ファー(毛皮)の最高級品|ボブキャット

「毛皮(ファー)」で「最高級」とされるものは、用途・感触・希少性・耐久性・外見(毛並み・光沢)など複数の要素によって決まりますが、一般的に次の種類が“最高級”として挙げられます。
🔍 「最高級」と言われる条件・指標
どの毛皮にも共通して「最高級」とされるための条件があります。以下が代表的な要因です:
- 繊維(毛)の細さ・均一性
毛が細かく、かつ均一な太さで揃っていること。 - 毛密度(1単位面積あたり毛の本数)
密度が高いほど、見た目の豊かさ・保温性・ふんわり感が高まる。 - 毛の長さ・揃いの良さ
長毛(ガードヘア)と下毛のバランス、毛足の長さの揃いも品質を左右。 - 自然光沢・反射性
毛が光を美しく反射する性質を持っていること。 - 毛の強度・耐久性
摩耗・毛抜け・曲げ伸ばしに対する耐性があること。 - 希少性・調達の難易度
産地・捕獲規制・育成条件などで供給量が制限されているものほど高価になりやすい。 - 加工技術・縫製・仕上げ
原皮のなめし処理、縫い合わせ・裁断の精度、裏張りや保護加工の質も品質評価に関わります。
🔍 Fendi のファー素材構成と「重視素材」
Fendi の公式「Leather & Fur」説明には、調達される毛皮の種類割合が記載されています。
2024年のデータでは:
- ミンク (mink) が 82 %
- セーブル (sable) が 9 %
- ボブキャット (bobcat) が 6 %
- チンチラ (chinchilla) が 2 %
- フォックス (fox) が 1 %
この構成比から見ると、高級ラインでも比較的多く生産できるの ミンク
🏅 では “最高級ファー” はどれか?
- 最も使用率が高く、Fendi にとっての基盤素材 → ミンク (mink)
単位面積あたりの価格(=面積単価)で見ると、ボブキャット(Bobcat)ファーは実際に“世界最高級クラス”**です。ミンクやセーブルよりも圧倒的に高価になることがあり、Fendiを含むハイブランドが“最上位の一点物”や“ショーピース”に使用するのもこの理由です。
🐆 1. ボブキャットとは何か
- 学名:Lynx rufus
- 北米(アメリカ・カナダ)原産の野生ネコ科。
- 見た目はリンクス(Lynx)に近いが、体が小さく、白地に黒の斑点模様が特徴的。
- 毛質は極めて柔らかく、腹部(belly fur)は短く密で、白〜銀色のグラデーションが出る。
👉 この「腹部(white belly)」部分が世界で最も高値で取引される毛皮の一つです。
💰 2. 単位面積あたりの価格(㎡単価)比較
下の表は、毛皮業界のオークション(SAGA Furs、NAFAなど)や市場取引での平均傾向を基にした参考価格レンジです。
毛皮種 | 原料の単価(1㎡あたり) | 主な理由 |
---|---|---|
ボブキャット(Belly部分) | 約$10,000〜$30,000/㎡ | 野生・小型で採取面積が狭く、模様が一点ごとに異なる。希少性が非常に高い。 |
ロシアンセーブル(Barguzin) | 約$6,000〜$15,000/㎡ | 天然の光沢・軽さ・耐久性で高評価。毛の密度が極めて高い。 |
チンチラ | 約$5,000〜$12,000/㎡ | 1匹から得られる面積が非常に小さい(約5×20cm程度)。超高密度。 |
ミンク(ブラックグラマ等) | 約$2,000〜$6,000/㎡ | 毛並みの均一性と流通量の多さで価格は安定。 |
フォックス | 約$1,000〜$3,000/㎡ | 大型で面積は広いが、希少価値は低め。 |
➡ ボブキャットは「単位面積当たり価格」で世界最高水準。
面積が小さいため、同じコートを作るのに何十匹もの原皮が必要で、製品価格は天文学的になります。
🎨 3. ボブキャットが高価な理由
① ほとんどが野生(養殖困難)
ボブキャットは北米で捕獲される野生個体が中心で、飼育が非常に難しい。
→ 安定供給ができず、天然依存+個体差が激しい=超希少。
② 取れる部位が小さい
全身のうち、白い腹部のわずか15〜20cm幅だけが最高級として扱われます。
背中側(グレーの粗毛)はほとんど使われません。
→ 1匹から採れる「使える高級部分」は、わずかA4サイズ以下。
③ 模様の美しさ
白地+黒のスポットが一つとして同じものがなく、**“唯一無二のパターン”**が芸術的価値として評価される。
そのため、ブランドショーや一点物(Haute Fourrure)で使われやすい。
④ 国際的規制下の取引
ボブキャットはCITES附属書IIに登録されており、合法的に捕獲・取引される数量が厳格管理されています。
→ 合法・高品質なものは世界的にごくわずかで、価格は上昇。
👗 4. Fendi とボブキャット
- Fendiの公式サステナビリティページによると、使用するファーのうちボブキャットはわずか6%(2024年時点)【fendi.com】。
→ つまり量産用ではなく、「特別なピース」のみに使用していると考えられます。 - ボブキャットファーは、オート・フォーリュール(Haute Fourrure)ラインで頻繁に登場。
例:Karl Lagerfeldが手がけたコレクション(2015–2019)では、ボブキャット腹部の白ファーを用いたショーピースが多数登場。
🏆 結論
観点 | 最高級ファー |
---|---|
使用頻度・ブランド基幹素材 | ミンク(実用的・流通量が多い) |
希少性・高級ラインでの扱い | セーブル(特別ライン・高級象徴) |
単位面積あたりの市場価値 | 🥇 ボブキャット(世界最高レベル) |
🔹「最高級=単位面積あたりの価値」で見れば、ボブキャットが頂点。
🔹「最高級=ブランドの象徴・常用素材」で見れば、ミンクとセーブル。