支出を販管費(SG&A)に仕訳すべきか、製造原価(COGS)に計上すべきか?

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支出を販管費(SG&A)に仕訳すべきか、製造原価(COGS)に計上すべきか?

よい会社の売上総利益率は磨かれている

良い会社の決算書は粗利益が磨かれ切っており、限界利益率がそれ以上落ちないものを粗利益と定義している。例えば、多くの中小企業では粗利益率が20%ある事業だと主張する。しかし、本当に粗利益率が20%あり、限界利益率も20%あるのであれば、販管費は限界利益の半分で済むはずで、営業利益率は10%残るはずであり、先行投資が10%可能になることによって、売上は毎年10%容易に上昇するはずである。しかしながら、ほとんどの中小企業は粗利益が20%出ているにも関わらず、営業利益は1%しかない(または赤字である)。限界利益率が20%というのは教科書的には限界売上を増加させるために必要な変動費(限界費用)を引いたとしても20%の限界利益が残るという計算になるが、限界利益率20%を謳っている事業のほとんどは赤字構造である。なぜこれが起こってしまうのか?

支出を販管費(SG&A)に仕訳すべきか、製造原価(COGS)に計上すべきか?

支出を販管費に計上すべきか、製造原価に計上すべきかに関する税務上のルールや会計上の基準は存在していない。支出を限界費用(変動費)に含めるかそれとも固定費に含めるかという問題は外部として重要な概念なのではなく、管理会計として重要な概念であるため、銀行や株主が指示を出してくることでもないのである。

限界売上に対応する限界費用はCOGSに仕訳するべき

基本的な原則として、限界売上に対応する限界費用はCOGSに仕訳するべきである。

荷造運賃費は「販管費」か、「製造原価」か?

例を挙げるとTMS(Transport Management System)費用やトラック運送費は現代的には全くコスト削減余地のないものであり、売上の増加とともに増えるものなのであれば、それは変動費であり原価であると見て良いのではないか。しかし、会計仕訳上の一般的な荷造運賃費用は販管費に仕訳されるため、ほとんどの税理士や会計士が荷造運賃費用は販管費であると信じており、結果として限界利益=売上総利益率にならない決算書が出来上がってくる。

ソフトウェア減価償却費は「販管費」か、「製造原価」か?

製造小売業だとしてもスケールに関わるエンジニアリングパワーは限界売上と比例して増えていく類のものだとすると、モダンビジネスはソフトウェアを原価に入れるべきではないか。SaaSはソフトウェア減価償却費を製造原価に入れるのが普通であるが、多くの製造業はソフトウェアの減価償却費を販管費で計上している。ソフトウェアは労働集約ではなく、資本集約的なので、売上が増えてもソフトウェアの費用は増えないという妙な信仰があるからである。しかし実態は売上が増えるとソフトウェア支出も売上に比例して増えていく。

研究開発費は「販管費」か、「製造原価」か?

研究開発費も同様であり、研究開発をしないと競争力が維持できず結果的にマージンを落とすことになるのであれば、研究開発費ですら限界費用として製造原価に仕訳すべきである。

結論

原価と販管費の振り分けに関するグローバル基準はないはずなので、経営管理の効率性から考えると売上総利益率=限界利益率で一致するように財務会計を作った方が管理としてメリットがあり、ほとんどの販管費を原価に入れるべきである。そのようにして出来上がった売上総利益率は限界利益率を示しているはずであり、筋肉質なPL(損益計算書)が出来上がる。