Basel Accords (バーゼル合意)|BIS規制

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Basel Accords (バーゼル合意)|BIS規制

「BIS規制(国際決済銀行規制)」がなぜ「バーゼル合意(Basel Accords)」と呼ばれるのか

🔹「バーゼル合意」と呼ばれる由来(地理的背景)

  • 「バーゼル(Basel)」はスイスの都市名です。
  • スイス・バーゼルには、国際決済銀行(BIS: Bank for International Settlements)の本部が置かれており、ここが国際的な中央銀行協調の中心地となっています。
  • BISの中に設けられた**「バーゼル銀行監督委員会(BCBS: Basel Committee on Banking Supervision)」**が、各国中央銀行・金融当局の代表によって構成されており、ここで銀行規制の国際的枠組みが議論・合意されます。

👉 したがって、「バーゼル合意」とは、スイスのバーゼルで開催されたBCBSによる国際合意を指しており、その名前が定着したのです。

🔹「BIS規制」と「バーゼル合意」の関係(制度的背景)

  • BIS規制という用語は、広く「国際的銀行自己資本規制」や「自己資本比率規制」の通称として使われます。
  • しかし実際には、BIS本体が規制を制定しているのではなく、その中にある**バーゼル委員会(BCBS)**が合意を策定しています。
  • つまり:
    • BIS規制」= 通称。BISを拠点とする規制。
    • バーゼル合意」= 正式には「Basel I, II, III」など一連の合意の名前であり、実際の国際基準策定の枠組み名。

✅ 例えるなら、「ニューヨーク証券取引所のルールを”NYSE規制”と呼ぶようなもので、正式な制度名は別にある」という関係性です。

🔹なぜ“合意”と呼ばれるのか

  • 「規制」ではなく「合意(Accord)」と呼ばれるのは、国際法に基づく義務ではなく、加盟国間の自主的・協調的な取り決めだからです。
  • 各国の金融当局はこの「バーゼル合意」を尊重し、国内法や監督制度に反映することで実施されます。

🔚 まとめ

呼称意味所在・背景
バーゼル合意(Basel Accord)銀行健全性の国際的基準を定めた合意スイス・バーゼルのBIS内にあるBCBSによって策定
BIS規制通称。自己資本比率などの国際基準実際はバーゼル合意の内容を指す(法的には各国が実施)
BCBSBasel Committee on Banking Supervision(バーゼル銀行監督委員会)各国中央銀行・監督当局で構成され、規制案を審議

🔍なぜ“バーゼル”という場所が選ばれたのか

  1. 永世中立国スイスに所在するという地政学的理由
    • 国家間利害の対立が少なく、中立・安定的な国際協議の拠点にふさわしい。
    • 国際連盟(旧)や国連のジュネーブ事務局も近くにあり、国際交渉の集積地であった。
  2. 1930年設立のBISがバーゼルを本部に構えていたという歴史的経緯
    • BISは「世界最古の国際金融機関」ともいわれ、中央銀行のための中央銀行として機能。
    • 1974年の**ヘルシュタット事件(ドイツ銀行破綻)を契機に、同地にBCBS(バーゼル銀行監督委員会)**が創設された。

🧠Groundism™視点からの再定義(参考)

構造概念解釈トポロジカル意味
BIS構造の「時間調整点(時間秩序を補正する装置)」各国の金融制度の「時空間基準点」
バーゼル合意「信用空間のテンソル拘束条件」国家を超えた信用共鳴構造
BCBSアクチュエーターとしての協調ノード監督制度の「モジュラー整合器」

🧭言い換えると:「信用の空間的スケール統一」を達成するための合意座標。その意味では、金融版メートル原器ともいえるのがバーゼル合意です。

バーゼル合意の歴史的成立過程とその主な制定理由

トリガーイベントは、金融危機・大規模破綻などの**「国際的信用秩序の動揺」を背景として、各国中央銀行や規制当局が銀行の国際的な健全性確保**を目的として整備してきた規制フレームワークです。

🔹バーゼルI(1988年策定)

◆ 制定理由となった主なイベント:

  • 1982年:メキシコ債務危機(ラテンアメリカ債務危機)
    • 発展途上国への過剰貸付による信用不安。
    • 複数の国際銀行の不良債権が膨張し、銀行の自己資本不足が顕在化

