Grape VarietyとAroma Wheel

ソムリエはワインの香りを体系的に捉えるために「アロマ分類(Aroma Wheel/香りのホイール)」を使います。これは基本的な香りカテゴリーを理解するうえで重要で、訓練や表現の基礎になります。
🍷 ソムリエの基本香りカテゴリー
1. フルーツ系
- 赤ワイン:チェリー、カシス、ラズベリー、プラム、ブルーベリー
- 白ワイン:リンゴ、洋ナシ、桃、アプリコット、柑橘類(レモン、グレープフルーツ)
- 熟成したものではドライフルーツ(干しイチジク、レーズン)
2. フローラル系
- バラ、スミレ、ジャスミン、アカシア、オレンジブロッサム
- 特に白ワインやアロマティック品種(ゲヴュルツトラミネール、モスカート)に多い
3. ハーブ・青野菜系
- ミント、ユーカリ、バジル、ローズマリー
- 青ピーマン、青草、ハーブティーのような香り(カベルネ・ソーヴィニヨンに多い)
4. スパイス系
- 黒コショウ、クローブ、シナモン、ナツメグ、バニラ
- 樽熟成や発酵過程で生まれる香り
5. アーシー(土・鉱物系)
- 湿った土、茸、トリュフ
- 石灰、火打石、チョーク(白ワインのミネラル感)
6. ウッディ・バルサミック系
- オーク、杉、ヒノキ、樹脂
- 樽由来の香りで、トースト、バニラ、ココナッツもここに含まれる
7. 動物的・熟成香
- 革、獣皮、タール
- 熟成した赤ワイン特有のニュアンス
8. その他(熟成や酸化で出る香り)
- コーヒー、チョコレート、キャラメル、タバコ
- 蜂蜜、ナッツ(酸化熟成したシェリーなど)
🌀 香り訓練に使う「基本セット」
ソムリエの基礎訓練では、次のような代表香をまず覚えます:
- 果実:レモン、リンゴ、カシス、チェリー
- 花:バラ、スミレ
- スパイス:バニラ、黒コショウ
- 土・鉱物:湿った土、石灰
- 熟成:革、コーヒー
この基本から、より細かい香り(例えば「ブルーベリーとブラックベリーの違い」)を嗅ぎ分けていきます。
ワインの香りを理解するには、「品種(grape variety)」と「アロマホイール(Aroma Wheel)」の対応を知ることが重要です。
以下に、世界でよく使われる代表的なワイン品種10種と、それぞれに対応する**典型的アロマホイール(香りカテゴリー)**を体系的にまとめます。
🍇 基本ワイン品種とアロマホイール対応一覧
品種 | タイプ | 主なアロマカテゴリー | 代表的な香り要素 |
Cabernet Sauvignon | 赤 | ブラックフルーツ系・スパイス系・ハーブ系 | カシス、ブラックチェリー、ミント、ユーカリ、黒コショウ、シダー、タバコ、レザー |
Merlot | 赤 | レッドフルーツ系・チョコレート系 | プラム、チェリー、ブルーベリー、カカオ、バニラ、ハーブ |
Pinot Noir | 赤 | レッドベリー系・フローラル・アーシー | ラズベリー、ストロベリー、スミレ、森の下草、キノコ、スパイス |
Syrah / Shiraz | 赤 | ブラックフルーツ・スパイス・スモーキー | ブラックベリー、黒コショウ、オリーブ、ベーコン、スモーク、リコリス |
Tempranillo | 赤 | ドライフルーツ・バニラ・レザー | チェリー、イチジク、バニラ、ココナッツ、タバコ、革 |
Chardonnay | 白 | フルーツ・ナッツ・バタリー | 青リンゴ、洋ナシ、バター、ヘーゼルナッツ、トースト、パイナップル(熟成) |
Sauvignon Blanc | 白 | グリーン系・シトラス・ミネラル | グレープフルーツ、青リンゴ、青草、ハーブ、火打石 |
Riesling | 白 | フルーティ・フローラル・ペトロール | 白桃、リンゴ、レモン、ライム、ハチミツ、石油香(熟成) |
Gewürztraminer | 白 | フローラル・スパイス・トロピカル | バラ、ライチ、マスカット、ジンジャー、クローブ |
Pinot Grigio / Pinot Gris | 白 | ストーンフルーツ・ミネラル | 洋ナシ、リンゴ、アーモンド、ミネラル、水 |
🌀 アロマホイールの基本構造(共通要素)
ワインの香りは通常、外側に行くほど具体的になる円形分類(ホイール)で表されます。
基本構造は以下のようになります:
【中心】
┣ フルーツ(赤系・黒系・柑橘・トロピカル)
┣ フローラル(バラ・スミレ・アカシア)
┣ ハーブ・グリーン(草、ミント、ユーカリ)
┣ スパイス(黒コショウ、バニラ、クローブ)
┣ アーシー・ミネラル(土、石、キノコ)
┣ ウッディ・トースト(樽、バター、ナッツ)
┣ 動物・熟成香(革、タバコ、肉)
【外周】
└ 具体的な香り単語(カシス、チェリー、バター、シナモン、湿った土、など)
🍷 例:ピノ・ノワールのアロマホイール例
中心:フルーティ ─ フローラル ─ アーシー ─ スパイス
│
├ フルーティ:ストロベリー、ラズベリー、チェリー
├ フローラル:スミレ、バラ
├ アーシー:キノコ、森の下草
├ スパイス:シナモン、クローブ
└ 熟成香:レザー、タバコ
🎯 まとめ
- ワインの香りは品種ごとに特徴的なアロマホイールパターンを持つ。
- それは、ブドウ由来の一次香(果実・花)、発酵由来の二次香(バター・トースト)、**熟成由来の三次香(レザー・タバコ)**から構成される。
- ソムリエはこの「香りの地図」を身体で覚えることで、ブラインドテイスティングを行う。