ファッション・ジュエリー業界のTop5
繊維、皮革、宝飾、貴金属関連のファッション・ジュエリー製造業を一括りにすると以下が世界の5本の指である。
主要5社の純利益推移 (2021年-2025年)
単位:億円(1ユーロ=160円、1ドル=150円で概算換算)
| 企業名 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年(実績/予) | 5年間の傾向 |
| LVMH | 19,200 | 22,500 | 24,300 | 20,080 | 17,400 | 23年をピークに調整局面 |
| Nike | 8,500 | 9,000 | 7,600 | 8,500 | 6,500 | 競争激化により足元で苦戦 |
| Inditex (ZARA) | 4,000 | 6,600 | 8,600 | 8,400 | 8,500 | 高い利益率を維持し安定 |
| Richemont | 2,400 | 3,800 | 500* | 4,100 | 6,000 | ジュエリー部門が牽引し成長 |
| ファストリ (ユニクロ) | 1,698 | 2,733 | 2,962 | 3,719 | 4,330 | 5期連続で過去最高を更新中 |
※Richemontの2023年は、オンライン事業(YNAP)の減損処理による一時的な利益低下。
推移から見える「勝ち負け」のポイント
1. 独走するLVMHと、猛追するユニクロ
LVMHは依然として利益額で「桁違い」の首位ですが、2025年は中国市場の減速や為替の影響で2割近い減益となりました。一方で、ファーストリテイリング(ユニクロ)は、この5年間で利益を約2.5倍に伸ばしており、上位5社の中で最も勢いのある右肩上がりの成長を続けています。CAGRで単純計算すると10年以内にユニクロがLVMHに並ぶことになりますが、NikeやZaraが伸び悩んでいることから推測すると可能性は未知数といったところです。
2. ラグジュアリーの「質の差」
- リシュモン: 「カルティエ」などの宝飾品が強く、不況下でも利益を伸ばしています。12年後にはLVMHに追いつく計算なので、ビジネスモデル的にNike, Zaraを追い越す可能性が高いです。
- Nike: 以前は圧倒的な2位でしたが、オン(On)やホカ(HOKA)といった新興ブランドの追撃を受け、2025年は利益を落とす厳しい局面に入っています。
3. ZARAの安定感
ZARAを擁するインディテックスは、売上規模ではユニクロを大きく上回っていますが、利益の伸び率ではユニクロが迫りつつあります。
まとめ
5年前は「LVMHとそれ以外」というほど大きな差がありましたが、現在は「盤石なLVMH」「ジュエリーで成長するリシュモン」「ファストファッションで成長するユニクロ」という、得意分野による格差がはっきりしてきています。
売上高・純利益の5年CAGR(2020→2025推定)
| 企業名 | 売上高CAGR | 純利益CAGR | 5年間の総評 |
| LVMH | 約12.6% | 約15.2% | コロナ後のリバウンド消費を最大化。利益成長が売上を上回る高効率経営。 |
| Nike | 約4.8% | 約4.8% | スポーツ市場の成熟と新興勢力の追い上げで、成長は市場平均並み。 |
| Inditex (ZARA) | 約6.1% | 約18.4% | 売上以上に利益が爆増。在庫管理のデジタル化で「稼ぐ力」が劇的に進化。 |
| Richemont | 約8.5% | 約22.1% | ジュエリー部門の単価上昇が寄与。不規則な利益推移ながら底力が強い。 |
| ファストリ (ユニクロ) | 約10.1% | 約24.8% | 利益成長率でトップ。海外(欧米・アジア)での収益化が完全に軌道へ。 |
※各社決算期が異なるため、2020年実績と2025年最新予想値から算出。為替変動の影響を大きく受けています。
ドルベースCAGR
| 企業名 | 売上高CAGR (USD) | 純利益CAGR (USD) | 通貨の影響と背景 |
| LVMH | 約8.2% | 約11.4% | ユーロ安の影響で円ベースより低下するも、依然として力強い成長。 |
| Nike | 約4.4% | 約4.4% | 本国通貨がドルのため、為替影響なし。成熟市場での足踏みが鮮明。 |
| Inditex (ZARA) | 約3.5% | 約14.8% | ユーロ安で売上成長は抑えられたが、利益率は劇的に改善。 |
| Richemont | 約4.8% | 約17.5% | 宝飾品の好調により、ドル建てでも高い利益成長を維持。 |
