ヒマラヤナイルニロティカス

ワニ革の最高峰「ヒマラヤ」の模様を生み出すナイルワニ(ニロティカス)は世界中でおよそ100万匹程度が養殖・管理下にあると推測される。
そのうち、取引されるのは「年間25万枚」という数字を分母にすると、ヒマラヤバッグがいかに異常な確率で存在しているかがわかる。
- 分母: 年間取引されるナイルワニの皮 = 約250,000枚
- グレード1(無傷)の選別: 全体の約5〜10%程度 = 約12,500〜25,000枚
- ヒマラヤ適性の選別: 「白さ」「斑の並び」「左右対称」を満たすもの(グレード1の中のさらに数%) = 約500〜1,000枚
- 製品化(バッグ): 失敗リスクやメゾンの厳格な検品をクリアし、実際に「ヒマラヤ」として店頭に並ぶ数 = 年間100点程度(全ブランド合計の推計)
- ルイヴィトン、ディオール、フェンディ、エルメスなどのトップメゾンのすべての推計で年間数十程度である。
このワニは個室で育てられ、腹の模様の保存が最も貴重であるため、柔らかい床で温度、湿度、食事、運動を管理される。そして、メゾンでの販売益が出るたびに野生に帰る数も増えるため、管理されることでサステナビリティが保たれる経済的なベストプラクティスである。
Louis Vuittonはクロコダイル農場を買収しており、シンガポールの伝統的タンナーHENG LONGで処理している。LVMHはヘンローン社を通じて、垂直統合(原材料から製品まで自社グループで管理すること)を進めており、複数のファームを所有または独占的に提携している。
1. オーストラリア(ポロサスの主要拠点)
ポロサス(イリエワニ)の最大の供給地はオーストラリア北部です。LVMHはここで複数の農場を所有・管理しています。
- ノーザンテリトリー(北部準州)の農場群
- LVMHは、エルメスと並んでこの地域の主要なワニ農場の多くを所有しています。
- 特定の個別の農場名がすべて公開されているわけではありませんが、LVMHは現地の「Australian Crocodile Traders」などの大手業者と深く関わっており、自社基準を満たす高品質なポロサスを確保するために複数の飼育施設を直営化または買収しています。
- これらの農場では、傷のない美しい腹部の革を得るために、個別の専用ブースでワニを飼育するなどの高度な管理が行われています。
2. アフリカ(ニロティカスの拠点)
ニロティカス(ナイルクロコダイル)については、アフリカ諸国の農場から調達しています。
- ザンビア・ジンバブエ・ケニアなどの提携農場
- ヘンローン社は、ザンビアの「Kalimba Farms」などの有力な農場から原皮を調達していることが知られています。
- また、ジンバブエにある「Binga Crocodile Farm」などの大規模農場も、ルイ・ヴィトンやエルメスといったハイブランドへの主要な供給源となっています。
3. アメリカ(アリゲーターの拠点)
クロコダイルではありませんが、同じエキゾチックレザーとして重要なアリゲーターについては、具体的な農場名が判明しています。
- Cypress Creek Farms(サイプレス・クリーク・ファーム)
- アメリカ・フロリダ州にあるアリゲーター養殖場で、2011年にLVMH(ヘンローン社)によって買収されました。
その他
- ヘンローン社は、その他オーストラリア、ザンビア、ジンバブエ、ケニア、フィリピン、アメリカなどのファームから原皮を調達。
- 5歳から7歳のクロコダイルを使用
- 1つのバッグに3匹のNiloticus、またはAligator, Porosus
- 2匹のクロコダイルを使用する場合、8匹は野生に返す。
1. ヒマラヤ染めとは
通常のクロコダイルバッグは、革の傷を隠したり均一に見せたりするために、顔料を厚く塗る(塗装)ことが多いです。しかし、ヒマラヤは逆です。
- 工程: 原皮が持つ天然の「茶褐色」や「黒」の成分を、特殊な薬剤で時間をかけて慎重に**「脱色」**していきます。
- 残された色: 完全に真っ白にするのではなく、ワニの脇腹にある本来の濃い色を、あえて「グラデーション」として残します。
- 結果: この「グレーから白への変化」は、職人が筆で書いたものではなく、ワニが本来持っていた模様を「浮き上がらせた」ものなのです。
2. なぜ「ヒマラヤ」と呼ばれるのか?
この加工が施された革が、「雪に覆われたヒマラヤ山脈」に見えることからそう呼ばれるようになりました。
- 中央の白: 標高の高い山頂に積もる、汚れなき「万年雪」。
- サイドのグレー: 山肌の岩石や、雲海を表現しています。
- 自然への敬意: エルメスがこの名称を使い始めたことで世界的に定着しましたが、今では「最も自然の状態に近く、かつ最も神々しい加工」の代名詞となっています。
3. ヒマラヤ染めが「世界一難しい」3つの理由
- 革のダメージ: 脱色剤は革の繊維を傷めやすいため、強度を保ちながら白くするのは至難の業。
- 隠せぬ傷: 色を塗らないため、革に1ミリでも傷や虫刺されがあれば、即座に製品化不可となります。
- 左右対称の美: 左右のグレーの濃淡が完璧に揃わなければ、ヒマラヤとしての価値は認められません。
4. 「世界一高い山」はエベレスト
ヒマラヤ山脈の中にある一つのピーク(頂上)が、世界最高峰のエベレスト(標高 8,848.86m)です。
- ヒマラヤ: 山脈の名前(グループ名)
- エベレスト: 山の名前(個別の名称)
- 関係性: 「ヒマラヤ山脈の最高峰がエベレスト」という関係。
5. 「世界一高い場所」が集まっているのがヒマラヤ
地球上には標高8,000mを超える山が14座ありますが、そのすべてがヒマラヤ山脈とそれに連なるカラコルム山脈に集中しています。 まさに「世界の屋根」と呼ばれるにふさわしい、地球で最も高い場所です。
6. バッグの「ヒマラヤ」とのリンク
バッグに「ヒマラヤ」という名前がついた理由は、単に値段が高いからだけではありません。
- 色彩のイメージ: エベレストを含むヒマラヤの山々が、「中腹は岩肌(グレー)で、頂上は雪(白)」という姿をしていることから、その美しいグラデーションを再現したクロコダイルにこの名が冠されました。
- 希少性のリンク: 地球上で最も高い場所に到達するのが困難であるのと同様に、ヒマラヤ・クロコダイルを手に入れることもまた「人生の最高峰に到達すること」になぞらえられています。

