PcLOG™のCAOモデル

PcLOG™(Principal Led Organic Growth™)の成長モデル全体を代数式と幾何的時間展開式で構築。
命題:あらゆるビジネスモデルの成長性や企業価値はCAOの3つの変数の組み合わせで記述できる。
PcLOGの一般数理式
Ct =f(C0, A, O)
あらゆる事業におけるアウトプットが何年後に実現するかはインプット(C,A,O)と関数fで確定する。
- Ct:年度 t 時点の資本(Capital)
- C0:初期資本(5億円)
- A:資本回転率(= 売上 / 資本)
- O:営業キャッシュフローマージン(= 営業キャッシュフロー / 売上)
- r=A⋅O:資本成長モデル(年複利利回り)
- f: L レバレッジなどを含むが基本的には数十年単位で均質化されあまり意味は持たない
1. 年度別資本成長式(幾何級数)
Ct=C0⋅(1+a⋅o)
2. 売上(Sales)の定義
St=a⋅Ct
3. 営業キャッシュフロー率の定義
Pt=o⋅St=a⋅o⋅Ct
4. 到達時間(年)式
目標資本 CT に到達する年数 T: CT=C0⋅(1+a⋅o)T⇒T=log(CT/C0)/log(1+a⋅o)
✅ 代入例
- C0=5×108(= 5億円)
- CT=1×1012(= 1兆円)
- a=1.32(資本回転率)
- o=0.10(営業利益率)
✅ 代入して計算
\[T = \frac{\log(1兆 / 5億)}{\log(1 + 1.32 \cdot 0.10)} = \frac{\log(2000)}{\log(1.132)}\]- \[\log(2000) \approx 3.3010log(2000)≈3.3010\]
- \[\log(1.132) \approx 0.0532log(1.132)≈0.0532\]
PcLOG代数幾何モデル:総括
\[{ \begin{align*} C_t &= C_0 \cdot (1 + a \cdot o)^t \\ S_t &= a \cdot C_t \\ P_t &= a \cdot o \cdot C_t \\ T &= \frac{\log(C_T / C_0)}{\log(1 + a \cdot o)} \\ a &= \frac{U \cdot 12}{I} \end{align*} }\]■ なぜ C, A, O モデルで記述可能か
このモデル(C, A, O = 資本・資本回転率・営業利益率)をベースにすると、あらゆるビジネスモデルの成長メカニズムを統一的に記述可能です。これは、次のような理由によります。
1. **C(資本)**は事業の「エネルギー源」
- 設備、人材、在庫、技術、運転資金などの蓄積
- ファイナンス(自己資本 or 他人資本)で供給される
2. **A(資本回転率)**は事業の「流速」
- 投下された資本がどれだけ早く売上に変わるか
- 製造・小売・SaaS・金融・物流等、業態ごとに異なる
- サブ式:A=売上/資本
3. **O(営業キャッシュフロー)**は事業の「粘度」
- どれだけ効率よく売上から利益を得るか
- 高粗利・低販管型(例:SaaS)はOが大
- ローコスト大量販売型(例:量販)ではOが小
4. A✖️Oは資本収益モデル
- ROIC(Return On Invested Capital)あるいはIRR(Invested Rate of Return)
- この資本収益モデルにはモデル自体に企業価値がつく(将来CFの現在価値)
- Discounted Cash Flowの評価コアとなっているのが資本収益モデル
■ モデルの構造:PcLOG汎用式
\[C_t = C_0 \cdot (1 + A \cdot O)^t\]または、連続時間系:
\[\frac{dC}{dt} = A \cdot O \cdot C \quad \Rightarrow \quad C(t) = C_0 \cdot e^{(A \cdot O)t}\]■ このモデルで記述可能な事業タイプの例
業種 | 資本回転率A | 営業CF率O | 特徴 |
---|---|---|---|
SaaS | 0.5〜1.5 | 30〜50% | 中A 高O。知的財産中心の資本構造 |
製造業 | 0.5〜1.0 | 5〜20% | 中A・中O 重資本 |
流通・卸 | 2.0〜3.0 | 1〜5% | 高A・低O |
金融(貸出) | 0.2〜0.5 | 10〜30% | 低A・高O。Cは貸出資本 |
飲食チェーン | 2.0〜3.0 | 5〜10% | 高A・中O |
ECプラットフォーム | 1.0〜1.5 | 10〜20% | 中A・高Oの典型 |
■ 意味と応用
このモデルにより:
- Ct(インプット)の入力に対してA*OがプロセッサーとなりCt+1がアウトプットされる
- ビジネスの根源的な「伸び方」が記述できる
- 投資判断の基準になる(例:Oは高いがAが遅いので成長に時間がかかる…など)
- AとOのモデルは開始時点でほぼ確定する
- 改善やレバレッジによって変数は追加できるが、結局のところ、マーケット首位までに30-60年かかるというのが数理の基本だということがわかる。
