アパレル店舗のベストプラクティスは1店舗1000平米あたり10億円の年商で2億円の営業CF

国内で最も成長しているアパレル企業の1店舗あたり平均敷地面積は1000平米、年商は10億円、営業利益率は15%である。減価償却もあるので、3%くらいとするとEBITDAだと18%だろう。平米あたり売り上げは年間100万円ということだ。売上上下するものの、ざっくり月間10万円/平米の売上だと良い成績の店舗ということになる。
SKUあたりの単価が2000円とすれば、年間1店舗あたり50万点のSKUが販売されることになる。だいたい1人あたり3点くらい買うとすれば、6,000円/人で、年間20万人ほどの来客があることになる。月20000人として、1日あたり600名、10時間営業として、1時間あたり60名、だいたい1分に1人レジを通るような計算となる。
数字はかなり概算をしているが、だいたい平均して1分に1人レジを通るというのがうまくいく店舗の条件となりそうだ。ピークタイムと平常時、閑散時もあるはずなので、3分の1から3倍くらいの間に収まるだろう。
バックヤードの倉庫は月間5万点の在庫を保管するとすれば、段ボール1000~2000個分となり、10個くらい高さで積むとしたら、100~150平米の間に収まるだろう。
店舗収益モデル
- 店舗規模
- 敷地面積:1,000㎡
- 年商:10億円
- 営業CF:約2億円
- 営業利益率:15%
- EBITDAマージン:約20%
- 平米あたり年間売上:100万円
- 平米あたり月間売上:10万円
来客・購買モデル
- 商品単価(SKU平均):2,000円
- 年間販売点数:50万点
- 客単価:6,000円(1人あたり3点購入)
- 年間来客数:20万人
- 月間来客数:20,000人
- 1日来客数:約600人
- 営業時間:10時間/日
- 時間あたり来客数:約60人
- 1分あたりレジ通過人数:約1人
(ピークタイムや閑散時を考慮すると、0.3〜3人/分程度の変動幅を想定)
在庫・バックヤードモデル
- 月間販売数:50,000点(年間の1/12)
- 保管必要量:5万点 ≒ 段ボール 1,000〜2,000個分
- 保管スペース
- 段ボール10段積み前提
- 必要面積:100〜150㎡
- 店舗面積の約10〜15%をバックヤードに割当
レジ処理能力の想定
- アパレル店舗での平均会計時間は 1〜2分程度(試着済み、点数少なめ)
- 1台のレジが処理できる人数:
- 1分/人 → 60人/時間
- 2分/人 → 30人/時間
必要台数の計算
- 平均的には「1分に1人」= 60人/時間 なので、
- 1台でギリギリ回せる(会計が1分以内で収まるなら)
- ただし、ピーク時は3倍(=180人/時間) になる想定なので、
- 60人/時間×レジ台数 ≥ 180人/時間
- → 3台必要
- ピーク時の行列がどのくらいになるかに応じてレジは増台の必要性もある
試着室の必要数
前提(モデル)
- 平均来店:60人/時(= 1人/分)
- ピーク時は3倍:180人/時(= 3人/分)
- 試着率:30〜40%(トップス多めなら低め、ボトムス/アウター比率が高いと上振れ)
- 1人あたり試着室占有時間:6〜8分(入退室・サイズ交換含む)
- 設計目標(SLO):稼働率 ≤ 70%(待ち時間の暴騰を避ける目安)
計算式(目安)
- ピーク時の試着到着率:3 人/分×試着率
- 1室の処理能力:(例:6分 → 0.1667人/分)
- 室数の必要条件(余裕を見た容量設計):70%
シナリオ別の必要室数
- 保守的(混雑想定大):試着率40%、8分/人⇒14室
- 中央値:試着率35%、7分/人⇒11室
- 楽観(軽装・回転良):試着率30%、6分/人⇒8室
- 推奨レンジ:10〜12室(標準運用)
- 下限:8室(軽装中心・占有短い前提)
- 上限:14室(重衣料・サイズ交換多・繁忙強め想定)
