ブレイクスルーを生むのは自己完結した熱制御システムである。経済予見の本質は「熱」ではなく「冷却」である。

金（ゴールド）、農業、畜産、漁業、青銅器、時計、水道、銃、馬車、薬、ガス、電気、自動車、計算機、ロケット、量子コンピュータまで、人類は様々なマテリアルミックスとサイエンスで能力を拡張している。

その進化のコアは、単なる技術の積み重ねではなく、エネルギーと制御の設計思想の変化にある。

自動車、F1、飛行機、ジェット機は基本的にジェットエンジンと空気を押し出す力、または揚力によって推進力を得る。それは燃料と空気の反応である。一方、ロケットの加速機構、姿勢制御、減速機構で利用されるケロシンなどの原油精製燃料は、酸化剤である液体酸素を搭載して、空気との反応をすることなく推進力を得る。自動車、F1、飛行機、ジェット機は、いずれも空気を利用した燃焼や揚力によって推進力を得る。
それらは「燃料 × 空気」という 外部環境との反応を前提としたエネルギー変換系である。

一方、ロケットの制御機構は本質的に異なる。ロケットの加速、姿勢制御、減速に用いられるケロシンなどの原油精製燃料は、酸化剤である液体酸素をあらかじめ搭載し、空気との反応を一切必要としない。ロケットは、外部環境に依存しない自己完結したエネルギーシステムとして設計されている。急激な大気圧や大気組成の変化を前提とする場合、外部環境からエネルギーを取り込む設計は、予測不能性を不可避的に内包する。そのため、環境そのものが変化する境界を越えるには、自己完結したエネルギー構造でなければならない。環境依存システムは相転移点で崩壊し、自己完結系のみが通過できる。

これはスタートアップへの明確なメタファーである。スタートアップは企業規模のステージを変えるために他人資本を導入する。しかし、他人資本に依存した成長は、外部環境が一気に変化した瞬間に不確実性が露出し、系は複雑化し、意思決定不能に陥る。上場企業の約9割が100年後に入れ替わっているのは、偶然ではない。

真に成長するとき、それは常にPcLOG（自己資本駆動型のオーガニックグロース）であるべきであり、オペレーティングレバレッジを得られる何らかのモデルを有していない場合に、外部資本をいくら取り込んだところで、大気圏を抜けることはできない。

他人依存型スタートアップはジェット機であり、ロケットにはなれない。

この構造は量子コンピュータにも現れている。

量子コンピュータは0.01K（ケルビン）の極低温環境で作動するよう設計される。これは熱がないところの方が空間の谷がよくわかり、運動という対称性が局所停留という対称性の破れを引き起こしやすい環境である。熱雑音を極限まで抑制することで、エネルギー地形の微細構造を可視化し、運動という対称性を抑え、局所停留状態という対称性の破れを安定に選択する仕組みである。現在の宇宙背景放射(CMB)の余熱が2.725Kであることから考えても、約 980億年後の宇宙の環境を先取りしていることとなる。

エネルギーは常に谷に向かって収束していく。経済においても同様に、最終的な勝者はエネルギーランドスケープの谷に位置する。ハイプや周期による熱雑音の中にいれば、短期的な勝者に振り回されるだけだ。経済の世界でなぜか寒い地域が早く成熟したのは、熱すぎると計算が収束せず、冷ます必要あるので歴史的に寒冷地で収束値としての技術が発達したのかもしれない。

量子コンピュータは、自然宇宙ではまだ実現していない低温スケールを、人工的に先取りしている装置と位置づけることができる。

経済とは常にハイプ（熱）と収束周期（冷却）の繰り返しであるが、量子コンピュータのように冷えた空間を心の中に持っていれば、どこに収束するかが比較的早めにわかるのである。熱雑音のノイズに影響されていては、短期的な勝者に振り回させることしかなく、長期的にエネルギーの谷として収束するラストウィナーを特定するには、心を落ち着かせて透き通った世界でエナジーランドスケープの地形を読む必要がある。

これこそがTANAAKKが提唱しているOntopologics™、位相差による力学理論であり、有限空間、無限空間になる前の基底を前提とすることにより計算を省略するGroundism™、基底主義の基本である。

命題A｜環境依存システムは相転移で崩壊する。急激な環境変化は自己完結系システムでしか通過できない。

• 自動車・航空機：空気依存
• ロケット：酸化剤内蔵・自己完結
• → 急激な環境変化は自己完結系システムでしか通過できない
• 上場企業の9割が100年後に入れ替わっている理由（巨象が踊る）

命題B｜他人依存スタートアップは大気圏を越えられないジェット機である。ロケットは燃料をあらかじめ搭載し、外部環境に依存しない。

• 外部資本＝外部酸化剤
• 市場変化＝大気組成変化
• → 不確実性が露出し、複雑系化して判断不能
• ロケットは離陸・加速・姿勢制御・減速・着陸のすべてにおいて、外部環境に依存しない自己完結エネルギーシステムである。

命題C｜量子コンピュータは「冷えた未来」を先取りしている。経済予見の本質は「熱」ではなく「冷却」である

• 0.01 K = 熱雑音が消えた世界
• 対称性の破れ＝解の選択（停留→運動、運動→停留）
• CMB換算で約980億年後
• ハイプ＝熱雑音
• 極低温＝エネルギー地形が見える
• ラストウィナーは谷にいる

経済を予見するとは、熱の中で速く動くことではない。冷えた視座から、エネルギーランドスケープの地形を読むことである。