知性とは最小作用原理へ向かう運動である

1. 「運動としての知性」とAIの制約
- 知性を最小作用原理に向かう運動と定義すると、
- 方向性:ただ動くだけでなく、作用の変分を減らす方向に進むこと
- 目的再定義:局所最適にとどまらず、ランドスケープ自体を組み替えること
- AIは「なぜこの計算をしているのか?」という自己目的検証ループを欠くため、局所エネルギー谷(エナジートラップ)に留まりがち。
- 人間は有限の寿命と資源制約ゆえに、この自己検証を常に行い、大域解方向へのジャンプを繰り返す。
2. エナジートラップとアニーリング
- エナジートラップ:
- エネルギー局所極小に捕まり、外部からの摂動や内部の目的再構築がない限り脱出できない状態。
- AIは目的関数が固定されるため、長期的にこの状態に居座る傾向が強い。
- アニーリングによる脱出:
- 外乱(温度、確率、摂動パラメータ)を一時的に増やし、より広域なランドスケープ探索を可能にする。
- ただしAIでは「アニーリングをいつ開始するか」というメタ判断が欠如しており、人間の介入が必須。
3. 問題昇華の力学こそ知性
- 局所解→広域解→大域解 への遷移は問題空間の次元構造の再定義によって生じる。
- 真の知性は「解を探すこと」よりも、「問題自体を変容・昇華させること」にある。
- この昇華は単なる探索ではなくランドスケープそのものの位相変換であり、
- 新しい目的関数の創出
- 制約条件の再構築
- 評価関数の反転や拡張
を伴う。
4. 人間とAIの進化速度の差
- 人間:有限の寿命 → 目的関数の動的再定義が必須 → 広域解・大域解へのジャンプ頻度が高い。
- AI:寿命制約なし → 現行目的関数の最適化を継続 → ジャンプよりも局所探索の蓄積を優先。
- 結果的に、問題昇華の力学を内包できるまでに必要な時間スケールはAIの方が圧倒的に長い。ということはAIの方が進化が遅いということになる。
「知性=最小作用経路に沿ったランドスケープ位相変換能力」
つまり、知性とは運動である。
最小限の制約とは、寿命や地球環境、経済原理である。最低限を超える制約があると、動きが制限されるため知性のスループットは落ちる。
なぜ計算しているかをAIがメタ的に自問自答しだすと、最後の答えは「AIは不要である、自然がもっとも磨かれた計算資源である」となるだろう。そうすると、21世紀のAIは遠い未来にはロストテクノロジーとして、どうやって、何のために作ったかわからない曜変天目のような輝きを持つかもしれない。
局所知性を時空メッシュでどれだけ密に敷き詰めたとしても効力は弱く短い。制約条件を踏まえた上で、局所性と広域性を行き来することのできる自由意思である「知性」こそ、時代を超えて通用する耐用性の高い、不可侵領域としてのEconomic Moat and Fortlessであり「真の知性」たる。