Continuum Hypothesis|連続体仮説
Continuum Hypothesis(連続体仮説)とは、実数の濃度(無限の大きさ)が、自然数の濃度の次に小さい無限かどうかを問う、集合論の中でも最も重要で深遠な未解決問題の一つです。
🔷 連続体仮説(Continuum Hypothesis, CH)の定義
数学的にはこう表されます:
連続体仮説(CH)
「任意の集合 Aが自然数集合 Nと実数集合 Rの間にある(つまり N⊂A⊂R)ならば、A は自然数と同じ濃度か、実数と同じ濃度のどちらかである。」
つまり、 連続体の濃度 c=ℵ1 か?
🔸 背景となる集合論の濃度
集合 | 記号 | 濃度(cardinality) |
---|---|---|
自然数集合 | N | ℵ0(可算無限) |
実数集合 | R | c=2ℵ0(非可算) |
ここで、次の濃度を表す記号 ℵ1 は「ℵ0より大きい最小の無限」と定義されます。
CHは以下を問う: 2ℵ0=ℵ1?
🔶 カントールとCHの由来
- ゲオルク・カントールは、実数の濃度 cが自然数の濃度より大きいことを証明しました(対角線論法)。
- そして疑問を持ちました:「この間に別の無限濃度は存在するか?」
- これが「連続体仮説」の出発点です。
🧠 CHに対する答えはあるのか?
◾ ゲーデル(1940年)
- 「CHが成り立つ世界(ZFC + CH)は、矛盾しない限り、ZFCから排除できない」ことを証明。
- ⇒ CHは「ZFC公理系に矛盾しない形で追加できる」ことを示した。
◾ ポール・コーエン(1963年)
- 「CHが成り立たない世界(ZFC + ¬CH)も矛盾しない」ことを示す。
- ⇒ CHは「ZFCから証明も反証もできない」、つまり「独立命題」であると証明。
🏛️ 結論:CHの現在の数学的ステータス
観点 | 内容 |
---|---|
ZFCとの関係 | CHはZFCからは証明も反証もできない(独立命題) |
真偽の扱い | 「真でも偽でもよい」世界がありうる ⇒ モデル理論的自由 |
数学哲学 | プラトン主義 vs 構成主義で立場が分かれる |
現代の数学者の扱い | CHを採用するかどうかは公理選択の問題とみなされる |
- CHは「無限の世界の空間構造」に関する問いです。
- まるで「宇宙にこの銀河とあの銀河の間に、もう一つ銀河があるか?」と問うようなもの。
- 答えは「公理をどう選ぶか」に依存します。