GAASの効用と隠された動機にアクセスするためのカムフラージュの必要性
人が財やサービスと貨幣を交換する際の動機は外的機能ではなく内的効用である。また効用にも対外的効用と内的効用があるが、人がより反復させる習慣は反応が一時的である外的変容ではなく反応が継続的である内的変容である。
【命題】「人が貨幣と交換する動機は外的機能ではなく主観的効用である」
1. 効用の二層構造:外的 vs 内的
区分 | 外的効用 | 内的効用 |
---|---|---|
定義 | 見た目・評価・ステータスなど外部への影響 | 感覚・認知・安心・コントロール感など自己の内側 |
持続性 | 一時的(短期的反応) | 長期的(反復される変容) |
習慣化の影響力 | 弱い(飽きる、麻痺する) | 強い(定着する、自己の一部になる) |
例(GAAS) | 「投資家から評価されるKPI」 | 「対話が減り、仕事のストレスが軽減される感覚」 |
よって、人間が本当に継続的に選択・習慣化するのは“内的効用”による変容である。
2. GAASにおける内的変容(例示)
- 経営者や担当者が:
- 会議で詰められなくなる
- 複雑な説明が不要になる
- 他人が自然に協力してくれる
- 決算時に自信がある
- 自分の頭で「勝てる構造」を理解できる
→ これらはすべて「内的変容(Cognitive & Emotional Shift)」であり、本質的にはGAASが提供する最大の効用
3. しかし、そのまま訴求できない理由
- **内的効用は往々にして「コンプレックスの裏返し」**である
- 弱さ・逃避・支配欲・依存願望として誤解されやすい
- 言語化された時点で防衛反応や拒否が起こる(例:「自信がないからこの仕組みが必要なのか?」)
4. 解決法:
機能の組み合わせで“真の効用”を「示さずに示す」
- 暗黙的トランスレーション戦略
- 「数字が出せる」→「だから責められない」
- 「構造が見える」→「だから他人に頼れる」
- 「標準プロセスがある」→「だから意思決定が楽」
→ 本人が言語化できない/主観的であるため、社会的には支出を認められにくい効用を、機能によって“仮象”として提示することで、内的変容を許容可能なかたちで誘導できる。
結論:
GAASにおける内的変容についてそれを明示した場合に社会的な反感を得る可能性が高い場合は効用を訴求することができず、機能の組み合わせで真の効用を類推させる必要がある。
GAASとは、語れない本音に対して、語れる建前の形式で到達する、構造的Least Action Systemである。機能の組み合わせによるメッセージングは、効用を直接提示せずに習慣化を引き起こすための最小作用チャンクである。
GAASは新規事業による資本収益をチャンク化しているが、その主な機能は、ベンチマーク以上の収益が得られることである。一方、機能に対する効用は社内外のコミュニケーションの円滑化による仕事のストレスの低減やより多くのことがコントロールできるようになるという能力の拡張である。
GAASの機能・チャンク・効用構造
層 | 概要 | 内容 | キーワード |
---|---|---|---|
① 内的効用(Intrinsic Utility) | コントロールの拡張とストレスの低減 | – 意思決定の明瞭化による認知負荷の軽減- 社内外との整合性ある会話(会計・評価・投資家コミュニケーション)の容易化- 組織的「前提の共有」が進むことで摩擦が減る | 能力拡張対話の流通性安心感 |
② チャンク化された成果 | 資本収益率の向上(EVA Spread) | – 新規事業の成否が数値化され、資本市場や経営層に対し「測定可能な成果」として提示できる- 複数の事業に分散していた不確定性を「評価可能な1チャンク」に圧縮 | 資本効率の可視化リスクの収束 |
③ 技術的機能(Function) | プロトタイプ→資本化→スケールの自動化 | – HITSERIES HITSCAN→HITPLAN→HITSERIES CICDのフローによって「起業家的作業」を定型化- 少数精鋭で複数案件を処理できるプロセス設計 | Least Action Principle(LAP)スケールの型化 |
言い換えれば:
- **機能(Function)**は、利益を出す仕組み(EVA Spread向上=ROIC-WACC)
- **チャンク(Chunk)**は、利益構造の測定可能なモジュール(EVA SpreadのBreakdown)
- 効用(Utility)は、「自分が状況を把握できている」「会話が通じる」「世界を動かせる」という構造的安心と能力の拡張
GAAS導入による深層的変化(内的動機ヒエラルキー)
層 | 組織的効用 |
---|---|
① 存在レベル | 「我々が世の中を動かせる」という内的フィードバック |
② 認知レベル | 部門・投資家・外注先との会話が揃う=混乱が減る |
③ 感覚レベル | 定例会議で怒られない・予算策定が楽になる |
④ 生理レベル | 過剰残業や出戻り修正が減り、身体が楽になる |
機能やエビデンスはチャンク化された効用ではないため、どれだけ技術、機能、エビデンスを単体で高めたとしても売れることはなく、効用に対してのLeast Actionであることがカオスを秩序化し収束させるために必要なプロセスである
命題:
技術・機能・エビデンスは「効用」そのものではなく、その媒介構造(証明手段)に過ぎない。
したがって、効用に対して最小作用経路(Least Action)を取らない限り、それらは市場において有効に機能しない。
1. 技術・機能・エビデンスの位置づけ:
