2種類の餌の探索方法:猪か熊か。メタポジショニング。
Boar: 古ゲルマン語で「切り刻むもの」「突進するもの」のニュアンス
Bear: 本来の名前を呼ぶのが恐ろしいがゆえに、「茶色いもの」という隠語(忌み言葉)から派生
世の中には外部から資源を取り込むベストプラクティスが2種類ある。それは、コモディティを24時間集める方法と、レア物を一瞬で仕留めるやり方である。前者は猪型で後者は熊型である。猪型は日本の自然繁殖で100万頭近くおり、熊型は1万頭と少ないが頂点捕食者は熊である。
猪は無尽蔵の探索欲求、熊は「正鵠(せいこく)を射通す」マタギのような鋭さが必要である。
猪と熊の探索戦略を、漁師の技術に置き換えれば、全体に網をかけるように動く延縄か、特定の大物を狙う一本釣りだろう。
探索戦略の再定義:延縄漁(猪) vs 一本釣り(熊)
- 猪:延縄漁(はえなわぎょう)スタイル
猪の戦略は、数キロメートルにわたって数千本の針を垂らす「延縄漁」。
- 物量と確率: 「どこかの針に掛かればいい」という考え方で、鼻を地面に押し付け、全方位を掘り返します。一本ごとのリターンは小さくても、圧倒的な「仕掛けの数(歩行距離と掘削数)」で、最終的な水揚げ量(摂取カロリー)を確保。
- 継続的な労働: 延縄を回収し、また仕掛ける。猪も一晩中、探索と採餌を繰り返す「止まらない労働」によって個体数を維持しています。
- 熊:一本釣り(大間風)スタイル
対して熊の戦略は、巨大なマグロを狙って一発の針にかける「一本釣り」。
- 見極めと集中: 熊は闇雲に動くことを嫌います。鼻という超高性能レーダーで「今、最高のリターンが見込めるポイント」を特定し、そこへ一直線に向かう。
- 「消去法」の極致: 価値の低いエリアは最初から仕掛けを捨て、「ここだ」という一点で爆発的なエネルギーを投入します。一本釣りの名手が海流と鳥山を読むように、熊は風の匂いと季節の移ろいを読み、巨体を維持する「一撃」を狙う。
- どちらの「強さ」を選ぶか
特定の部位をミリ単位で追い込むのは、「熊の一本釣り」のスタイルです。無駄な有酸素運動を削ぎ落とし(消去法)、筋肥大という一点にリソースを集中させる。
一方で、猪(延縄漁)のスタイルは、ビジネスや日常において「とにかく動いて網を広げる」段階では非常に有効な戦略となります。- 猪を食べる時: 「休まず動き、全方位を掘り返した生命力の集積」熊を食べる時: 「静寂の中で本質を見極め、一点突破で得た至高の質量」
- つまりジャブのボアとストレートのベアをコントロールするメタポジショニングが人類の知恵である。
- ジャブが左の人もいればジャブが右の人もいるが、ジャブとストレートというシステムを持たないボクサーはいない。
- ジャブは探索行動であり、小さな報酬を積み上げることによるランドスケープ調査である。ストレートはジャブにより収集されたランドスケープの谷を狙う対称性の破れである。
- ベアもボアが探索行動により座標特定してくれているからストレートが打てる。ボアとベアは必ずしも同じ組織でなくても外部のボアの情報を得てベアは一点突破すれば良い。
豊作の秋を超えた日本の猪や熊はドングリ、栗、くるみを食べており、冬場のジビエの味はウイスキーの樽のような香りである。寄生虫には気をつけるべきだが、うまみは独特だ。ナラ科の木の実が多いエリアの熊はオークの香りで、飼育された牛や豚とは全く異なる植物性脂肪に似た良質の融点の低い不飽和脂肪酸がメインである。冬の熊は森の芳醇さを閉じ込めた樽だ。 脂が熱に触れた瞬間に立ち上がるのは、獣臭ではなく、ナッツのような香ばしさと、遠くの方で感じるどんぐりや木の葉の香り。山の野菜と合わせた時に、最高のアロマとなる。
冬眠直前のツキノワグマは、「森が数十年かけて育てた大樹の実を、熊というフィルターを通して液体化したエッセンス」だ。類稀なるパフォーマンスは土地に根付いた類稀なる恵みに気づくことから始まるだろう。

