成長企業にとっての社長の真の役割

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成長企業にとっての社長の真の役割

成功する社長像とは

成功した社長とはどのようなイメージだろうか。大企業の社長は演説のスピーチすら社長室にセリフを書いてもらうような形骸化した象徴としての機能に甘んじていることがあるが、これは社長の真のロールモデルではなく、社員に押し潰された「負けた社長」の姿である。例えばミシュランの三つ星レストランのシェフが厨房は部下に任せているので、出汁の作り方やスープの仕上げ方を知らないといっているのと同じなのである。光星シェフであれば、魚、野菜、肉の仕入れから熟成方法、カット方法、出汁の作り方、調味料の熱の入れ方、化学的なガストロノミーとして、学問としての料理について、あらゆる要素で部下よりも秀でていると共に、商売上手であり、経営上手な必要がある。

社長はあらゆる面で部下よりも優れてなくてはならない

実はトップは、あらゆる部下よりも優れていなくてはならない。部下よりも優秀にあらゆる業務をこなすことができる一方で、あえてその業務をやらず、部分的に社員に委託するのである。この委託とは放任ではなく、監視あってこその委託であり、もし穴が生じれば社長自身が穴を塞ぐ能力を有していないといけない。穴を塞ぐ能力すら、社員よりも優れているので、穴を塞ぐ監視作業も他人に委託することもできる。委託作業だけで監視できていないのであれば、それは自分が優れていることの証明にはならず、社長の資格はない。

液体金属のように穴を補填できる全部の部門の原型になれることと、社会を構成するあらゆる要素を学習するための時間と資本を与えられうる突出性、特権性が最も重要な社長の要素である。

一芸に秀でていることは経済的な成功の必要条件ではない

人は得てして弱点を探したがる。小学生や中学生、学校生活においてスポーツは得意だが勉強は苦手、勉強は得意だがスポーツは苦手などの「特化型」が好まれるのはテレビの見過ぎかもしれない。「特化型」をまとめているのは資本家としての司会者であるが、司会者の性能の突出性にフォーカスが当たることはほとんどない。司会者は一発屋にもなれれば、コントで優勝することもできる。不動産や飲食業の経営もできるだろう。何をやらせてもある程度成功するという性質を持っていないと「格の違い」が説明できない。

例えば、東京駅前の丸ビルと、東京以外の一等地のハブ駅前ビルを比較するとしたら、周囲にある企業の数、飲食店の数、ホテルの数、人口流入、昼間人口、そして土台、構造、内装まであらゆるものが地方ビルより優れているだろう。

「空調設備だけは地方の方が優れている」「トイレだけ見ればうちが一番だ」「エントランスはここが一番」というような「特化型」評価は建築物では成立しない。あらゆる要素が上回っているから、Sグレード、Aグレード、Bグレードという差がついてしまう。

例えばダイヤモンドだとしても、DグレードはEグレードに比べてあらゆる要素が優れている。カラット数はEグレードの方が大きなものがたくさん生産されるかもしれないが、どんなに多くのEグレードのダイヤモンドを見つけたところで、たったのひとつもDグレードを上回るEグレードは存在しない。

つまり、隔絶が、格の違いの必須要素である。したがって、社長とそれ以外を分離する要素は、「社長はその企業構造体の内部であらゆる要素において部下よりも優れている」というこの一点のみなのである。

社長は全方位で部下の10倍のパフォーマンスを出せる人のことである。

トップはどの業界でも、その他のポジションの人よりもあらゆる要素で上手くこなせる人のことをいう。ユーチューバーであっても、ロケ地決定、シナリオ決定、撮影、編集、加工、アップロード、テロップ、収入確保まで、一連のバリューチェーンを1人でこなせた人だけがトップユーチューバーになれる点で同じ理屈である。

メディアの「キャラ立ち」至上主義の誤り

テレビやメディアにとって、最も避けたいのは「複雑さ」です。視聴者の注意を惹きつけるためには、人間を記号化する必要があります。

  • 分かりやすさの追求: 「数字に異常に強い経理の天才」「営業の神様」といった、特定のパラメーターだけが振り切れたキャラクターは、演出として非常に使い勝手が良いのです。
  • 「全能の苦しみ」は映えない: 社長が深夜に法務書類を読み込み、デジタルオペレーションのバグを修正し、翌朝には施工現場の安全管理を徹底する……といった「全方位での泥臭い研鑽」は、地味すぎて放送尺(あるいは読者の興味)に耐えられません。

「天才信仰」という名の、大衆への慰め

「一芸に秀でればいい」という嘘は、大衆(部下層)にとっての「逃げ場」として機能する。

  • 努力の限定: 「自分は営業が苦手だが、技術があるからこれでいい」という免罪符を与えてくれる。
  • 突出の矮小化: 「あの人は〇〇ができるだけの変人だ」とラベルを貼ることで、全方位で自分たちを凌駕する「真の強者」の存在を認めずに済む。
  • ストーリー性: 「欠陥だらけの人間が、一つの武器だけで世界を制する」という物語は、現実の過酷な総力戦(経営)を忘れさせてくれるエンターテインメントとして最適。

「バリューチェーンの分断」による視界不良

大衆メディアは、成功の「結果」だけを切り取ります。しかし、成功者がその一芸を「マネタイズ」し「組織化」する過程では、必ず一芸以外の膨大な実務スキル(法務、財務、調整、IT)を本人が掌握している。

  • メディアの嘘: 「歌が上手いから売れた」と報じますが、実際にはそのアーティストが「自身の見せ方をセルフプロデュースし、契約書の不備を見抜き、デジタルの拡散構造を理解していた」事実はカットされます。
  • 社長の現実: 「一芸」は単なる突撃の矛に過ぎずその矛を振るうための「体幹(財務・法務)」や「神経系(デジタル・組織管理)」がなければ、振り回した瞬間に矛の重さに耐えきれず自滅する。

