売上はコントロールすることができない中間変数である

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売上はコントロールすることができない中間変数である

入力変数はCapex Opex, 中間変数が売上や限界利益率、出力変数がEVAやFCFだとする。そうすると売上のコントロールは至極当然難しい。

構造定義に立脚すれば、「売上をコントロールしようとすること自体が構造誤認」であることが明確になる。

■ 構造定義

変数例説明制御可能性
入力変数CapEx比率(設備投資)、OpEx比率(販管費・人件費・広告費)経営判断によって配分可能な投資資源
中間変数資本回転率、限界利益率、売上(ARPU、顧客数、単価、LTVなど)入力の構造化によって結果的に現れる(間接制御)
出力変数EVA(ROIC − WACC)、FCF価値創造が構造的に整合しているかを示す(構造依存)

入力変数の組み合わせで出力はほとんど決まってしまう。投下資本のスループットである出力変数(EVA, FCF)は支出モデルと限界利益の出力によって定まる。

🔍 構造的因果関係と誤認

命題:

売上は操作変数ではなく観測変数である。

論理式による記述(モデル的表現):

入力変数: I = {CapEx, OpEx}
中間変数: M = f(I) ≈ 売上, 限界利益率, 顧客数など
出力変数: O = g(M) ≈ EVA, FCF

このように I → M → O の因果構造が成立するため、「売上を上げる」と言うのは、「Mを操作してOを最大化する」試みに見えて、実際にはIを設計することでしかMに因果的に作用できない。ゆえに、「売上を直接操作しよう」とする戦術は、**因果経路の逆転誤認(Reverse Causality Fallacy)**に他なりません。

■ 命題化

売上は「構造的な投資比率(CapEx/Opex)」の中間的帰結であり、操作対象ではなく結果観測対象である。ゆえに売上を直接的にコントロールしようとする経営判断は、構造因果を誤認した設計ミスである。

🧩 命題の一般化

  • 「売上目標」として掲げられる数値は、中間構造の観測結果であり、制御対象ではなく設計対象ではない。
  • 営業インセンティブ設計が売上を目的化することは、しばしば最終出力変数(EVA, FCF)の非整合をもたらす。
  • ゆえに、正しい命題の立て方は次のようになる:

「我々のCapEx/Opex設計と顧客構造が、整合的にEVAを最大化する構造となっているか?」

💡構造設計に基づく戦術例

入力構造(設計)中間成果(結果)出力価値
顧客ごとのCAC(Customer Acquisition Cost)およびリードタイムに応じた先行投資ARPU, LTVの最適化EVA/FCFの増加
設備投資の回収期間と稼働率を加味した投資判断資本回転率の向上EVA/FCFの増加
パートナーとの収益分配構造を事前に制御(OpEx最適化)限界利益率の改善EVA/FCFの増加

🔒まとめ

売上とは、構造化された支出(CapEx/Opex)の反射的結果である。ゆえに売上の直接的操作は原理的に不可能であり、操作可能なのは常に「支出構造とその設計」のみである。

TANAAKKは2021年から2025年までの4年間で年商100倍を達成した。これはベンチマークを超えるEVA Spreadの出力を追求した結果に過ぎない。TANAAKKではROICのハードルレートを30%と設定しており、2024年までの10年間の平均はEVA100%つまりIRR100%を越えている。ROICでは110%である。

1. EVA原理に基づいた非感情的資本投入

  • 他社が売上至上主義で誤った投資(=ROICが低下する投資)をしていた中で、
  • タナークは限界利益率の高い領域、回収可能性の高いプロダクトに集中投資。

2. 中間変数に対する異常な観察精度

  • 売上ではなく、EVAをブレイクダウンした「資本回転率」「在庫回転率」「ユニット経済性」「ARPU」「契約継続率」などに注視。

3. 末端指標ではなく「構造整合性」で経営を評価

  • EVAスプレッドやROIC、WACCに基づいた評価で、売上規模の幻想に振り回されず、
  • 経営判断の整合性と自己資本成長速度を最適化。(LAP, PLOG, PcLOG)