2025年5.25%ベースアップの数字の実態は、実質所得-1.8%

2025年の春闘におけるベースアップ(ベア)の状況について、連合の最終集計によると、ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率は5.25%で、1991年以来34年ぶりの高水準という報道がなされていたが、原文はこちらである。
全体は 5%超えを維持!中堅・中小組合も健闘が続く!~2025 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果について~
ここで注意なのは、以下の二点
・労働組合が設置されている中小企業はかなり業績良好の企業であり
・労働組合員には係長、課長以上の管理職は含まれていない
したがって、5.25%と聞くと全企業の平均年収が5.25%上がり、日本の平均年収460万円が24万円上がったかのような錯覚を覚えるが実態は平均で2.3%の名目増加と、-1.8%の実質賃金減なのである。5.25%にはかなりの恣意性が見られ、特定の企業の非管理職社員のみを切り出した情報に過ぎない。
日本の総従業員の給与合計(名目ベース)は、増加傾向にあるが、物価上昇の影響を考慮した実質ベースでは、減少傾向が続いている。つまり、日本の平均年収は毎年下がっているのである。
📊 賃金動向
- 2025年5月時点:厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、現金給与総額(名目)は前年同月比で2.3%増となり、平均で33万9229円(平均年齢43歳)。(Japan Institute of Labor)
- 2025年5月時点:実質賃金(物価上昇を考慮した賃金)は前年同月比で-1.8%減となり、5か月連続の減少。インフレ率(4.0%)が名目賃金の増加率を上回る。(Japan Institute of Labor)
これらのデータから、実質的な給与、購買力は低下傾向にあることがわかる。
🔍 背景と要因
- 大企業と中小企業の格差:大企業では労働組合の交渉により賃上げが進んでいるが、一方で定年近い社員のレイオフとリストラクチャリングも加速しているため、全体の給与総額は増えていない。
- 労働時間の減少:総実労働時間は前年同月比で1.2%減となっており、これも給与合計の伸びを抑える要因となっている。
✅ まとめ
- 名目ベースでは、日本の総従業員の給与合計は増加、しかし、インフレ率の方が高いため
- 実質ベースでは、物価上昇の影響により、給与の購買力は低下。
ニュースで、日経平均が過去最高額を更新、日本の全企業の純利益が過去最高額を更新という記事をみたり、ベースアップの報道が多いと、経営陣は社員のベースアップを考え出すかもしれないが、実は日本全体の給与総額は昨年よりも-1.8%下がっているのである。企業は増収増益しながら、販管費率を下げている。このような状況下で紋切り型にベースアップをすることは企業の競争力を下げる間違った判断となってしまうため、増収増益の明確なエビデンスがない場合は方針の誤りに過ぎないと言える。