばれずしばしばイノベーションと呼ばれる。

つまり、ブランドの目的であるIRR, ROICをFCFベースで最大化するゴールを達成するためには、所与のマーケットの条件下における最適化だけではなく、数理計算に基づく理想の空間を極限、解析的に算出し、まだ広域解が良いと思われていないときに、粘り強く弱い力を信じて突き進む姿勢が必要なのである。

局所最適で戦っているコモディティ、ラグジュアリープレイヤーがいる中で、真のプライシングパワーを持ち、地球規模のボトルネックを解決するためのプレミアムを定義し、フリーキャッシュフローの割引現在価値に基づいて、顧客や消費者と取引を持ち掛ける言語操作能力と価格転嫁能力を持つ企業と、そうでないラグジュアリーは成長性に天と地の差が出るということである。

見えないプレミアムを取引により交換するには記号による概念と質量の操作が必要である。

つまり、真のラグジュアリーとは、局所最適ではなく、広域最適解を扱う地球のリーダーであるべきであって、常に大域解、理想の世界を思い浮かべ、説明している必要がある。プレミアムとは、より広域な問題を扱う能力のことであり、目に見えないものを取り扱う問題である。地球規模の利益に比べれば、個人、企業規模の利益とはコンフリクトを起こす。個の利益と種の利益を比べれば、歴史的には種の利益が勝ってきたことは明らかである。プレミアムとは、ただ単に高い価格で売ることではない。自動的に毎年価格を上げることでもない。

プレミアムとは局所が情報技術でつながり出したときに生まれてくる新たな広域問題に先駆けて対応し、さらに大域に向けた広域問題が発生する可能性に先んじて手を撃ち続けるという生き方そのものであり、このコストを等しく地球上の住民に配分していくという厳しさと正当性も持っている必要があるのである。

この負担すべきコストの主張と価格転嫁能力、プレミアムの先取り取引こそアービトラージであり、財務、経営、投資、調達、採用のあらゆる側面でプライシングパワーとしてフリーキャッシュフローが表層化する。

人間は問題を解くのが好きな生き物である。したがって所与のマーケットからすると明らかに条件が悪いような価格設定に対しても必ず賛同者が現れる。その賛同者はプレミアムのコアを少し動かすと、少しずつ動いて必ずついてくる。中には振り落とされる賛同者もいるが、プレミアムの根拠が種の保存に基づく地球規模の課題を含む広域スケールなのであれば、必ず賛同者は時間の経過とともに増えていく。

広域問題を扱うということは常に現在のリソースでは計算資源が足りない問題をプロセッシングするということである。したがってプレミアムを扱うということは常に未来に取り組むということであり、現在のことだけ扱う人よりも忙しくなりより多くの資源を要する。つまり、いつも財務やキャッシュフローがギリギリのように見えるということである。

しかし表面上の財務と求心力は異なる力である。財務諸表の背後にある力は、未来におけるフリーキャッシュフローの成長と、さらなる未来におけるディスカウンティッドキャッシュフローとの交換をより遠い未来に向けて繰り返す。真のプライシングパワーとは、空間から重力を生み出す力であり、時間をたたみ込む作業である。プレミアムを生み出す主体にとって、時間はコントロール可能な対象であり、時間が友である。現在のスナップショットでは表面上エネルギーフローがギリギリに見えても、支出が多少不合理に見えても、それは数理計算の根拠のある歪みであり、未来に合わせた支出なので過去と現在に合っていないだけなのである。プレミアムに取り組む経営とは表面上誰もが資源の枯渇に動揺するが、結果的に資源には困らない生き方なのである。