| ファストリ (ユニクロ) | 約5.5% | 約20.2% | 円安の影響を最も受けた。 利益成長は唯一の20%超えでトップ。 |
ドルベースCAGRによると、売上が急速に増えているのはLVMH
| 企業名 | 売上純増額 (5年間) | 純利益純増額 (5年間) | 評価・分析 |
| LVMH | +約303億ドル | +約108億ドル | 純増額で圧倒的1位。買収と値上げで帝国の規模を劇的に拡大。 |
| ファストリ (ユニクロ) | +約111億ドル | +約20億ドル | 円安の逆風下でも、売上・利益ともに着実な純増を記録。 |
| Inditex (ZARA) | +約102億ドル | +約40億ドル | 売上の伸びに対し、利益の積み増しが非常に効率的。 |
| Nike | +約89億ドル | +約18億ドル | 規模は拡大したが、利益の純増幅は上位5社で最も控えめ。 |
| Richemont | +約86億ドル | +約30億ドル | ジュエリーへの集中により、効率よく利益を上積み。 |
主要5社のROE・ROA比較(2025年度最新版)
| 企業名 | ROE (自己資本利益率) | ROA (総資産利益率) | 効率性の評価 |
| Nike | 約23.3% | 約8.8% | ROEは依然として高いが、ピーク時(55%)から大きく低下中。 |
| ファストリ (ユニクロ) | 20.2% | 11.6% | ROAが5社でNo.1。資産を無駄なく利益に変える力が極めて強い。 |
| Inditex (ZARA) | 約22.5% | 約10.5% | 在庫回転率が非常に高く、極めて効率的なモデル。 |
| Richemont | 約18.2% | 約7.5% | 宝飾品は資産(在庫)が重くなりがちだが、高い利益率で補っている。 |
| LVMH | 16.1% | 約6.5% | 巨大な買収(ティファニー等)で資産が膨らんでおり、効率性は低下傾向。 |
ROE、ROA、純利益率などの効率性は10年後の業界地図を塗り替える「可能性」は示すものの、ユニクロが5年間で20億ドルの純資産を増やしている間に、約108億ドルの純資産を増やしているLVMHとユニクロの差は単なるスナップショットの1年の売上、利益率以上に、積分比較で5倍以上使える資金が違うということである。この差は圧倒的であり、LVMHが5年間で稼いだ純利益の総額は、その他2-5位が5年間で稼いだ純利益の合計額とイコールである。つまり、LVMHはファッションメゾンとして、Top5のうち、世界の約半分の純利益を集めているということになる。
| 企業名 | 5年間の累積純利益 (USD) | 5年間の累積純利益 (日本円) | 特徴 |
| LVMH | 約675億ドル | 約10兆1,250億円 | 圧倒的な「積分値」。 1社で他を圧倒。 |
| Nike | 約257億ドル | 約3兆8,550億円 | 2025年の失速が累積にも響き始めた。 |
| Inditex (ZARA) | 約221億ドル | 約3兆3,150億円 | 後半の利益率向上が凄まじい。 |
| ファストリ (ユニクロ) | 約111億ドル | 約1兆6,650億円 | 増加率はNo.1だが、累積額はまだLVMHの1/6。 |
| Richemont | 約102億ドル | 約1兆5,300億円 | YNAPの減損累計で約50億ユーロ(現在のレートで約8,000億円超)を除けば、ユニクロを上回る。 |
※1ドル=150円、1ユーロ=1.05ドル換算。各社の決算期ズレ(12月、3月、8月)を調整した概算値です。
市場全体とLVMHの利益比較 (2025年ベース)
アパレル業界は裾野が非常に広く、無数の零細企業が存在するが、主要な利益は数社の巨人に集中している。つまり、LVMHは地球経済の成長に伴うファッション、アパレル、ジュエリーの増分の2~3割を配当として自動的に受け取る権利を確立していると言える。LVと、それ以外では10倍以上の圧倒的な差がついているということを認知している人はファッション、アパレル業界経験者の中でも少ないのではないか。
これだけ大きな企業であれば毎日のようにGAFAMのように経済ニュースに出て当然であるが、なぜか繊研新聞などのファッション業界専門メディアにもほとんど取り上げられず、サイレントを保っているのが不思議なところである。
| 分類 | 市場全体の純利益 (推定) | LVMHの純利益 | LVMHの純利益シェア |
| ラグジュアリー業界 | 約300億〜350億ドル | 約114億ドル | 約33〜38% |
| 全アパレル・繊維産業 | 約450億〜550億ドル | 約114億ドル | 約20〜25% |

