再現性妄想の確証バイアスは疲れからくる認知の歪みである。たった一回の例外で命を落とすことのないようマージンオブセーフティを構築するには

20代から30代後半は、社会における働き盛りであり、どこの組織でも重宝される年齢である。しかし、この年代に競争で勝ち残っていく人に共通に見られる兆候がある。それは疲れによる認知バイアスである。上場企業の若手経営者の中には自分が決めた売上、利益、支配比率を強く信じ込んでいる人がいる。思い込みが強いほうが勝ち残れる側面が上場市場はあるが、この確証バイアスはおそらく「疲れ」から来ている。

強い思い込みは組織の成長に再現性を求める。しかし、サーフィンで全く同じ波が来ないのと同様に、経営においても同じ波が来ることはない。大きな波が来ることはあるが、その波の強さ、向き、潮の流れ、離岸流のありかなどは再現性がない。

「認知の疲弊による再現幻想の錯覚」は「自然の一回性（不可逆性）」を誤認させる―疲れは“波を同じに見せる”が、実際の世界は一度として同じ波ではない。

「このやり方で行ける」と確信して再現性を探すサーファーはアマチュアであってもプロであっても、たった一回の例外事象で命を落とすのである。

🌊 「疲れ」がもたらす錯覚：再現性の幻

人間の脳は疲労すると、複雑性を単純化しようとする傾向があります。思考を簡略化し、「前と同じパターン」「過去と似た状況」と誤認する。これが、経営者にとっての再現性の幻です。

疲れているとき、脳は「同じ波」に乗ろうとする。しかし、海は常に別の波を送っている。

経営者は成功体験を再現しようとするあまり、波を「コントロールできる対象」と錯覚し、実際の潮流（市場・時代・技術変化）を見失う。その結果、「再現不能な波」に過去の技術で挑む構図が生まれる。

🧠 「疲れ＝認知の局所化」

疲れとは単なる“体力の消耗”ではなく、知覚・予測・記憶の局所化を意味する。

つまり、疲労とは「可能性空間を閉じる」こと。経営者が“思い込み”に陥るのは、判断力ではなく認知の自由度を失っているため。

🌊 サーフィンと経営の同相構造

ここで重要なのは、「再現性を求める努力」よりも「再構成性を保つ余裕」。つまり、認知を柔らかく保つ余白こそが、“波を読む力”である。疲労によって認知空間が局所化し、複雑な波（環境）を単純化して誤認する現象は、結果として、構造の再現性を求めてしまい、非再現的な現実との整合を失う。認知の余白を保ち、波の一回性（非再現性）を感じ取りながら、現象と共振して行動を最適化する能力。

「疲れは、波の違いを見えなくする。しかし、経営とは“同じ波を探すこと”ではなく、“違う波に乗り続けること”である。」

経営における確証バイアスは、しばしば「信念の強さ」として称賛される。しかしその実体は、疲労によって複雑な現実を単純化してしまう認知の歪みである。スケールをしながら休暇を取れるほどの余白を保てる構造こそがオペレーティングレバレッジの証左である。長期的に勝ち続けるためのマージン・オブ・セーフティは、長期的な勝利を確実なものとする。

人生において重要な決断はそう頻繁に毎日、毎週できるようなものではない。なるべく決断の数を減らして、疲労を回避するのが年齢を重ねることの知恵である。１年に１回大きな決断ができれば良いくらいの気持ちで生きていないと大局を見失うのが投資や経営である。

労働時間と資本収益成果には全くと言っていいほど相関関係はない。

つまり、休暇を取れるくらいの疲弊しないポジショニングで、30代の時間を犠牲にすることなく資産をスケールできるという点だけで、残り20年間勝ち続けられるマージンオブセーフティが得られるのである。

資本の余力とともに、オペレーティングレバレッジによる、費やした労力以上に成長する「楽さ」と、疲労の少ない認知の余白こそが真のマージンオブセーフティである。