Bitcoinの理想と実態
Satoshi Nakamotoが2008に公開したビットコインのホワイトペーパーにはビットコインの特徴が記されている。
https://bitcoin.org/bitcoin.pdf
ビットコインは送金した事実だけを記録する仕組みで、2重送金ができないように10分に1回全てのビットコインの所有情報と残高情報を送金分だけ廃棄し、新たな情報にリセットする仕組みである。過去の全履歴はhttps://mempool.space/ja/txsのように公開されている。流通総額が1兆ドル規模で1BTC US$100K前後と理解している人は多いかもしれないが、純粋な技術だけを取り出してみると、10分おきに5000件程度の世界中の送金リクエストをproof of workした計算資源提供者に手数料として1件数円〜数百円を配るという経済モデルである。
また、対価の受け取りについては関知せず、これまでの送金履歴が全て公開されており、二重支払が6回(10分*6回)ほどの暗号解読コストにより防がれているという設計である。
当初は銀行を介さないpear to pearの国際送金網を想定していたようだが、限界がクリアになってきている。全世界のノードの送金はたったの1200万回程度であるが、1200回の送金に使われる計算資源は演算資源は月間100万件しかトランザクションない一方1028回の計算をする。首位のマイナーであっても5年間で1 billion以上の赤字であり、計算資源の提供によって稼ぐことのできるモデルではない。手数料が低すぎるということであれば、1200万回の送金で3000億円かかるのであれば、1回あたり25,000円の送金手数料を受領しないと演算コストに見合わないのである。
仮想通貨の取引所はビットコインの送金を伴わずにデータベース上で帳簿のデータを上書きしているだけなので、この手数料には関連していない。
主要マイナーの純利益推移(単位:百万ドル)
※ 100M = 1億ドル(約150億円)
| 企業名 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
| Marathon Digital | ▲30 | ▲694 | +259 | +541 | ▲1,311 |
| Riot Platforms | ▲18 | ▲180 | +127 | +135 | ▲646 |
| CleanSpark | ▲22 | ▲57 | ▲145 | +364 | ▲267 (TTM) |
(▲は赤字を示す。2025年は最新の四半期報告に基づく年間換算値を含む)
そうすると、peat to pearという初期コンセプトも揺らいでくる。現状は現金を動かさずに帳簿で送金を記録する銀行とあまり変わらなくなっている。また、ビットコインの匿名性も、フルノードに残高を問い合わせる過程でむしろ完全に公開された情報になってしまう。自分が持っている残高にも関わらず、送金時にはデューデリジェンスとして、自分の残高を確認する必要があるなどの技術的コストを勘案すると、匿名にするための完全秘匿コストが高過ぎて、匿名性のある送金手段にはなり得ない。
ビットコインは実際には相当現金化しづらい資産である。現金化せずに寝かせ続けることで、最後に誰が一気に金を引き出すか、ババ抜きのジョーカーに誰が残るかという小競り合いである可能性もある。国が押収したビットコインを市場に放出すると価格は急激に落ちるはずである。ビットコインを担保とした融資も、追証のリスクがあり、差し押さえしたとしても銀行は担保を抑えられるわけではないので、伝統的金融機関は取り合わないだろう。ヘッジファンドが取り組むとしても、流行りで買いたい投資家の代理購買をしているだけなので、金融機関が自己資金でリスクをとっているわけではない。
ビットコインに既存のUSD経済を上回るようなcomputational efficiencyは一つも見当たらない。Satoshi Nakamotoもここまでおおごとになるとは思っていなかったのかもしれない。

