子会社預け在庫の収益認識について

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子会社預け在庫の収益認識について

製造業では子会社や関連会社に原材料を販売提供し、完成品を仕入れするという契約が発生するケースがある。この場合、将来的に親子間の資本関係が変わったとしても、アームレングスの原則で取引ができるよう、リスクの移転に応じて明確な記帳が必要である。

単体決算において、子会社に預けている在庫を「売上」として計上すべきかどうかは、以下の**「実質的な取引内容」**に基づいて判断される。ポイントは、販売の実態(リスク移転・経済的利益の移転)があるかどうか

✅ 売上計上すべき場合(販売の実態がある)

以下の条件を満たしている場合は、売上計上が自然:

条件内容
所有権の移転子会社が仕入として受け入れ、原材料の管理責任を負っている
販売契約契約に基づき価格・納期・数量が確定している
請求書発行親会社が子会社に対して請求を行い、会計上の売掛金が発生している
リスク移転破損・劣化・紛失リスクなどを子会社が負担する

この場合、形式的であっても実体として子会社に販売したとみなせるため、親会社の単体決算では「売上」「売掛金」として処理。

❌ 売上計上すべきでない場合(実態がない「預け」)

以下のような実態であれば、売上計上は適切ではありません

実態説明
委託在庫子会社は単に在庫を預かっているだけで、仕入や購入義務がない
無償預託無償で管理を委託しており、対価の支払いは発生しない
所有権が親会社に留まる子会社は消費・使用しておらず、返品の可能性がある
請求していない請求書の発行や売掛処理がなされていない

このような場合は、棚卸資産のまま保有し、売上として計上しない方が適切

📝 単体決算

項目判断
実態が「販売」➤ 所有権、リスク、保管義務が移転し、原材料を製造、加工、パッケージングして最終的に親会社に販売する場合→原材料の販売は売上計上・売掛金計上
実態が「預け」➤所有権やリスクが移転しない場合は 売上計上せず、棚卸資産(預託分)として管理
判断に迷うとき➤ 契約・請求・リスク負担の実態を再確認。実態と管理の合理性に沿って判断。


✅ ケースの概要

  • 子会社:原材料を購入し、加工・製造。完成品を親会社に納品・販売。
  • 親会社:子会社から完成品を購入。仕入として処理。

✅ 単体決算での会計処理

▶ 子会社側

勘定科目内容
仕入/現預金原材料を外部から購入(仕入)
仕掛品・製品生産プロセスに応じて棚卸資産へ振替
売上/売掛金完成品を親会社に販売した時点で売上計上(納品・検収基準などに従う)

▶ 親会社側

勘定科目内容
仕入/買掛金子会社から完成品を仕入れた時点で費用計上
在庫/仕入必要に応じて棚卸資産へ振替(期末未販売分など)

📌 この処理は 外部企業との通常の取引と同様に行います。親会社が子会社の在庫や加工を管理している場合でも、販売契約や価格が設定されていれば売買とみなされます。

❌ 連結決算における処理

連結財務諸表では、親子間の取引(売上・仕入、売掛金・買掛金)はすべて相殺消去します。

▶ 連結仕訳(内部取引の消去)

仕訳内容理由
売上・仕入の相殺子会社の売上と親会社の仕入を消去
売掛金・買掛金の相殺債権債務関係を消去(親会社の買掛金、子会社の売掛金)
在庫の未実現利益消去子会社で発生した利益のうち、親会社の在庫に含まれる分は連結上消去する必要あり(未実現利益)

📌 未実現利益の注意点

  • 子会社が加工して販売した完成品に利益が含まれている場合、親会社がそれをまだ外部に販売していなければ、在庫に含まれる子会社の利益部分は単体決算においては実現利益と計上されたとしても、連結決算において「未実現」として調整が必要です。
  • これは、連結ベースでは企業グループ全体として外部に販売して初めて利益が実現するためです。

📌 親子間の生産→納品スキームの会計処理

会計区分子会社の処理親会社の処理備考
単体決算原材料仕入・製造・売上計上仕入計上(在庫 or 費用)売買契約があればOK
連結決算売上・売掛金の消去仕入・買掛金の消去未実現利益の調整が必要

✅ 対応のための実務的アドバイス

  • 子会社→親会社販売は契約書・納品書・請求書を整備
  • 親会社が支配していても、価格・納期・製品仕様などの独立性が担保されていれば売上として問題なし
  • 連結時には在庫回転と未実現利益のモニタリングが重要