- 同じ資本でも、構造が違えば回転率や回収利回りは全く異なることが可視化できる
■ 拡張可能性
- Cの分解:自己資本、他人資本、レバレッジ比率
- Aの分解:在庫回転率、商談サイクル、ユーザーのLTV/CACなど
- Oの分解:粗利率 × コスト構造(マーケ、R&D、物流等)
- 追加変数導入:金融レバレッジ(エクイティ、デット、リース、オフバランス)、リスク補正、時間割引率、複数事業ポートフォリオ
初期資本(C₀) | 資本回転率(A) | 営業CF率(O) | 資本成長モデル(A×O) | レバレッジ(L) | 1000億円到達年数 | 1兆円到達年数 | 10兆円到達年数 | 100兆円到達年数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
C₀ | 1.0 | 10% | 10% | -10~+10% | ||||
C₀ | 1.0 | 20% | 20% | -10~+10% | ||||
C₀ | 1.0 | 30% | 30% | -10~+10% | ||||
C₀ | 2.0 | 20% | 40% | -10~+10% | ||||
C₀ | 2.0 | 30% | 60% | -10~+10% | ||||
C₀ | 2.0 | 40% | 80% | -10~+10% | ||||
C₀ | 2.0 | 50% | 100% | -10~+10% |
つまりこのようになる。IRR(内部収益率)=A×Oがビジネスモデルであるが、ビジネスモデルは「モデル」というくらいなので、パターンはさほど大きくない。資本成長率で表現すればせいぜい0から100%の間に収まる範囲である。2つしかできることがない。
レバレッジ変数の寄与効果はさほど高くない
初期資本を拡大させるか、資本成長率を成長させるかである。エクイティファイナンスやデットファイナンスによるレバレッジは短期的には大きな効果を産んでいるように錯覚を生むが、実はLは数十年にブレイクダウンした時の寄与効果は単年-10%~+10%の資本成長率の範囲に収まるであろう。特にエクイティファイナンスをした場合は序盤ではレバレッジが効かせられる一方で後半では株主還元をすることによりレバレッジが事業ライフサイクルの80年間全体で見るとマイナスになる。したがって、財務レバレッジによる資本成長率のブーストは80年単位ではノイズとして捨象することができる。
初期資本に対する目標資本到達年数
t年経過後の資本成長とは純粋には初期資本(C₀)と資本成長モデル(A×O)で開始時点で確定することになる。
初期資本(C₀) | 資本回転率(A) | 営業CF率(O) | 資本成長モデル(A×O) | 1000億円 到達年数 | 1兆円 到達年数 | 10兆円 到達年数 | 100兆円到達年数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
5億円 | 1.0 | 10% | 10% | 約56年 | 約80年 | 約104年 | 約128年 |
5億円 | 1.0 | 20% | 20% | 約29年 | 約42年 | 約54年 | 約67年 |
5億円 | 1.0 | 30% | 30% | 約20年 | 約29年 | 約38年 | 約47年 |
5億円 | 2.0 | 20% | 40% | 約16年 | 約23年 | 約29年 | 約36年 |
5億円 | 2.0 | 30% | 60% | 約11年 | 約16年 | 約21年 | 約26年 |
5億円 | 2.0 | 40% | 80% | 約9年 | – | – | – |
5億円 | 2.0 | 50% | 100% | 約5年 | – | – | – |
同じ表で資本が10倍になるとこのように年数は変化する。1000億円クラスでIRR60%より高いリターンはあまり類がない(おそらく物理的に不可能)ことから成長率の上限を60%に設定。
初期資本(C₀) | 資本回転率(A) | 営業CF率(O) | 資本成長率(A×O) | 1000億円到達年数 | 1兆円到達年数 | 10兆円到達年数 | 100兆円到達年数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
50億円 | 1.0 | 10% | 10% | 約31年 | 約56年 | 約80年 | 約104年 |
50億円 | 1.0 | 20% | 20% | 約16年 | 約29年 | 約42年 | 約54年 |
50億円 | 1.0 | 30% | 30% | 約11年 | 約20年 | 約29年 | 約38年 |
50億円 | 2.0 | 20% | 40% | 約9年 | 約16年 | 約23年 | 約29年 |
50億円 | 2.0 | 30% | 60% | 約6年 | 約11年 | 約16年 | 約21年 |
50億円 | 2.0 | 40% | 80% | – | – | – | – |
50億円 | 2.0 | 50% | 100% | – | – | – | – |