「1室あたり3㎡+通路40%」→10室で約40㎡強
以上のように、WEBアプリケーションの設計と同様、処理能力(スループット)、スケーラビリティ設計、可用性設計と同様の考え方が店舗にも必要である
店舗が狭い場合はSKU単価、客単価を上げないと規模の経済が働かない
一方で若干上の価格帯で苦戦している約900億円の売上で約1000店舗ある。これは卸売ベースなので、小売ベースだと1店舗1.5億円くらいかもしれない。店舗の平均面積は10分の1くらいなので、店舗効率は1000平米の店よりも僅かに高いが、規模の経済が働かないということで、営業キャッシュフローが出ないようだ。このような場合には狭い店舗で高価格、高粗利な商品を売る方が合理的になる。商品点数を減らして単価を上げるということだ。
または店舗は最小限にしつつ、ECを複合させて店舗を最小限とする無店舗型ブランドにする。
例えばマリーナベイサンズのルイヴィトンは2,320平米の敷地で地上2階、地下2階建てなので7000平米、売り場は6000平米程度でバックヤードは1000平米である。客単価は約50万円程度で月間10億円の売上とすると月間2000名の購買。1日100-200名の購買に対してスタッフ100名くらいで対応している。顧客1名にスタッフ1名をつける計算である。廊下の動線も含めて70,000平米で200億円の年商とすると300万円の平米あたり売上、27%の営業利益に対して30.81%のEBITDAである。土地取得や内装費の先行投資が高いはずだが、売上は3倍、EBITDAが低価格帯のアパレルに比べて2倍弱ある。ただし資本効率や平米あたり売上のスループットで考えるとそこまで違いがないとも考えられる(3倍未満)。
ルイヴィトン並木通りビルは2,133平米、ユニクロ旗艦店は5000平米、エルメス銀座ビルは476平米、ティファニー銀座ビルは5,870平米。単一ブランドの巨大店だと約5000平方メートルから1万平方メートル未満というのがベンチマークになりそうだ。純利益が出てスケーラブルな店舗の平米あたりの売上は100万円〜300万円に収束しているかもしれない。
銀座三越の旗艦店は1,240億円の年商、売り場面積3.6万平米に対して344万円/平米だが、地上12階・地下4階の延床は8.1万平米なので、1平米あたりの売上は153万円/平米まで希薄化される。
伊勢丹新宿本店の延べ床面積は100,376平米、売上面積は60%の64296平米。売上は4,212億円で日本一だが、延べ床ベースで年商419万円/平米、売り場面積あたりで655万円である。EBITDAマージン18%、営業利益10%である。2600万人の年間来客、12時間営業で、客単価は15000円程度である。
Appleの平米あたり売上
Appleの年商をAppleストアの平米で割ると、約65,000〜70,000 USD/㎡/年になり、年間1000万円/平米で突出する。ただし、これはドコモ、ソフトバンク、auといったキャリアが代理店として運営している店舗やヨドバシカメラ、ビックカメラなどのAppleの販売エリアを含んではいないだろう。したがって、そのような代理店の販売敷地がAppleストアの10倍くらいあるとすると、iphoneであっても年間100万円/平米であるということができる。
財務諸表からモデル化すると、うまくいっている店舗と価格帯、うまくいかない店舗と価格帯が浮き彫りになる。
売場面積と生産面積は年商と相関している
自社保有物であれ、他社保有物であれ、売場面積1平米あたり100万円の年商であり、スプレッドは10-30%の範囲内に収まるとすると、最も重要なのはなるべく資本を使わない形で売場面積、生産面積を拡大するAppleのような販売手法だと言えることになる。生産面積は売場面積に対応して同程度あるはずだが、スプレッド10-30%が残る際の原価として反映されているはずである。