人生100年の財務管理|富の象徴の交代

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人生100年の財務管理|富の象徴の交代

ウォーレン・バフェットがCEOを引退し、後継者のグレッグアベルにCEOを譲った。Chairmanとしては生きている限り続投するのだろうが保有していた株式をほとんど現金に替えていることから、バフェットが今後存命中に主体的な未来志向により新規にリスクテイクして長期保有する株式はもうないのだろうと思う。

BNSF Railway, GEICOの全株式の保有によるフリーキャッシュフローの創出、余剰キャッシュによるコカ・コーラ、AMEX、VISA、Mastercard、Appleなど全世界の企業の模範になるようなモデル(BPS, EPSのDecade単位成長)を有する企業の大株主となり、プロダクトによる強力なフリーキャッシュフローを創出(PLOG)しながら、キャッシュによるアービトラージオポチュニティを狙うという明確な無借金経営戦略(PcLOG)はTANAAKKでも大いに経営のコアの一部として援用した。

思うにバフェットの偉大さは早期に優秀さの限界を見極め、天才も凡人も「時間」というこの世のカオスの前では万人が等しく無力であるという制約条件を若い頃に理解したことであろう。

そしてバフェットは設備投資と雇用創出によるフリーキャッシュフロー創出能力を基本とした。有名な株式投資はほんの副業なのである。バフェットの本質を株式投資に探したとしても一向に見つけることはできない。バフェットを真似したいのなら株式投資を始めるのではなく設備投資と雇用創出による信用創造を真似るべきである。

信用創造の基本理念がコアにあることで、リーマンショックやVCバブル崩壊などのストレステスト、マーケットシェイクアウトに耐えるようなDecades Test、つまり数十年単位の時間の試練に耐えうる構造であるかのシミュレーションを日常的に行っており、市場乱高下への耐用性の高い資本収益モデルを見極めるとともに、キャピタルアロケーションとマネジメント陣の執行による資本エネルギー蓄積のフィードバックループを発見することができたのであろう。

実は手元資金1万円から始めたとしても数理的には50年かければ誰でもビリオネアになれるのである。(PcLOGのCAOモデル)そのトポロジカルな真理を体現したのがウォーレン・バフェットであった。

世の中には目の前の欲求により自己の人生を安売りしてしまうような例が多くある。華々しいスタートアップは50年のうち、たった始まりの5年をブーストしているにすぎずそのしっぺ返しと代償は20年目以降に支払うことになる。

そもそもブーストではなく単なる債務の市場への押し付けになり数年で仮面が剥がれるケースも多々ある。

これは企業だけの問題ではない。会社勤めであっても近年は情報が取得しやすいという「錯覚」により信用や信頼の偉大さや「時間の力」について見えにくくなってしまっている。EVAスプレッド=ROIC-WACCの創出という資本収益スキルの取得なしに収入を加速度的に増やす方法などこの世に存在しないのだが、転職市場の売り買いはフリーキャッシュフローとの整合性のない年収を産み出し、あたかもその「年収」という数字が独り歩きして成長するかのように錯覚してしまう。

短期的なヘッドハンティングによる年収のバブル(EVA,FCFという実力との乖離)は、EVA創出能力の有無、フリーキャッシュフロー創出能力の有無により結果的に淘汰されていってしまうため、場所を替えても当事者である本人の意思が変わることがなければ生涯年収や老後資産は変動しないだろう。短期的な年収2倍は長期的には「誤差」である。

ヘッドハンティングによるジョブホッピングはプロのアルバイトを産み出してしまう。経営幹部職や経営者であったとしても属人性や時間給を越えられない以上それは資本収益ではなくバイトである。

1万円から始めたとしても適切なEVA, FCF創出能力をもっていさえすれば20年で年収1億円は容易いのだ。しかし一方で世の中にはトレードオフというものがある。年収1億円を実現するということは短期的な魅力、1万人中9999人が選んでいる魅力的な毎日にさようならを告げる必要があるということである。

