法は些事に拘泥せず|De minimis non curat lex
Rule of Manの時代は古く、Rule of Lawこそがより合理的なシステムである。
法は些事に拘泥せず(De minimis non curat lex)」という法格言は、単なる「見逃し」ではなく、「より広域スコープで資源を最大効率で運用するための、積極的な合理的棄却」という観点でまとめる。
例えば不正を働いた社員を徹底的に罰し、潰すというのは中世でいえば首切りや切腹の強要だったかもしれない。しかしそのシステムは局所的には合理的だが広域経済的には有限の資産を減損する悪手であった。
為政者が「感情」と独断で決定する組織はすべからく崩壊する。ノイズを排し、システム全体の純利益を形式的に計算した結果としての判断になるよう、どのような組織においても超法規的な冷徹な経済評価が必要である。
De minimis non curat lex(法は些事に拘泥せず)に基づく合理的判断の体系
1. 債権回収
例えば債務者が逃亡・不払いという不法行為をしたとする。
形式的判断 破産申し立て、あるいは社会的抹殺による制裁。
超法規的合理的判断: 破産は「回収原資の完全消滅」を意味する。債務者の労働能力を温存したほうが長期的な債権回収額(期待値)は最大化される。
これは1人で感情的に決めると必ず即刻罰則だが、公共の利益と、サンクコストを排除し、将来に対する回収可能性で評価すると自ずとこの結論になる。
結論: 「制裁という感情的満足」を些事として切り捨て、「実利の継続的還流」を優先する。
2. 不正、背任
例えば懲戒事由にあたるような不正をした社員がいるとする。明白な犯罪行為(横領・詐欺)があったとして、刑事訴訟が動くほどの重罰性がない場合、労基法に則り解雇予告手当を支払い即時解雇した方が速やかである。
• 形式的判断: 即時解雇・損害賠償請求。
• 超法規的合理的判断: 「処罰の正当性」を些事として切り捨て、「リスクの即時完全排除」を優先する。
3. 公共リソースの「機会費用」最適化
前科犯による軽微な接触
• 形式的判断: 警察への通報・現行犯逮捕の要請。
• 超法規的合理的判断: 警察出動のコスト(税金・人員)に対し、得られる社会的便益(更生の見込み・被害防止)が極めて低い。実害がない限り、無視という「ゼロコスト処理」を選択することが、公共リソースを重大事件に温存することに繋がる。
• 結論: 「個別の処罰感情」を些事として切り捨て、「公共リソースの配分効率」を優先する。
4. 市場維持における「プロフェッショナル・ワーク」
• 対象: 格闘技・ビジネスにおける競合他者
• 事象: 相手を完膚なきまでに叩き潰す機会の到来。
• 形式的判断: 完全なる勝利と市場独占。
• 超法規的合理的判断: 供給者(対戦相手)が消滅すれば、市場(興行)そのものが成立しなくなる。相手に再起不能のダメージを与えず、適度な緊張感を維持することで、観客(利益)を呼び込み続ける「循環型ビジネス」を構築する。
• 結論: 「一過性の完全勝利」を些事として切り捨て、「市場の持続的成長」を優先する。
総論:積極的超法規としての「些事の棄却」
これら全ての判断を貫くのは、「微小なエラー(些事)にリソースを割くことは、システム全体の利回り(公共の利益)を損なう行為である」という公理である。
この思想において、リーダーの役割は「正義の執行者」や悪事を裁く恍惚感を得ることではなく、「全体最適を導き出す高精度の演算機」であると言える。その冷徹さは自身の感情すらもバグとして消し去る徹底さが必要である。
この体系において、唯一の懸念点は「些事だと思っていたものが、システムを崩壊させる致命的なバグ(ブラックスワン)に化ける瞬間」の厳密な検討である。
予測可能性を壊す非線形の特異点ブラックスワン
例えば安倍元総理の暗殺は「些事」の定義ミス:カルト問題の過小評価にあったのではないかと推測できる。
当時の政権や治安当局、あるいは社会全体が、ある種の宗教団体による被害やその怨念を「個別のトラブル(些事)」として処理し、「公共の利益(国政の安定)」を揺るがすほどの重大なバグとして認識していなかった可能性がある。
「非線形」な反撃
合理的棄却は、相手が「予測可能な経済的合理性」の中で動くことを前提としている。
しかし、安倍元総理の事件において、犯人は「自分の経済的利益」や「破産回避」といった合理性を完全に捨て去っていた。
• バグの正体: 合理的システムが最も苦手とするのは、「自分の破滅(全損)を厭わず、システムそのものを壊しに来る特異点」。これを「些事」として無視したことが、計算式の前提を根底から覆した。
計算式: 「一部の信者の不利益 < 政権の支持基盤の安定」という局所的な計算を優先し続けた結果、システム内に巨大なエネルギーの歪みが蓄積された。
見逃して良いと考える対象が実は時限爆弾であったということがないよう、スルーするという決定にも膨大な演算が必要なのである。
超法規的判断が「積極的建設的」であるためには、対象者が「いつ、合理的な枠組みを捨てて、システムを壊す特異点になるか」という予兆(非線形なノイズ)を、警察や法律以上に鋭敏に察知し続ける必要があるのだ。

