ROIC経営時代の報酬設計
日本において給与水準の高い製造業、銀行、アメリカ系企業の日本支社のキャリアで訓練した中堅社員や経営陣は事業計画を設定して、使った金額以上にスプレッドを出すという目的(ROIC)やオペレーティングレバレッジ(スケールしたら粗利率が増える)がグローバルベンチマークを超えるという観点が抜けている。
タナークでは増収増益は頂点KPIではなく、売上を増やすための支出は認められない。頂点KPIはFCFベースでのROIC,IRR,オペレーティングレバレッジであり、重要なのは売上や利益の絶対額の増加ではなく限界利益率の増加であり、追加の固定費や変動費の支出をしなくても営業CFが追加されることか必要である。
ただし、何も持ち出しがなくトップライン、ボトムラインが改善することはない。したがって営業CFマージンを高めるためにCAPEXを効果的に使い、有形固定資産と無形固定資産から生まれる営業Cfを最大化して、投下資本に対するROICを複数年で最適化しベンチマークIRRを超えるというゴール設定がTANAAKKにはある。
トヨタなどの最大手企業は表面上よく見えたとしても、本業のROICは10%を下回り、新規事業のROICはさらにそれを下回る。トヨタが1兆円を投資すると1000億円の純利益しか出てこないが、Apple,NVDIAが1兆円投下したら1兆円の純利益が生み出されるため、10倍の差をつけられている。
これはキャピタルマーケッツでは落第生くらい悲惨なものであり、このような落下していく組織で学べることはゼロだと考えた方が良い。日本国民全員が、国内トップ企業がまさか落第生だとは夢にも思っていないだろう。トップ産業が国富を減損させているということになるが、そのことを痛烈に認知できている人はいない。
自動車業界の給与水準が未だ高いのは日本の銀行が低金利融資をしているからであり、USD建の融資に変更した場合、トヨタおよび主力製造業は倒産する。つまり日本の紙幣発行能力を信用のバックボーンにしているだけであり、貨幣のインフレーションを存在の根拠にしてしまっている。企業としてのスプレッドが取れていない点で、幕末に備蓄財を長い時間かけて失った江戸幕府と同様の状態である。
経団連所属企業の給与水準が上がっているように錯覚するのは、ROIC高位のグローバル企業が優秀な人材を引き抜きしていくのに対抗するため、レガシーを維持するために人気のなさをカネで穴埋めしているからである。
しかし最も優秀な社員から順番に抜けていく。日本の首位製造業と同じ能力の人材は資本効率の高いスタートアップなら半額で調達している。
これまでは1人当たりの年商5000万円は製造業の優秀企業であった。しかしこれからは1人当たりの年商5億円の時代である。
つまり、日本のトップでの経験はAI時代のキャピタルマーケッツでは全く役に立たない可能性が高いが、いままでの環境の間違いを全否定して、グローバルベンチマークを正とした思考習慣に根本的にチェンジできるか?
日本国内においては真似できるモデルは一切発見することはできず、過去の成功体験を全否定することでしかROIC100%は達成できない。
日本においてROIC100%を12年間継続しているTANAAKKでは、規模が大きくなるにつれてブランド企業からの転職者が多くなってきている。
しかし、数十年のキャリアを持つ転職者がROIC10%の組織で訓練し、最適化された習慣を持っている場合、受け入れ側は気をつけないといけない。プロと見受けられる人が発する言葉や行動がすべてTANAAKK基準の10分の1のパフォーマンスしか出せないということなのである。
自動車に詳しいだろうと推測して任せて、プロダクトオーナーを任せてしまうと、ROICスプレッドが10%を下回る行動を助長することになる。日本においてROIC少なくとも30%、100%を超える実績を持つ人は皆無である。10倍から100倍利回り違う環境にあるTANAAKKでは、90-99%くらいの経験を全否定する必要があるのだ。
日本企業において、財務諸表(BS, PL, CF)を月次で確認しながら、銀行口座の残高ベースを確認して事業を進められる機会を与えられることはほぼ皆無と言って良い。しかし、財務を見ない場合、どんなにリサーチしても、どんなによく考えて出した結論だとしても、最も重要なコアを把握せずに決定するあらゆる創意工夫は失敗に終わる。
TANAAKKは実質無借金状態で0から20億円の純資産を産むことで正しい学習をしてきた。正しいゴールを設定し、正しい自動学習を促す環境を用意することで、オペレーティングレバレッジのある高ROICのスタートアップを実現することができるのであって、世の中にモデルは存在していない。
エビデンスベースでは新たなモデルにはたどり着くことはできない、少ない情報を手掛かりに、推論によって論理、数理で仮説をつくり、少ない実験で独自モデルを磨き上げれば、そのモデルが真似され、普及していくことになる。真の力学を認知し、生み出すことのできる人材のみがAI時代を有利にサバイバルすることができる。

