オークションや二次流通で価格が上がる、再現性の低いケースを追い求める不自然さ
オークションや二次流通は、都内のマンション投資のように売却価格が上がるようなインカム、キャピタルゲイン狙いであれば合理的だが、それ以外の中古は、プライマリーよりも安く買えるというインセンティブだろう。一方、プライマリーよりも高く売られているものを買う買い手がいる。
どうもこの需要について理解することができない。古いものを、新品よりも高い費用を出して買うというのはどのような心境なのだろうか。VIP対応でVCAのMistery Set™を買って、買った瞬間に値が下がるのは仕方ないとして、リセールでも手に入れたいと思う動機はどこから来るのか。
旗艦店で至れり尽くせりの対応をしてもらうからついているはずの価格が、他の要因で上がってしまった時、それを買うのがステータスだという説明は違和感がある。本当は価値の源泉はゴールドだけだが、金無垢ブレスレットだけではなく、職人がほとんどいないようなジェムセットやグランドコンプリケーションを高額に設定し、その高額の商品を買うことがステータスであるとするのはうまく作られた錯覚ではないかと思う。
業界で最もネット参入者の職人を増加採用しているのはロレックスだろうし、消費者として初めて買う時計もロレックスが一番多いだろう。ロレックスにはできない複雑機構を売りにしてしまうのは、例えNo.1,2,3を取ったとしても言い訳になってしまうかもしれない。
新品でなかなか買えないものがオークションで並んでいるのは、画像は魅力的だがいざ買うとなるとアクセシビリティが薄く、距離が離れすぎていて購買行動までつながらない。リセール品を常に見ている人であればオークションでも買えると思うのだが、本業の雇用、営業キャッシュフロー、納税をするのが本来の事業家としてのステータスであるはずなので、常にリセール品の価格を見ているのは、株式市場が気になって常に株式トレードしている上場企業の役員のようであり、矛盾した姿になってしまう。
ボンドやエクイティはアセットクラスとして確立しているが、リセールマーケットは再現性がない。銀座の金無垢時計を買い尽くそうとしたら、全店舗回っても100本もないはずなので、最大で10億円で終わってしまう。全くもって再現性がない。再現性がないところに雇用は生まれないわけであるから、再現性の低い領域に入りこむのは稼ぐことを複雑にしてしまう罠だ。一方新品のフル金無垢なら年間5万本生産されているので、どこかのメゾンでは買えるだろう。これは5000億円の市場である。
流動性が高くて価値が上がる資産もあるが、流動性が低いことで出品点数が少なすぎて価格低下圧力をまだ受けておらず、レアだと勘違いしてしまうことが往々にある。
本来稼ぐというのはポテンシャル差によるスプレッドであるわけなので、過度な複雑性を持ち出すということは、エナジートラップにハマってしまっている。ゴールドまでを扱う分には国は安定するが、ウランなどの重元素を扱おうとすると国が債務超過になってしまうのと似ている。
古物商は経済、需要、雇用と利益相反するので、中古市場という存在自体が利益相反している可能性はある。中古品がどんなに流通したとしても小売店が少し運営されるくらいで安定的な雇用が創出されない。
このように、ネット参入者が少なく、ネットマイナスであるにもかかわらず、商品も労働も単価だけは上がる市場というのがあり、見た目は同じであるが、ネット参入者が増えることによって将来の収益期待で価格が上がる市場とは違う理屈で動いてる。ネットマイナスマーケットの罠にハマると、機会損失を生むかもしれない。

