区分所有型、タイムシェア型の別荘ビジネスが初期の勢いに比べて頭打ちする根本的な理由は時限資本による位置エネルギー的失速である
区分所有型、タイムシェア型の別荘ビジネスが初期の勢いに比べて頭打ちする根本的な理由は時限資本による位置エネルギー的失速である。ヒルトン、マリオット、リゾートトラスト、不動産証券化、REIT、NFTトークンなどさまざまな形をかえ、区分所有型ビジネスモデルは常に時代とともにある。
しかし、2020年代において1億円未満の投資で必ず値上がりする資産などありはしない。20年前ならあったかもしれないがいまは、くじ引きに参加する権利くらいしかないのである。入り口から出口まで、確実性が高まるのは2020年代においては10億円以上の資産クラスだろう。10億円未満の資産クラスは勝率が49%未満である。10億円以上の資産クラスは勝率が51%以上である。この50%を境目にした±1%の違いは8割型の勝率を決してしまう。
位置エネルギーの産出を維持できるラグジュアリービジネスはマルチビリオネアの永続資本によって運営される。永続資本の成功を要素だけ真似したHNW向け区分所有は、魂の抜けた器である。空間の最上位に位置していなければ空間可能性の青天井を得ることはできないのだ。
UHNWの中央値に位置する資産家は1億円未満の有形資産分割購入をすることはないだろう。100億円を100個に分割するのはあまりにも効率が悪いからだ。年収1000万円の人が10万円の投資をしないのと同じことである。数千万円の投資はギリギリの貯金を一気に使い切ってしまうような危うさを持ち、その勇気はグローバル経済における優位性を担保しない。
庶民にとって高く見えるエクスクルーシブ性はグローバルで眺めると全くエクスクルーシブではない領域に特別感を作ってしまっている。本当のエクスクルーシブには位置ポテンシャルがあるため、失速しないが、擬似的なエクスクルーシブは位置ポテンシャルの枯渇によりデッドロック状態に陥るのだ。
例えば2025年現在におけるUS10M(15億円)のヴィラはグローバルで競争力のあるリゾート地の最高価格領域にあるので心配する必要がないが、5億円のヴィラは型落ちする可能性が高い。また、$1bを超える価格帯の都市型ホテルはニューヨークやパリでも競争力のある頂点価格帯なのでよいが、$100m前後のホテルは差別化できず、企画の勢いに比べて運営において急激に失速するのも同じ理由である。
タイムシェアの「地方リゾート開発モデル」は、構造的に破綻(または長期停滞)するリスクが高い。
理由は単なる「場所が田舎だから」ではなく、ラグジュアリー資本の物理的・社会的・文化的“位置エネルギー”を無視した設計だから。
🧩 1. 経済構造上のリスク:
「需要創出型」ではなく「需要錯覚型」になっている
タイムシェアのモデルは、
「地方の自然 × デザイン × 所有体験 = 新しい富裕層消費」
という前提に立っている。
しかし、これには二重の錯覚がある。
- 需要の錯覚:
富裕層は「どこでも美しければ来る」のではなく、
“誰と隣り合うか”=位置的ネットワーク(positional adjacency)で動く。
→ 田舎町にヴィラを建てても、“隣に誰がいるか”の社会的ポテンシャルが低いため、
一時的な購入はあっても継続的稼働が難しい。 - 価格の錯覚:
地価が上がっても、それは**“観光的地価”ではなく“投機的地価”**である。
→ 近隣の土地価格上昇=成功ではなく、再販時の収益性を押し下げる構造的要因になる。
⚖️ 2. 社会構造上のリスク:
「社会的重力中心(social gravity center)」が存在しない
Aman、Four Seasons、Bulgari Hotelなどが成功するのは、
その立地が単なる“自然環境”ではなく、**世界的な社会重力場(social gravity field)**の一部だからです。
例:
- ニューヨーク、パリ、ミラノ、東京、京都、ニセコ
→ これらは「富裕層のネットワーク」が時空的に重なっており、
誰が行っても他の誰かに出会う期待値が存在する。
対して、タイムシェアが開発している「地方の原風景地」には、
社会的重力の中心が存在しない。
そのため、滞在自体が「孤立した体験」になり、
**滞在の象徴性(symbolic capital)**が積み上がらない。したがってBillionaireやビリオネア予備軍のUHNWの生活の中の認知にタイムシェアが上がってこない。
🏗️ 3. 文化構造上のリスク:
「場所」が文化的コードとして解釈されない
ラグジュアリーとは本質的に「文化的言語(cultural language)」です。
それは「場所を超えた意味」を持たなければ成立しません。
ところが地方リゾート開発は多くの場合、
「自然がきれい」「静か」「隠れ家」
という自然主義的な価値に頼ってしまう。
この価値は**文化的翻訳力(cultural translatability)**が弱く、
グローバル富裕層の言語体系に変換できない。
→ 結果的に、世界から見て“どこでもいい場所”になってしまう。
💰 4. 資本構造上のリスク:
「Enduring Capital」ではなく「Rotational Capital」に依存している
地方リゾートは往々にして、
- 初期投資:VC/建設業連携型(Exit志向)
- 運営資金:サブスクリプション+販売益
という**短期循環型資本(Rotational Capital)**に依存しています。
しかし地方の観光経済は「初動は好調、維持で停滞、再投資で疲弊」という周期を繰り返す。これは典型的な**位置エネルギーの閉塞(potential deadlock)**です。
→ **Enduring Capital(永続資本)**が存在しないため、“文化的・社会的維持”が続かない。最終的に「投資だけ残り、意味が消える」構造になる。
🧠 5. 結論:
地方リゾート × デザイン × 分割所有 は
一見するとロマンチックだが、
経済的には「重力場なき衛星」に近い。
- 周辺地価上昇は構造的にポジティブではなく、むしろExit圧力を強める。
- 社会的・文化的・資本的重力中心が存在しないため、位置ポテンシャルが保持されず、
長期的には「美しいが空虚な空間」になる。
🔮 6. 対比モデル
軸 | 偽装 | 理想 |
重力中心 | 不在(地方分散) | 圧倒的希少存在 |
資本構造 | 回転型(VC依存) | 永続型(Enduring Capital) |
文化翻訳性 | ローカル自然主義 | グローバル構造主義 |
意味生成 | 滞在の美 | 存在の意味 |
目標 | 観光経済 | 構造経済(Structure Economy) |
本当に地方創生をするにあたり目指すべきは「地方にリゾートを建てること」ではなく、重力の中心をつくり、その重力が“階層”を与える構造である。頂点なき社会主義は失速する。国民主権民主主義は時代の長者を示すフィルターである。