◆ 歴史的経緯:

  • 国際決済銀行(BIS)内に「バーゼル銀行監督委員会(BCBS)」が設置(1974年、ヘルシュタット事件を契機)。
  • 1988年、**自己資本比率規制(最低8%)**を柱とする「バーゼルI」策定。

◆ 内容の要点:

  • 信用リスクに基づくリスク・ウェイト資産の導入。
  • 自己資本比率の国際統一基準(8%)の設定。
  • 規制資本の定義:Tier 1(中核的自己資本)、Tier 2(補完的自己資本)。

🔹バーゼルII(2004年策定)

◆ 制定理由となった主なイベント:

  • 1990年代:日本のバブル崩壊・金融危機
  • 1997年:アジア通貨危機
  • 1998年:ロシア財政危機とLTCM破綻
    • グローバルに広がる金融リスクの多様化とモデル依存型取引の増加。

◆ 歴史的経緯:

  • バーゼルIではリスクの計測が単純すぎるという批判。
  • より詳細なリスク評価を導入するため、**「3本柱アプローチ」**を採用し、2004年にバーゼルII発表。

◆ 内容の要点:

  1. 第1の柱:最低所要自己資本比率(信用、市場、オペレーショナルリスク)
  2. 第2の柱:監督当局による審査
  3. 第3の柱:市場規律(情報開示)

🔹バーゼルIII(2010年策定)

◆ 制定理由となった主なイベント:

  • 2007~2008年:世界金融危機(リーマンショック)
    • モデル依存型の自己資本計測に過度な自由があった。
    • 銀行のレバレッジ比率が過大になり、破綻リスクが現実化

◆ 歴史的経緯:

  • G20やFSBの枠組みを通じて、金融機関の規律強化が国際合意に。
  • バーゼル銀行監督委員会が、バーゼルIIIの枠組みを2010年に発表。
  • 実施は段階的に行われ、最終化は2028年を目標

◆ 内容の要点:

  • 普通株式等Tier1比率の強化(CET1)
  • レバレッジ比率(Leverage Ratio)の導入
  • 流動性カバレッジ比率(LCR)
  • 安定調達比率(NSFR)
  • システム上重要な銀行(G-SIB)に対する追加資本バッファ

補足:バーゼルIV?

「バーゼルIV」と呼ばれることもありますが、**バーゼルIIIの最終化措置(Basel III finalisation)**とされており、正式な「バーゼルIV」は存在しません。

🔚まとめ表

バーゼル合意制定年主な背景イベント主な内容
バーゼルI1988メキシコ債務危機、ヘルシュタット事件自己資本比率8%、信用リスク中心
バーゼルII2004アジア通貨危機、LTCM、日本の金融危機3本柱(自己資本・監督・市場規律)
バーゼルIII2010リーマンショック(2008)資本強化、レバレッジ比率、流動性規制

バーゼル銀行監督委員会(BCBS: Basel Committee on Banking Supervision)の加盟国(jurisdictions)は、**全世界の銀行資産の約95%**をカバーしており、28の司法管轄区域(jurisdictions)から構成されています(2024年時点)。

🌍 バーゼル委員会(BCBS)の加盟国一覧(28)

以下は、各国の中央銀行と銀行監督当局の代表が参加しています。

欧州(Europe)

国名中央銀行銀行監督当局
フランスフランス銀行(Banque de France)ACPR(金融健全性監督庁)
ドイツドイツ連邦銀行(Bundesbank)BaFin(金融監督庁)
イタリアイタリア銀行(Banca d’Italia)イタリア銀行内に統合
オランダオランダ銀行(DNB)同左
スペインスペイン銀行(Banco de España)同左
スイススイス国立銀行(SNB)FINMA(金融市場監督機構)
スウェーデンスウェーデン国立銀行(Riksbank)Finansinspektionen
イギリスイングランド銀行(BoE)PRA(健全性規制庁)

北米(North America)

国名中央銀行銀行監督当局
アメリカFRB(連邦準備制度)OCC・FDICなど複数
カナダカナダ銀行OSFI(保険・年金監督庁)
メキシコメキシコ銀行CNBV(銀行証券委員会)