この魅力的な毎日とは居酒屋での飲み会であったり、毎日の晩酌であったり、公営ギャンブルであったり、オンラインカジノであったり、毎日のジムでの筋トレであったり、スポーツであったり、家族サービスであったり、勉強や研究であったりあるいはプレッシャーの少ない閉じた安心環境であるかもしれない。

よかれと思ってストレス解消のために行っている生活習慣が、「時間給」か「資本の蓄積か」の明暗を分ける。自分の人生を好転させていると思い込んでいる習慣こそもっとも忌むべき敵である可能性が高いのである。

「時間給アクションなのか」それとも「富を蓄積する資本性アクションか」という二項対立は経営者や会社員だけではなく、たとえば古くは援助交際、新しくはパパ活にも見られる現象である。短期的な注目や報酬は、このボーナスタイムが一生続くのではないかという幻想を産み出す。

SNSやYouTuber、アイドルやスポーツ選手の中にも「長期戦略者」と「短期逃げ切り」の双方がいるだろう。

ただし売れっ子の期間は短くて1年長くて10年なのだ。人生は100年である。脂が乗ったあとの70年をどう生きるのか。

またはトレーダーやファンドマネージャというのもユニークに見えてほぼ「短期思考者」であり、設備投資と雇用創出による事業フリーキャッシュフローが見込めない限りはマーケットを巻き込んだ壮大なババ抜きといっても過言ではない。

老若男女いかなる存在も、実際のところ現実は短期で稼いで逃げ切ることは到底できない。人生は100年あるのだ。たった10年間の売れっ子のブーストされた記憶がマーケットという真実から解離した局所的な幻想を産み出し、このラッキーが一生続くのではないかと思い込んでしまうのだ。

収入を増やすということはそれだけ多くの正負のエネルギーを引き受けるということなので、膨大なエネルギーを引き受けた上で長期的な秩序化思考がない場合、そのポテンシャルエネルギーは容易に散り散りになって消えていくのである。ボーナスタイムを経験した人ほどその後の人生の反動は悲惨である。

これまでさまざまな事業で実験をしてみたが、院卒であっても中卒であっても、医師であっても弁護士であっても、経歴やキャリア、年齢を問わず、人は人生の途中から長期思考に変わることができる。

ただし逃げ道は無数にあるので変わったということを定着させることのほうがより難しい。内面の変容がなければ人生100年を主体的に生きることは叶わない。

ただし主体的に生きることこそもっとも困難な道なのである。1万人中9999人が避ける困難な道を選べば年収1億円、10万人中99999人が避ける道を選べれば年収10億円なのである。年収10億円を事業のフリーキャッシュフローとしてゼロから作るのであればそれはビリオネアと等価である。(雇用創出による年収10億円はスポーツ選手などの年収10億円とは構造的に違い、10年DCFの割引現在価値で1000億円は越える。)

膨大な情報のある現実には複雑性がつきものだが、カオスとノイズを、長期的な整合性という真の道に沿って、50年続ける前提があれば、その秩序の道を進む人は富の象徴であり、その極限の道を進む人であれば誰もがビリオネアなのである。

資本市場の守護者であったバフェットが事実上の引退をしたことはアメリカ株式市場における設備投資、雇用創出、FCF、 EVAなどの長期信用創造のコア思想の空洞化を意味するかもしれない。高度で複雑なレバレッジをアメリカは国家として乗り越えることはできるのか?はたまた覇権国家のデレバレッジの歴史をたどるのか。

株価の上昇を喜ぶ人生ではなく、家を旅立った内部留保が設備投資と雇用創出により新たな純利益として帰ってきて新たな家族がまた増えるというサイクルを静かに味わったのがバフェットであると思う。外部が観測したのは富の蓄積と株価の上昇である。

バフェットの引退は単なる個人の世代交代ではなく、資本主義における長期信用創造という思想の終焉、構造的空白の始まりである。この混乱の余波はTANAAKKにとって資本主義の新たな番人たる狼煙である。