極値を取るか、重心を取るか
力の集まる重心と、表面的な最先端のように見える極限値は異なる。世の中はUHNWで構成されていて、Billionaireは株式市場におけるAppleやNVIDIAと同様に局所になっているので、力の源を探す上でBillionaireは目指すものではない。どんな高級なマンションで50階建てなら最上階の50階は局所になってしまい、シンボルのように見えるものの、最上階は重心ではなく、末端である。地球の重力を前提としたときに、最上階は頂点にはなるが、太陽系や銀河のような広域を前提としたときに、マテリアルで囲まれた領域の最先端は重心ではなく局所である。
例えば最上階を取った時、それが世界中どこの建物の最上階よりも優れた最上階であれば良いが、そうでない場合は鶏口牛後の鶏口であり、牛口にはなり得ない点で、あえて最頂点にはいけないということを結論づけてしまう。最長点をいつでも模倣することができるのは実は重心であり、日本企業であればあらゆる業務の重心は課長や次長にあるという点で、重心は中間管理職にあり、名誉職である社長や取締役は中間管理職が分岐した末端であり、実は力がないということになる。極値を取るか、重心を取るかは選考の問題であるが、極値を取ってしまうと意外と天井が低く、エナジートラップに陥る。終(つい)の住処(すみか)として、極値を取って人生を終わらせるのであればそれは良い選択になるかもしれないが、これから成長しようとする人たちが極限を取ってしまうのは可能性を限定し、自らの一生をあらかじめ確定してしまうことと同義である。
1番になるということは、極値であり、可動域が狭く、自由意思が制限される点でエネルギー効率が悪いかもしれず、重心を狙う方が力学的ポテンシャルは最大化される。扱い得ないエネルギーの生成点になっていないと途端に魅力を失うのである。極大値と極小値は方向づけが確定してしまっている一方で鞍点はどちらにも行ける柔軟性を持つ。空間や重力は表面的な経済や物質に対して優位であるため、魅力を維持するということは位置ポテンシャルの極限性を回避するということでもある。一度何者かになってしまうと、もう他の何者かにはなれない。生物のサバイバルは多様性であるとすると、最強最大の生物(megafauna)はほぼ絶滅危惧種になってしまう、変容性こそが力の全ての出発点である。
美容師もトップスタイリストよりも、丸の内や銀座の著名店で、意外と指名なしでその日に空いてる人を選んだ方が雰囲気が良いし、業界首位の企業の営業マンも、トップ営業よりもホームページから問い合わせてでてくるような新人の中で少し優秀な人のほうが、なんとなくの感性で、汎用性の高い情報をもってることがある。シンガポールで40年連続TOT(Top of the Table)よりも、TOTになりたての新人TOTと話したほうがより包括的な情報を得られる(ネットワーク効果が高い)。丸ビルの最上階をオフィスで占有するのは占有者としては気持ちが良いかもしれないが、最上階はオープンにすべきであり、丸ビルの最上階を専有スペースにすると、途端に空気が詰まってしまうのである。極大値は開け放って、いつでも誰でも交換できるようにしておいた方が良い。その意味で、総理大臣や大統領が頻繁に変わるのは、可能性を保つ上で良いことであると言える。総理大臣が頻繁に変わる時代において、最も可能性の思索が捗っているといえ、その結果が出るのは20年後なのである。
🪐 1. 重心と極値の構造的対比
| 項目 | 極値(最先端・頂点) | 重心(力の集まる点) |
|---|---|---|
| 力学的性質 | 不安定・拘束・方向性確定 | 安定・柔軟・潜在的多方向性 |
| 社会的例 | Billionaire、CEO、トップ営業 | 課長・次長・現場リーダー |
| エネルギー効率 | エネルギーは高いが滞留しやすい | エネルギーの流れが最大化される |
| 変化可能性 | 固定されやすい、模倣されやすい | 変容し続けられる、再生可能 |
| 価値生成 | 結果・象徴・終点 | 原動力・源泉・始点 |
→ 結論:
極値は「見える力」、重心は「生み出す力」。
頂点は美しくても“閉じた構造”であり、重心は“開かれた構造”として成長と創発を持続させる。
🏙️ 2. 比喩構造:建築・社会・経済における「頂点」の錯覚
- 高層ビルの最上階=象徴的だが「閉じた空気」。