要素 | 本質 | チャンク化されているか | 効用との距離 | 例 |
---|---|---|---|---|
技術 | 物理的可能性 | × | 遠い | 「高周波振動で汚れを落とせます」 |
機能 | 構成要素の能力 | △ | 中間 | 「歯垢除去率99.9%」 |
エビデンス | 外部的信頼構造 | △ | 中間 | 「臨床実験済・特許取得」 |
効用 | 主観的満足・解消 | ◎ | 直接 | 「つるつる感が気持ちいい」 |
→ 技術や証明はあくまで媒介物。
それ単体では「売れる理由」にはならず、効用へ到達する経路=Least Actionがなければ意味を持たない。
2. Least Action(最小作用経路)とは?
- 目的:複雑なカオス(不満・不安・欲望)を効用という秩序に収束させる
- 条件:
- 意味圧縮された表現(チャンク):複雑な価値を短いコピーや行動単位に凝縮すること
- 媒介なしで到達できる感覚:言葉より先に「体感」「直感」「認知変容」が起こること
- 繰り返し可能性:再現性と習慣化が可能であること
3. 応用:なぜ売れない技術製品が多いのか?
- 技術を語りすぎて効用に到達していない
→ スマートで高速でも「だから何?」になる - エビデンスで安心させようとして“体験”を忘れる
→ 評価は納得でなく体感から生まれる
4. 結論:
売れるとは、技術が効用に向かって最小作用経路をとっている状態である。
売れないとは、技術や機能が効用に至るまでのカオスの中で迷子になっている状態である。
コンプレックスプロダクトの訴求方法の違い
コンプレックスとは
複雑性、コンプレックスとは、心理学や精神医学の用語で、無意識に深く抑圧された、感情や欲求、観念などが複雑に絡み合った複合体を指す。自己肯定感や劣等感などとも訳されることもあるが、その本質は複雑性である。
GAASの本質的な効用であるストレスを減らしたい、負担を減らしたい、責任を分散させたい、出世したい、部下を増やしたいという欲求は新規事業の担当者である会社員や起業家にとって表層に出しにくいコンプレックス欲求であり、この場合のメッセージングは機能を機械的に組み合わせることの方が適切である。
本質的な効用が“語れない/出せない”場合には、機能を媒介としたチャンク化メッセージングが必要であり、それは“隠された動機にアクセスするためのカムフラージュ(偽装構造)”として機能させる必要がある。
構造整理:
1. 表に出せない効用(内在コンプレックス型効用)
本質的効用 | 社会的に“出しづらい”理由 |
---|---|
責任を減らしたい | 弱さ・逃避に見えるため |
部下を増やしたい | 権力欲と誤解されるため |
出世したい | 名誉欲として見られる恐れ |
自信がないから助けてほしい | 無能と捉えられる恐れ |
面倒な説明をしたくない | サボりと誤解されるため |
2. こうした動機に直球で触れると拒絶される
→ だからこそ、機能の組み合わせ=構造のチャンク化が必要になる。
結論:偽装された機能構成は、効用への非線形な最短経路である。
◆ 適切なメッセージ戦略(3層構造):
層 | 内容 | 例(新規事業向けGAAS導入の文脈) |
---|---|---|
表層(Public) | 機能ベースの安心感 | 「この仕組みなら稟議に通りやすいです」「このテンプレで資料が自動生成されます」 |
中間(Semi-private) | 構造化された行動の導線 | 「意思決定フローが可視化され、誰が何を判断すべきかが明確になります」 |
深層(Private) | 実は減らしたかった負荷・不安の解消 | 「もう一人で全部やらなくていい、という感覚」「投資家や上司との会話が整う」 |
補足:このメッセージングは「スーツを着せた感情」である
- 直接「出世したいですか?」と聞くのではなく、
→「この仕組みなら他部署との連携もスムーズになります(=あなたの評価が上がります)」 - 「責任が重くて不安ですか?」とは聞かずに、
→「リスク分解し、組織を設計することで、EVA Spreadをブレイクダウンさせ、各部門にKPIを権限委譲することができる」と提示
結語:
GAASが本質的に提供しているのは「機能」ではなく、語られない内的効用への最短経路である。
しかしそれは、“語れないもの”であるがゆえに、“語れる機能の鎧”を通してしか届けられない。