General Solicitation(一般勧誘)の定義
SEC(米国証券取引委員会)における General Solicitation(一般勧誘) は、証券の募集や販売の際に、広範に不特定多数に向けて情報を公開すること を意味します。たとえば、以下のような活動が一般勧誘と見なされます:
🔹【General Solicitation(一般勧誘)の定義】
SEC Rule 502(c) に基づき、以下は「一般勧誘」に該当します:
- テレビ、新聞、インターネット、SNSによる広告
- 一般公開イベントやセミナーでの投資勧誘
- 未知の個人・企業へのダイレクトメールやメール配信
- オンラインクラウドファンディング・プラットフォームでの投資募集
🔹【Private Placement(私募)との関係】
Private Placement(私募)は、証券を限定された投資家(通常は適格投資家)に非公開で販売すること を意味し、証券登録義務(Securities Act of 1933, Section 5)からの例外を利用します。
一般的な例外規定:
- Regulation D(Reg D)Rule 506(b):
→ 一般勧誘は禁止、35名までの非適格投資家に提供可能、情報開示義務あり。 - Reg D Rule 506(c):
→ 一般勧誘が可能だが、すべての投資家が”適格投資家(Accredited Investors)”であることの確認義務あり。
🔹【一般勧誘が許容される例外】
- Rule 506(c)(上記)
- Rule 144A(Qualified Institutional Buyers向け)
- Regulation A+ Tier 2(限定的な一般公開募集)
- Regulation Crowdfunding(Reg CF):SEC登録済のプラットフォームを利用した一般勧誘が可能
- Offshore Offering(Reg S):米国外の投資家へのオファー
🔹【Chaperone(シャペロン)制度とは?】
FINRAルールで定められた制度で、外国証券会社が米国でブローカレッジ業務を行う際、FINRA登録のブローカー・ディーラーが「同行者(チャペロン)」として監督する必要がある制度です。
- 例:日本の証券会社が米国の機関投資家にアプローチする際、SEC登録されていないため単独で営業活動はできず、SEC/FINRA登録ブローカーの同席、サポート下で活動する必要がある。
- 「Chaperoning Agreement」を結んだ上で、対象業務は:
- Reverse Inquiry 対応
- 適格機関投資家(QIB)への非勧誘型情報提供
🔹まとめ表
項目 | 内容 |
---|---|
General Solicitation | 不特定多数への公開勧誘(広告、SNS、セミナー等) |
禁止対象 | Rule 506(b)、Reg S などでは不可 |
許可対象 | Rule 506(c)、Reg CF、Reg A+、Rule 144A など |
Private Placement | 一般募集とは異なる非公開の資金調達 |
Chaperone制度 | 非米国証券会社の米国営業時の同行・監督義務(FINRA) |
✅【Accredited Investor 向けの例外:Rule 506(c)】
Rule 506(c) では、一般勧誘(General Solicitation)が明示的に許可されていますが、条件があります:
- **すべての投資家がAccredited Investorであることの合理的な確認(Verification)**が必要
- 単なる自己申告(self-certification)では不十分(給与明細、税申告書、CPAの証明書などが必要)
⚠️【EmailキャンペーンはなぜNGなのか?】
Emailキャンペーンはグレーというよりはアウトの域に入っています。Email Campaignにより米国人に一般募集した場合、金額や被害状況にもよりますが、捜査された場合には確実に罰則を受けてしまいます。
✉️ 一般勧誘と見なされる可能性がある例:
- メールリストが不特定多数や業界の名簿から収集されたもの
- 投資オファーが事前に関係性のない相手に直接送られている
- メルマガやウェビナー誘導を通じて投資に導く構成になっている
✅ 安全とされる例:
- **既に関係性がある個人(pre-existing relationship)**へのメール(ただし関係性の定義は厳格、KYCが必要)
- 1対1で、事業の概要説明のみを行い、KYCで要件の確認を電子的に記録した後に投資勧誘をする形
- Rule 506(b) の条件を守り、一般勧誘を行わない形式でプロセスを進める
🧭【事実上の安全地帯(Safe Harbor)の判断基準】
要素 | 安全 | グレー | 危険 |
---|---|---|---|
メール相手 | 既存の関係性あり KYC(Passportなど)、資産背景などのチェック | 名刺交換程度 | 関係なし・大量送信 |
内容 | 事業紹介のみ | オファーに近い記述あり | 投資条件を提示 |
認証 | CPAなどでAccredited確認済 | 自己申告 | 認証なしで進行 |
勧誘の場 | 1on1ミーティング | 招待制セミナー | オープンウェビナー |
🔹【補足】Reg Dにおける”Pre-existing relationship”とは?
