京繍(きょうぬい)

京繍(きょうぬい)とは
- 「京繍(きょうぬい)」とは、京都で発展した日本刺繍の伝統技法。
- 正式には「日本刺繍(にほんししゅう)」の一派で、京都の染織文化と結びついた刺繍芸術を指します。
- 金糸・銀糸・絹糸を用い、能装束・打掛・祭礼衣装・寺院荘厳具などに施されます。
特徴
- 豪華さと格式
- 金糸・銀糸を多用し、光沢や立体感を重視。
- きらびやかで格調高い仕上がりが特徴。
- 技法の多様性
- 平縫い、駒縫い、繍箔、相良繍など数十種類の技法が体系化。
- 立体的な表現や陰影の表現に優れる。
- 装束との結びつき
- 平安時代以来の装束文化に深く関わり、能装束・婚礼衣装・神仏具に欠かせない存在。
- 西陣織と並び、京都の装飾美術を代表する。
歴史
- 起源は奈良・平安時代の仏教荘厳具や貴族装束の装飾に遡る。
- 室町時代〜江戸時代にかけて、西陣織と並行して発展。
- 江戸時代には御用職人制度により幕府や公家・寺社の衣装に京繍が多用された。
人間国宝(重要無形文化財)
京繍は「重要無形文化財(刺繍)」として指定されています。
現代における役割
- 高級和装や舞台衣装に今も使用される。
- 美術工芸品としての京繍作品は海外でも高い評価。
✅ まとめると:
京繍は「西陣織」と並ぶ京都の装飾芸術で、豪華な金銀糸刺繍を特徴とする日本刺繍の代表格。能装束・婚礼衣装・祭礼・仏教美術に不可欠で、人間国宝も指定されている伝統工芸。
京繍の代表的技法一覧
技法名 | 読み方 | 特徴・内容 |
---|---|---|
平縫い | ひらぬい | 最も基本的な刺繍技法。布地に平行に糸を渡す。模様の色面を構成する。 |
縫い切り | ぬいきり | 図柄に沿って糸を刺し、縁を整える仕上げ的な技法。 |
駒縫い | こまぬい | 金糸・銀糸を糸で留めつける技法。豪華で立体感のある効果。能装束や打掛に多用。 |
相良繍 | さがらぬい | 小さな玉状の結びを連ねる。ビーズ状の立体感が出る。 |
繍箔 | ぬいはく | 箔片(金箔・銀箔)を糸で留める。光沢を活かした豪華な表現。 |
平 couching | ひらコーチング | 金糸・銀糸を布面に平行に置き、上から細い糸で止める。 |
乱れ縫い | みだれぬい | 不規則に糸を渡し、陰影や柔らかさを表現。自然の模様に用いられる。 |
撚り金縫い | よりがねぬい | 撚った金糸を使い、厚みと輝きを強調。 |
影縫い | かげぬい | 濃淡の糸を使い分け、陰影や立体感を出す。 |
まつい縫い | まついぬい | 布の上に糸をかけ渡して模様を形成する技法。装飾的。 |
特徴まとめ
- 豪華さ:金銀糸・箔を多用 → 婚礼衣装・能装束に不可欠
- 立体感:相良繍・駒縫い → ビーズや浮彫のような効果
- 陰影表現:乱れ縫い・影縫い → 絵画的表現が可能