自分より優秀な専門家に権限を委譲するというのは嘘で、社長はあらゆる人材より優れていなくてはいけない。専門分野について社長よりも詳しいように見える人がいたとしてもそれはリソースの使い方の違いであり、仮に社長がその人のポジションを実行した場合その人よりも10倍パフォーマンスがある状態でなければならない。つまり社長が営業、施工、経理、ITあらゆる方面に秀でていないと組織は突出しない。

格の違いとは部分的な勝利の積み重ねではなく、構造的な超越、隔絶、優越である

「格の違い(隔絶)」とは、部分的な勝利の積み重ねではなく、構造そのものの全方位的な優越であるという事実を認知しなければ、組織の成長は社長の器によって制限されることとなる。社長は原子数の違う元素のようなものであり、プラチナと金の陽子数が1違うということの間には、兄弟であっても2親等離れているというのと同様にキロノヴァ級の宇宙イベントがないと遷移できないような原理の違いを包摂している。距離は近いのに永遠に近づけない存在になれないようでは、企業の成長を実現することはできない。

世に言う「権限委譲」は、その多くが「無知ゆえの丸投げ」だが、真の社長における委託は、「全能者の代替執行と監査委託なのである」

「時間と資本」を学習へ転換する特権性

なぜ社長だけが「全部門の原型」になれるのか。それは、社長だけに許された「学習リソースの独占」があるからである。特権構造的に「部下は社長以上になれない」したがって、社長が超絶に優れていなければ、部下の成長は止まって再舞う。

  • 特権の行使: 現場をシステム化、分業化して浮かせた「時間」と、事業で得た「資本」を、自分の脳のアップデートに全投下する。この特権を使い倒すことで、部下が自分の専門分野に閉じこもっている間に、社長は全方位のバリューチェーンを串刺しにする知見を獲得できる。

結論:社長とは「組織における唯一の完全体」である

成功した社長のイメージとは、椅子に座って報告を待つ象徴ではなく、「組織の全機能を自らの細胞レベルで理解し、必要とあらばどの部位の細胞にもなり代わって、圧倒的な出力で機能させてみせる超個体」である。「出力が圧倒的であるために、椅子に座って動いていないように見えるだけ」である。

「部下のほうが詳しい」という言葉を出した瞬間、社長はその特権性を失い、部下の僻みと怠慢に飲み込まれる。この緊張感こそが、突出した企業の生命線と言える。

「あえて自分ではやらずに部下に委託しているが、本気を出せばいつでも自分が穴を塞げるように牙を研ぎ続ける」のが社長の習慣であり、部下が「自分の方が詳しい」と錯覚し始めた時、その鼻をへし折り、圧倒的な格の違いを見せつけるための「決定的な武器」を持つことが社長の座を継続するための条件である。

スタートアップ投資の2つの条件

つまり、現代的なスタートアップ投資において社長の資質を見極めるとしたら以下の2要件となる

  1. 財務調達、法人営業、アーキテクチャ、デザイン、エンジニアリング、経理、税務、労務、会計監査といった成長のボトルネックになりうるあらゆる要素を処理できる資質を持った人材である
  2. または上記のすべての要素を後天的に獲得しうる資質をもつ人材である

そんな人材なかなか見つからないので投資先が見つからないという意見が出れば、それが正解である。上記のすべての資質が揃うことなしに純利益はでない。だから、スタートアップに投資する1万人の投資家のうち、9999人は失敗する。ほとんどのスタートアップが、コンペティティブなROICという唯一のターゲットを充足できないのは上記前提条件に対するゴール設定の甘さが原因である。人間が集まって株主、取締役、従業員の誰一人として責任を取ることのない大企業はその原因で成長が止まっている。大企業であっても成長する大企業は社長が最も優秀な社員である。スタートアップの成長の原因は100%社長に帰属する。

もしあなたの会社がお飾り社長のように見える社長なのであれば、それは本人が職務を怠っているのではない。原因は全く別のところにあり、経営という宇宙における「元素」配置そのものを間違ってしまった采配の残念さである。「金(Au179, Z=97)」や装飾としてのプラチナ、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイアを飾る必要がある王の玉座に、ガラス細工を飾ってしまっていることによる弊害は是正することが難しい。

Sグレードの論理: 地方ビルがどれだけ清掃を徹底しても、丸ビルの「立地・構造・集積」には勝てないのと同様に、専門家がどれだけスキルを磨いても、バリューチェーン全体を統括し、再定義できる社長の「メタ・スキル」には到達できません。

キロノヴァ級の変異: 凡人が社長になる(元素転換する)には、単なる努力ではなく、死線を越えるような圧倒的なエネルギー投下による「学習」と「自己破壊」が必要。まずはこのエネルギーを集められる「特権」と「膨大なアニーリングに」耐えうる資質が、位置ポテンシャルの停留としての社長の地位を探す手段となる。

社長の地位は高いところにあるのではなく、低いところにある。

「穴を埋める」という行為は、上から見下ろして指示することではなく、自らが最も低い位置へ流れ込み、下から組織を押し上げ、支えることを意味する。

  • 原型としての低さ: どんな形状の隙間にも入り込み、密閉し、構造を補強する。部下が「高み(一芸)」を目指して浮足立つ中で、社長だけは地面に這いつくばり、バリューチェーンの末端という「低い場所」に潜む魔物を退治し続けなければならない。
  • 特権の源泉: 誰もが嫌がる「低い場所(泥臭い実務、地味な学習、過酷な責任)」を独占しているからこそ、社長は組織全体の支配権という「特権」を正当に保持できる。