- 投資家とオファー側の間に、勧誘より前に継続的・実質的な関係が存在すること
- 弁護士やブローカーディーラーが投資家適格性の判断を行っている場合など
🧷【実務ポイント】
- 一般勧誘を伴う場合はRule 506(c)を選択
- Accredited Investorの確認プロセス(reasonable steps)を記録
- Email送信前にリストの構成を精査(関係性、同意、認証)
- Complianceチームまたは弁護士による事前レビューが望ましい
アメリカにおける正規のDemo Dayピッチイベント(特に出資先企業のマッチングを伴うもの)は、SEC登録されたBroker-Dealer(ブローカーディーラー)や、それに準じるライセンス保有組織が運営するのが基本です。これは、証券取引に関連する行為(solicitation, promotion, placement)を合法的に行うためにExchange Act of 1934, Section 15(a) が適用されるからです。
🔹【なぜBroker-Dealer登録が必要なのか?】
証券の募集・販売を手助けするあらゆる行為(紹介、仲介、コミッション受領、アレンジなど)を行う主体は、原則としてBroker-Dealer登録が必要です。これには以下が含まれます:
- ピッチイベントの主催
- 投資家とのマッチング
- 投資家からの資金受領代行
- 成功報酬型での資金調達支援
🧾【SECの法的根拠】
- Exchange Act of 1934, Section 3(a)(4)
→ “Broker” の定義:「他人のために証券取引を取り持つ者」 - Section 15(a)
→ 「登録のない者が米国内で証券仲介を行ってはならない」
✅【許可されたピッチイベントの運営モデル】
運営主体 | 登録状態 | 解説 |
---|---|---|
✅ FINRA登録 Broker-Dealer | 〇 | 公式に証券の募集が可能、イベントで投資契約に至っても合法 |
✅ 弁護士・会計士などの第三者立会型 + Rule 506(b)のフレーム | △ | 投資家がPre-existing relationshipにある場合に限定でOK |
✅ 大学アクセラレータ + 教育目的 + 一般勧誘なし | △ | Demo Dayが教育的であり、事後フォローが限定的な場合に限る |
❌ 非登録のスタートアップ支援会社やイベント会社 | ✕ | 有償紹介や一般募集は違法行為とされる可能性が高い |
⚠️【非登録業者が運営するピッチイベントのリスク】
- 主催者:無登録で証券仲介を行ったとしてSEC調査対象
- 起業家:違法な証券募集と見なされ、資金返還義務発生リスク
- 投資家:契約が無効とされる可能性(Rescission Risk)
- イベント収益(参加費、紹介料):収入が違法所得扱いとなる可能性
💡補足:SECやFINRA登録の調べ方
- FINRA BrokerCheck で主催者名を検索:
https://brokercheck.finra.org - 登録のあるBrokerは「CRD Number」付きで掲載されており、許可範囲(例えばReg D、M&A、資金募集など)が明示されています。
🎯結論:
出資を前提とするピッチイベントは、「証券の仲介行為」であり、Broker-Dealer登録が事実上の必須条件です。登録のないイベント運営会社が実質的に資金調達の場を提供する場合、SECから重大な法的リスクを指摘される可能性があります。