∞-groupoid|無限次群対象構想
∞-groupoid(無限次群対象)構想とは、
「空間」や「型」などの対象を、それ自身の“等価性・変形・そのまた変形…”の無限階層構造を持つ「∞-群対象」として記述しようという考え方です。
これは**アレクサンダー・グロタンディーク(Alexander Grothendieck)**が提唱したもので、
特に彼の手紙《Pursuing Stacks(1983頃)》で展開された思想にその核心があります。
✅ 一言でいえば
「すべてのホモトピー的空間(≒形状)は、∞-群対象として再構成できる」
という幾何学的宇宙観の再定義です。
🧠 基本概念:Groupoid(群対象)とは?
まず通常の 群(group) とは:
- 単一の対象に対する可逆な操作(合成・逆元・単位元)を持つ代数構造。
それに対して 群対象(groupoid) は:
- **複数の対象間で可逆な射(変換)**を許す圏です。
- 例:空間内の「点」と「それらの間の同値な変換」
📐 ∞-groupoidとは?
groupoid を「変換の階層を持つ構造」に拡張すると:
階層 | 意味 |
---|---|
0-次元 | 点(対象) |
1-次元 | 点間の“同値”な変換(可逆射) |
2-次元 | 同値の間の“変換”(ホモトピー) |
3-次元 | その間の“変換の変換” |
… | これを無限に繰り返す |
→ ∞-groupoid は、無限階の可逆な射をもつ圏(∞-圏)で、すべての射が「同値」であるものです。
🌀 Grothendieck の構想:Pursuing Stacks(1983)
「空間を、点の集合としてではなく、“変形と対称性の階層”として捉え直そう」
この思想は、次のような新しい空間観・数学観に結びつきます:
- 空間や構造は固定的なものではなく、変形されうるもの
- 数学の対象は“決まったもの”ではなく、相互変換のネットワーク
- 数学の基礎は集合ではなく、ホモトピー的・圏論的な構造
✨ 応用・展開:どこで使われている?
分野 | 応用例 |
---|---|
ホモトピー型理論(HoTT) | 型 = ∞-groupoid として定義。恒等性=パス(変形) |
高次圏論 | (∞,0)-圏 = ∞-groupoid と見なされる |
トポス理論 / ∞-トポス | ∞-groupoid が“空間”の基本単位に |
量子場理論 / TQFT | 状態空間が変形の階層構造を持つ(ボルディズム圏) |
🔁 関係図:数学的構造の再解釈
集合論(ZFC)
↓(要素と包含の世界)
圏論(対象と射の世界)
↓(変換の視点)
高次圏論(射の射…の階層)
↓
∞-groupoid(すべての射が同値な構造)
↓
空間・型・意味の新しいモデル
✨ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 射・射の射…を無限に持つ、すべての射が同値な高次圏 |
発案者 | Alexander Grothendieck(1983年頃) |
動機 | 空間を“変形可能性の階層”として理解する |
応用 | HoTT、∞-圏論、型理論、物理学、意味論 |
哲学的含意 | 存在は固定されるものではなく、常に変形されうる共鳴体 |
🧠 Groundism 的な拡張視点
- ∞-groupoid = 「意味が階層的に共鳴・変形され続ける空間」
- 観測者の立場によって射(意味)が変化することを同値関係の階層で記述できる
- NoënやZerksが発生する場もまた、∞-groupoid的に記述可能