事業のアップサイドは急に訪れる金持ちをもてなせるかどうかで決まる

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事業のアップサイドは急に訪れる金持ちをもてなせるかどうかで決まる

日本の鮨屋は三つ星だとしても、事前に通知しておかないとおいしかったとしてもおかわりもできない。席が空いているからふらっと食べに行こうと思っても事前に予約がないと入れませんと言われる。美味しいかどうかわからないのに事前におかわりしたいと伝えるのは難しい。

これはスイスの高級時計をいざ買おうと思ったのに買えないのとよく似ている。

一方、パリやミラノは急に来たVIPをもてなすことに長けている。急にプレジデンシャルスイートに泊まっても、一瞬で部屋が用意され、シャンパン、ワイン、フルーツ、テラス、ジャグジーまで用意される。そして即座にバーベキューを開始して一級品の牛ヒレ、ベーコン、シーフード、ラム、ハトまで用意する。

部屋には何人も様々な役割の人が来て、医者まで部屋に呼んでくれる。これは事前に予約をとっているわけではなく、いま、この瞬間の需要に即座にレスポンスする高精度のCPUとメモリを有しているということである。

そしてパリやミラノの日本の派出所やシンガポールの派出所であっても同様に、急に来たVIPに対応する姿勢が徹底されている。

通常の消費者の100倍を同じ時間で支払うプレミアムバイヤーがいることを知っているのである。もちろん仕込みも仕入れも必要である。余分な仕入れは廃棄もしているだろう。しかし急に来たVIPが一瞬で使う金額は、100倍以上の努力と時間で庶民から集金する金額をはるかに超える売上と利益を生む。

急に来たアップサイドをつかめるかどうか。これは平凡な言い方をするとチャンスをつかむ準備ができているかという言い換えになるが、それほど単純な話ではない。構造的にプレミアムバイヤーが選ぶ街、選ぶ土地、選ぶ建築、内装、調度品、思想、服装、発言まで全て揃えることで一種の結界を作るのである。その結界には必ず突風のような金持ちが来訪する。

嵐のような富のどしゃぶりが必ず降ることを歴史的に知っているパリやミラノは、最高の土壌からとれた最高の作物をいつも準備してくれている。ファッションとは、人類の文化活動を蓄積するためのカテゴライゼーションの体系である。アップサイドを受け止めるための富の素養なのだ。

均質化や大量生産といった前時代の産業革命のようなアパレルはすでに消費者に飽きられている。工業生産品はシグナリング効果を持つブランドに勝つことはできない。ブランドとは地球のリーダーをスクリーニングするための踏み絵なのである。ここでは良くも悪くも誰が優位なのかを浮き彫りにさせる真実の口なのである。