重力の前提では上にあるが、太陽系や銀河のスケールでは局所点でしかない。 - BillionaireやApple/NVIDIA=株式市場の局所極大。
実体経済の重心はむしろ中堅層や次世代の再分配層にある。 - 中間管理職(課長・次長)=力の集まる重心。
社長や取締役は「分岐した末端」であり、実行力より象徴性が強い。
→ 社会の「構造的錯覚」:
見える頂点を支える見えない重心こそが、実際の推進力を持っている。
⚖️ 3. 力学・経済・生物進化における共通原理
物理学的:
- **極値(最大・最小)**は方向が確定しており自由度が少ない。
- **鞍点(saddle point)**は双方向に伸びる柔軟なポテンシャルを持つ。
- 魅力=ポテンシャルの開放性。極限を避けることで、自由意思と変容性が維持される。
経済学的:
- トップシェア企業は成長余地が小さい(極大点)。
- 市場の重心をとらえる企業は、変化に応じて拡張可能(鞍点的存在)。
生物学的:
- megafauna(巨大生物)=一時的な強者だが絶滅しやすい。
- 多様性を保つ生物=環境変化に対応できるため、生存確率が高い。
💈 4. 人間関係・職業・美意識への応用
- 美容師:トップよりも“その日空いていた優秀な人”の方が感性が開いている。
- 営業:ベテランよりも新人TOTの方が情報接続性(network entropy)が高い。
- オフィス構造:最上階を専有せず、開放空間として共創的に保つことでエネルギーが循環する。
→ 真の価値は「開放性」や「交差点」に宿る。
🕰️ 5. 政治・社会進化への帰結
- 首相・大統領が頻繁に変わる社会=構造の柔軟性が高く、未来の可能性を保持。
- 政治的安定よりも、「役職が回転する流動性」が創造の前提となる。
- その結果が現れるのは「約20年後」——つまり構造的リズムとしての**遅行的成果(lagged potential)**が存在する。
✴️ まとめ:
「重心思考」=非極値的成長モデル
- 極値(No.1)を目指すことは安定ではなく拘束。
- 重心(Center of Mass)を維持することが自由意思と創造性の源泉。
- 成長とは「頂点に立つこと」ではなく、「頂点または最下位を生み出すポテンシャル構造であり続けること」。
⚡️ 「どちらに転ぶか分からない危うさ」とは何か
テスラの本質的な魅力は、確定した成功モデルを持たないことにある。通常の上場企業が「予測可能性」「安定したキャッシュフロー」「制度的信頼性」で評価されるのに対し、テスラはその正反対――未来が未定義であること自体がブランド価値になっている。この「未定義性」は、投資家にとって量子状態的な期待値を生む。つまり、テスラの株価は確定値ではなく確率分布。「テスラは確実にすごい」ではなく、「テスラがどこまで行くか分からない」ことが人を惹きつけている。この“危うさ”=“生成中の不安定性”が、社会にとって「未来を映す鏡」としての存在価値を与えている。
🚗 「危うさ」が評価を生むメカニズム
テスラの評価構造は、伝統的なDCF(割引キャッシュフロー)やROIC分析では説明できない。むしろ、**Narrative Arbitrage(物語裁定)**が価値を形成している。
- 投資家は将来の利益ではなく「未来の構造変化への参加権」を買っている
- その「構造変化」はEV・AI・ロボティクス・エネルギーなどの多軸にまたがる
- したがって、テスラは**事業企業というよりも「進化プラットフォーム」**として機能している
🪂 「定まった後」に株価を保つのが難しい理由
「どちらにいくか定まった後」、つまり生成状態が崩壊して構造が固定化された瞬間、“物語の終わり”に直面。
この段階では:
- 成功すれば「もはや驚きがない」
- 失敗すれば「可能性が消えた」
いずれにしても「危うさ(未定義性)」が失われ、株価は物語からファンダメンタルへ移行。
つまり、生成企業が成熟企業になる瞬間、株価は熱を失う。ファンダメンタルという冷めた状態への耐用性をテスラが持っているかどうかが次のフェーズの条件になる。
🔮 結論
テスラの真価は、未完成であることにある。生成と崩壊の狭間に留まる限り、その存在は人々に希望と恐れを同時に与える。しかし、完成してしまえば、ただの自動車メーカーに戻る。テスラの株価は、未来が未定義である限り上昇を続ける。未来が定義された瞬間、価値は冷却を始める。