同じ表で資本のスタートが誰でも始められる10万円になると年数はこのように変化
📊 初期資本10万円:成長モデル別 到達年数一覧
初期資本(C₀) | 資本回転率(A) | 営業CF率(O) | 資本成長率(A×O) | 1000億円到達年数 | 1兆円到達年数 | 10兆円到達年数 | 100兆円到達年数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10万円 | 1.0 | 10% | 10% | 約145年 | 約169年 | 約193年 | 約217年 |
10万円 | 1.0 | 20% | 20% | 約76年 | 約88年 | 約101年 | 約114年 |
10万円 | 1.0 | 30% | 30% | 約53年 | 約61年 | 約70年 | 約79年 |
10万円 | 2.0 | 20% | 40% | 約41年 | 約48年 | 約55年 | 約62年 |
10万円 | 2.0 | 30% | 60% | 約29年 | 約34年 | 約39年 | 約44年 |
10万円 | 2.0 | 40% | 80% | 約24年 | – | – | – |
10万円 | 2.0 | 50% | 100% | 約20年 | – | – | – |
DCFの展開
純資産が5億円を超える大企業の場合の取引モデルはDCFが主流である。資本収益モデルがRm を上回る場合(RC>Rbenchmark)の企業価値はDCFでC,A,Oが決まれば自動的に算出される。
初期資本(C₀) | 資本回転率(A) | 営業CF率(O) | 資本成長モデル(A×O) | 5年DCF EV | 5年DCF 現在価値 | 10年DCF EV | 5年DCF 現在価値 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
C₀ | 1.0 | 10% | 10% | ||||
C₀ | 1.0 | 20% | 20% | ||||
C₀ | 1.0 | 30% | 30% | ||||
C₀ | 2.0 | 20% | 40% | ||||
C₀ | 2.0 | 30% | 60% |
📊 DCF評価シミュレーション(割引率10%、永久成長率2%、初期資本5億円)
5年と10年の違いはこの資本成長モデルが5年続くと言えるか、10年続く蓋然性があるかによって採用可否が決まる。
初期資本(C₀) | 資本回転率(A) | 営業CF率(O) | 資本成長モデル(A×O) | 5年DCF | EV(5年DCF) | 10年DCF | EV(10年DCF) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
5億円 | 1.0 | 10% | 10% | 2.27億円 | 8.07億円 | 4.55億円 | 10.34億円 |
5億円 | 1.0 | 20% | 20% | 5.45億円 | 21.87億円 | 13.87億円 | 39.24億円 |
5億円 | 1.0 | 30% | 30% | 9.79億円 | 43.71億円 | 32.36億円 | 110.56億円 |
5億円 | 2.0 | 20% | 40% | 15.60億円 | 76.42億円 | 67.68億円 | 270.81億円 |
5億円 | 2.0 | 30% | 60% | 33.06億円 | 188.71億円 | 248.35億円 | 1,261.75億円 |
- **EVはDCF + ターミナルバリュー(永久成長)**で構成
- 成長率が高まると、ターミナルバリューが急増し、EVに大きく貢献
- 2倍成長(A×O=60%)の場合、5年DCFは33億円だがEVは188億円に達する
逆説的知見
ファイナンシャルレバレッジに意味はないことがこの数式から証明されてしまう。エクイティ、デットによるレバレッジは短期的にはブーストだが、長期的には重荷になり、数十年単位だとパフォーマンスを落とす原因となる。
命題:つまり、あらゆるレバレッジは朝三暮四である。
実はこれは法人のみならず、転職によって給与を増やしたい会社員にも言えることである。マーケットによって決まる受動的な価格と、主体的にコントロール可能な個人の実力モデルは異なる。信用の前借りをすることによって短期的に高収入を得たとしても資本のプロセッシングモデルが整っていない場合には可処分所得を使い切って貯金が残らなかったり、個人の純資産は増えていないという結果となる。
命題:前提資本が0円でも、会社員であっても、資本家であっても、相続による資産を持っていても、時間という構造からするとC0は誤差にしかすぎず、100%のトポロジカルな資本成長モデルを持っている人であれば、手元現金が10万円であっても20年経つと100万倍の1000億円の純資産に成長する。言い訳することができないのは、1000円から始めても20年後には10億円になるのである。
→金持ちになりたいのであれば、80年の時間を設計すべし
ただし、収入も時間も口座残高も資産もTAC™の立場からすればノイズ、カオスの一種であり、CPT側から制御することはできません。