教行信証(きょうぎょうしんしょう)
📘 1. 『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』の要点
『教行信証』は、親鸞が52歳ごろに完成させた浄土真宗の根本聖典で、正式名称は『顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)』です。
🔹 構成(六巻構造):
巻 | 名称 | 主な内容 |
---|---|---|
1 | 教文類 | 浄土教の「教え」は何か(経典・阿弥陀の本願) |
2 | 行文類 | 救済に至る「行」は何か(念仏) |
3 | 信文類 | 最も重視:信こそが往生の因 |
4 | 証文類 | 信を得た者が得る結果(浄土往生・成仏) |
5 | 真仮文類 | 真実と仮の教えの区別 |
6 | 化身土文類 | 教化の方法と浄土の構造 |
🔹 要点
- **阿弥陀仏の本願(第十八願)**こそ真実の教えである。
- 「信」こそが決定的であり、念仏の回数や修行ではない。
- 「絶対他力」:救済のすべては阿弥陀仏にゆだねられている。
- 悪人正機:罪深い者こそが真実の救いの対象となる。
🙏 2. 法然との違い
親鸞は法然の弟子でしたが、思想・実践・制度面で重要な違いがあります。
比較軸 | 法然(浄土宗) | 親鸞(浄土真宗) |
---|---|---|
救済方法 | 念仏をたくさん唱えることで救われる(専修念仏) | 信心が成立すれば、念仏は一回でもいい |
修行観 | 念仏は「行」であり、自分で行う | 行も含め、すべては阿弥陀仏による他力 |
出家・僧侶像 | 戒律を守る出家者を前提とする | 自身が結婚して「非僧非俗」の姿勢を取る |
人間観 | 凡夫だが修行によって浄土往生を目指せる | 凡夫であることを受け入れ、信によって救われる |
教団形成 | 比較的組織的 | 教団を形成しない。門弟が自発的に発展させた |
親鸞は「法然の忠実な弟子」でありながら、「法然を超える思想的深化」を行った存在。
⚔️ 3. 善鸞義絶事件(ぜんらん ぎぜつじけん)
🧬 背景:
- 善鸞(ぜんらん)は親鸞の実子(嫡男)で、関東地方で教義の布教をしていた。
- しかし彼は、異端的な教説(選民思想的な救済論や淫祠の混交)を広めたとされる。
📜 事件の流れ:
- 善鸞が関東で異説を広めたという報告が門弟たちから親鸞に届く。
- 親鸞は自筆の書簡で、善鸞を**「義絶(=父子関係を断つ)」**と宣言。
- 「善鸞が我が子であることを恥とする」とまで明記し、門弟たちに厳格な対応を求める。
⚠️ 意義:
- 親鸞が血縁より教義の純粋性を優先したことを象徴。
- 教団が教義によって結ばれることの重要性を示し、信仰共同体の自立性の原点となった。
- これは親鸞が**「私が教祖ではない」=阿弥陀仏の本願が主役である**という思想の実践でもある。
✅ 総まとめ
項目 | 要点 |
---|---|
『教行信証』 | 信を中心とした浄土真宗の教義体系。阿弥陀仏の本願を絶対他力とする。 |
法然との違い | 念仏の「行」よりも「信」を重視。結婚・非僧非俗の姿勢。 |
善鸞義絶事件 | 教義の純粋性を保つため、実子との縁すら断つ決断をした。 |