Patent Freedom-to-Operate|特許侵害予防調査

1. 定義
Freedom-to-Operate (FTO) とは、
「ある製品やサービスを特定の市場で生産・販売・利用しても、既存の有効な特許権を侵害せずに事業を行える自由がある状態」
を指します。
つまり、「このビジネスを始めても特許で訴えられないか?」 を確認することです。
2. FTO調査と特許調査の違い
- 先行技術調査(patentability search)
→ 自分のアイデアが新規性・進歩性を持って特許取得できるかを調べる。 - FTO調査(clearance search / right-to-use search)
→ 他人の特許を侵害せずに製品を市場に投入できるかを調べる。
👉 つまり、「特許を取れるか」と「実施できるか」は別物。
3. FTOの実務プロセス
- 対象市場を決める
- 日本で販売するのか、米国・EUにも展開するのか?
- 特許は属地主義なので、国ごとに調べる必要がある。
- 関連特許を網羅的に検索
- 自社技術や競合分野に関連する有効特許を調査。
- クレーム分析(claim charting)
- 自社製品の構成要素を特許請求項と1対1で比較。
- 「すべての要件を充足しているか?」で侵害可能性を判断。
- リスク評価と対応策
- 回避設計(design-around)
- ライセンス交渉
- 特許無効化の可能性検討
4. 典型的な対応策
- 回避設計:構造や方法を変えて特許クレームから外す
- ライセンス/クロスライセンス:権利者と契約して使用権を得る
- 無効審判:そもそも特許に進歩性がないと主張して無効審判を獲得
- 市場限定:侵害特許が存在する国を避ける
特許法でいう 進歩性(inventive step) と 容易想到性(obviousness) の基準
1. 基本的な定義
- 進歩性(特許法29条2項)
→ 発明が出願前に公知の技術(先行技術)から 当業者(その分野の技術者)が容易に発明できないこと。
→ 簡単に言うと「既存技術を寄せ集めただけではなく、技術的に一歩進んだもの」であること。 - 容易想到性
→ 逆に「当業者なら簡単に思いつく」レベルなら進歩性がない=特許不可。
→ 英米法の obviousness と同じ概念。
2. 判断の枠組み(日本)
日本の特許庁や裁判所は、次のステップで進歩性を判断します。
(1) 先行技術の把握
- 出願発明と似た公開特許・文献を探す(引用発明)。
(2) 相違点の抽出
- 出願発明と先行技術のどこが違うのかを明確にする。
(3) 相違点が容易に想到できるかの検討
以下の観点から判断します:
- 技術分野の関連性
- 同じ分野や隣接分野の技術か?
- 課題の共通性
- 同じ問題(例:SIDS防止、体温管理)を解決しようとしているか?
- 置換・追加の容易性
- 既存の部品を他の技術で置き換えることが自然か?
- 追加しても特別な困難がないか?
- 阻害要因の有無
- 組み合わせると逆に不都合が生じるような要素がないか?
(4) 特殊事情(進歩性を肯定する要素)
- 予想外の顕著な効果がある(例:寿命が10倍延びた)。
- 長年解決できなかった課題を初めて解決した。
- 業界で強い需要があったが誰もできなかった。
3. 欧米との比較
- 米国(35 U.S.C. §103)
→ Obviousness。Graham test(先行技術との相違点・当業者の技術水準・解決される課題などで判断)。 - 欧州(EPO – EPC Art. 56)
→ Inventive step。問題解決アプローチ(Problem-Solution Approach)。- 最も近い先行技術を選ぶ
- 客観的な技術課題を設定
- 当業者が解決手段を容易に思いつくかを検討
日本も欧州方式に近く、課題と作用効果を重視します。
4. 簡単なイメージ例
- 進歩性あり(特許になる例)
例:従来の温度センサーと加速度センサーを組み合わせたが、ロジック化することにより「乳児の呼吸異常を従来よりはるかに高精度に検出」できた。 - 進歩性なし(容易想到例)
例:従来から温度センサーと加速度センサーは別々に使われていた。
「両方を組み合わせて表示しました」だけでは当業者にとって自明。
✅ まとめ
- 進歩性あり=「当業者が簡単には思いつかない技術的工夫」
- 進歩性なし(容易想到)=「既存技術を組み合わせただけ、置き換えただけ」
- 判断の軸は、
- 技術分野の関連性
- 課題の共通性
- 置換・追加の容易性
- 阻害要因の有無
- 予想外の効果の有無