PLOG|制約条件によりアップサイドが取れないビジネスは見た目の盛り上がり以上に儲からない

日本一の江戸前鮨で世界展開しているとしても、土地、建物、仕入の鮮度、技能者、営業時間、席数に制約条件がある場合、結局のところ平米売上年間100万円から1000万円に収束し、営業利益率は5%-20%くらいに収束する。
予約はいっぱいだが仕込みが必要なのでおかわりには対応できない。予約がいっぱいでも価格を上がると口コミの点数が下がるので値段は上げられない。席をオークションしたとしてもオークションした会社が儲かるだけであり席を提供する鮨屋に実入はない。アップサイドが制限されると見た目の盛り上がり以上に収益は少ない。元本を増やすことができないため、やはり24時間営業でプロダクト主導の事業の収益性とは天と地の差が出るのである。
また、芸能人で顔が売れていてもそれが時間給に紐づいているうちはやはり収益性には上限がある。CD、タオルなどプロダクトがあったとしても、興行露出しない限りは収入が入ってこないとすると最適解はグループ型のプロダクト量産モデルということになる。
ビジネスモデルの見た目は、その将来的な拡張性と収益性をすでに10年分くらい内包しているのだ。始まり方は終わり方に等しい。
制約条件のあるビジネスはアップサイドを取ることはできない。しかしダウンサイドのリスクは被ってしまう。ダウンサイドプロテクションをしながらアップサイドマキシマイゼーションをするためには、構造的なディフェンス力をたかめ、同じ売上でもより多くのマージンが取得できる、プライシングパワーとバイイングパワーを両立することができるリスク内製化されたスプレッド、マージンオブセーフティ垂直統合モデルを持つ必要があるのだ。
不動産、製造、小売という相互にコンフリクトする巨大市場をエコシステムに内包するブランドバリューチェーンを構築することで、アービトラージのオポチュニティが永続的に発生する。プライシングパワーとバイイングパワーのスプレッドを有していないと、規模が大きくなった後でもアップサイドやセーフティマージンは意外と取れない。この構造は露出回数や来客数とは無縁である。しかし、人は常に将来良くなると勘違いして事業拡大に取り組みはじめてしまう。
規模を大きくすればマージンが取れると勘違いしている人は多いが、規模が大きくなっても構造が伴っていなければコンペティションにより結局想定していたようなスプレッドを取ることはできない。意外と大きくなると構造は変えられないので、小さいうちになんとかするしかないのである。これは子供から続いている癖を大人になって変えるのが難しいのと同じである。