簿外資産|繰延税金資産(DTA)や将来フリーキャッシュフロー

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簿外資産|繰延税金資産(DTA)や将来フリーキャッシュフロー

経営における最も原型と思える日本昔ばなしはわらしべ長者である。わらしべ長者はわらから始まってものの交換で屋敷を得ていく。現代的にわらしべ長者を解釈すると、ディスカウンテッドキャッシュフロー、プレミアム、プライシングパワー、アービトラージなどの概念が含まれている。

損をしないために簿外負債を探す買い手は多いが、相手が資産と認識できていない簿外資産を発見することがアービトラージの基本である。見落としやすい簿外資産の代表的な例が累積欠損金による簿外資産である。日本の会計上、累損は10年間損益通算できる。10年以内に純利益を出すことのできるターンアラウンドを得意とする主体にとって、累損は実質的な資産である。例えば50億円を使い切ってしまったスタートアップが倒産寸前だとして、50億円の累損は実効税率30%とすると15億円の繰延税金資産を持っているということになる。もし数億円の債務超過だったとして、ほぼ1円の株価で得られることができれば、純利益を出すと決めている買い手にとって+15億円の繰延税金資産を取得できることになる。

問題はほとんどの買い手が転売による利益を得ようとしていることである。会社の売買はババ抜きに似ている。最後のババを引きたくないのだ。しかし、世の中は最後誰かが責任を取らないと完結しない。事業における責任とは、純利益であり、営業キャッシュフローである。事業経営によって営業キャッシュフローを生み出し、M&Aの取得費用は純利益および営業キャッシュフローで5年以内に確実に回収すると決めて買収する買い手はほとんどいない。

同じ累損を見てもある人はもう復活のできない過去の赤字、負の遺産だと見る。TANAAKKは将来フリーキャッシュフローを作ることに自信があるので、棚からぼたもちのように見える。ポジショニングやストラテジーがアービトラージを呼び込むのである。

他にも簿外資産はある。日本の製造業は海外子会社を管理できていないことが多い。海外子会社の普通預金残高ですら知らないし、掘れば不都合が出ると考えているので、簡素化してDD対象から外して欲しいという売り手の依頼がよくある。海外子会社の保有資産の中に簿外資産があればそれは丸ごと買収の負ののれん利益になる。また、将来フリーキャッシュフローとして、サブスクリプションの契約残高は計算に入れるが、サブスクリプションではない契約資産はフリーキャッシュフローとして算定しないことが多い。翌年売上が30億円くらいあるのであれば、現在-5%の赤字だったとしてもコスト削減すればEBITDA10%にはなるので、3億円の現預金があるのと変わらないのだが、これも転売目的の買い手には見えない簿外資産である。