体は魂を絡めとる器である。
人体が呼吸停止したあとは、数十年動いてきた心臓、呼吸なので、慣性が残っており、意識はあって体が動かないが呼吸してるようにみえる。しかし体が魂を絡めとることができず、生命が戻ってこれないという見た目である。
体は冷たいがしかし、時折棺桶に入った後最後顔の向きが右に動いたりすることもある。これは体は動かないが慣性は残っているので、心拍パルスやガスによる内圧、筋肉のATPの残響などあるのかもしれない。または魂は残っているとすると時間ごと書き変える可能性もある。しかしさすがに焼かれた後の骨を見ると、肉体がずいぶん多くの情報を持っていたことがわかる。焼く前と焼かれた後は大きく意識が変わるのだ。焼かれる前までは関係性は変わらないが、焼かれた後は重要な点が一つ失われることにより関係性に穴が開き、あらたなトポロジカルな整列が起こる。次の人にバトンが渡されるのは骨になった後なのである。しかし骨も数百年残り続ける。墓参りは礼儀や儀式ではなく、物理的にカルシウムに残った記憶を読む行為である。骨は故人に会うためのログインポータルになっている。