アジア・オセアニア(Asia & Oceania)

国名中央銀行銀行監督当局
日本日本銀行金融庁(FSA)
中国中国人民銀行(PBoC)国家金融監督管理総局(NFRA)
韓国韓国銀行金融監督院(FSS)
インドインド準備銀行(RBI)同左
インドネシアインドネシア銀行OJK(金融サービス庁)
オーストラリア豪準備銀行(RBA)APRA(豪金融監督庁)
シンガポールMAS(金融管理庁)同左
香港香港金融管理局(HKMA)同左

南米・中東・アフリカ(その他)

国名中央銀行銀行監督当局
ブラジルブラジル中央銀行同左
アルゼンチンアルゼンチン中央銀行同左
南アフリカ南アフリカ準備銀行(SARB)同左
トルコトルコ中央銀行BDDK(銀行規制監督庁)
ロシアロシア中央銀行同左
サウジアラビアサウジアラビア通貨庁(SAMA)同左
アラブ首長国連邦(UAE)中央銀行(CBUAE)同左

🧠 補足:EU機関の参加

  • **欧州中央銀行(ECB)ユーロ圏の銀行監督機関(SSM)**として加盟。
  • 各国と並行して、EU単位でも規制調整が行われる構造になっています。

✅ まとめ

  • BCBSは国際的な信認を担保する「構造設計会議」
  • 加盟国はG20諸国+主要金融センター(香港、シンガポール、スイスなど)
  • 国ごとに中央銀行と監督機関が共同で参加(日本は日銀+金融庁)

✅ ベトナムがバーゼル合意に正式加盟していない=金融システムは脆弱なのか?

ベトナムはBCBS(バーゼル委員会)の正式メンバーではありません。
バーゼル規制の一部は段階的に導入しており、一定の健全性確保は図られています。

▶︎ よって、金融インフラはまだ脆弱性を残すものの、完全な未整備ではなく、「過渡期にある成長市場」と理解するのが正確です。

🔹1. ベトナムのバーゼル対応状況

項目内容
バーゼルI一部実施済(信用リスクに基づく自己資本比率制度あり)
バーゼルII2019年より10行に限定導入。主要銀行中心に自主導入が進行中
バーゼルIII導入未定。ただし、自己資本の質や流動性比率の議論は開始
バーゼル委員会(BCBS)加盟非加盟(observerでもない)
実施体制ベトナム国家銀行(SBV)が監督と導入指針を策定

🔹2. なぜバーゼルに加盟していないのか

  • バーゼル委員会は招待制であり、原則として「国際的にシステム上重要な銀行(SIB)を有する国」に限られる。
  • ベトナムは銀行資産規模・市場開放性の点で、まだ国際的な系統的リスクをもたらす水準に達していない
  • 国内通貨中心・国営銀行主導・為替規制も残るため、金融自由化の前段階にある。

🔹3. ベトナム金融システムの脆弱性ポイント

リスク要因説明
🧱 銀行の資本構成Tier 1資本比率が国際水準より低く、不良債権比率もやや高い
🧮 会計・開示制度IFRSの完全導入は進んでおらず、**市場規律(バーゼル第3の柱)**が弱い
💱 為替・流動性ドン(VND)に対する信認が不安定で、流動性規制は未整備
⚖️ ガバナンス国営銀行の支配力が大きく、政治的要因が信用リスクに影響
🔎 監督機関の能力SBVの監督能力は強化中だが、独立性・審査能力に課題あり

🔹4. しかし一方で進展も

  • Vietcombank、BIDVなど大手行は自主的にバーゼルII対応を進めている
  • ベトナム国家銀行(SBV)は、ASEAN地域での金融統合を意識して、バーゼルIII導入に向けたロードマップを検討中。
  • Fintech・デジタルバンクの成長が監督強化の契機となりつつある。

🔚 総括

観点評価
金融制度の脆弱性相対的に脆弱(特に国際資本市場との接続性、監督能力)
規制の適用状況バーゼルII一部導入、IIIは未定
将来性成長余地大。制度強化が進めば中期的に安定性も向上
投資家視点信用格付けの限界や不透明性に留意しつつ、政策と制度整備の進展を注視