頂点のプレッシャーを推進力に変換する

民衆の注目が集まるようなNo1のポジションは、あらゆる人が憧れ、乗っかり、同乗しようとし、供給可能なエネルギーよりも需要の方が上回る。つまりあらゆる人が足を引っ張るため、それ以上の力で引き上げないと容易に引き摺り落とされる。
逆に引き摺り落とす強力なエネルギーがあるからこそ張力で引き上げる力が増していくといえる。
例えば東京の電力需要は茨城からくる電圧と神奈川、千葉から来る電圧のバランスで拮抗している。片側の電圧が何らかの配線の影響で滞ってしまうと大規模な電力不足に陥る。大きなエネルギーは常に拮抗していないとバランスが崩れる。
電力は拮抗する力によって成り立っている。同様に事業の成長も拮抗する力によって成り立つ。足を引っ張られる、依存される、嫉妬、妬みなどの力と拮抗するだけの自己規律や外部エネルギーを有していないと、容易に引き摺り落とされる。逆に引き摺り落とされる力があるからこそ、さらに引き上がる力が働く。
ヨットは逆風を活用して、帆を動かすことにより動力なしで好きな方向に進むことができる。これも自然のエネルギーを活用して推進すると言う運動としては事業活動のメタファーになる。
個人の認知可能な力から、認知外の力を運用するフェーズにシフトする際に、いつまでも個人の力でオールを漕ぎ続けている人がいるとしたら、そのような人は消耗によりバーンアウトし、退陣せざるを得なくなる。引き摺り落とす強い力に対して、認知可能な力はとても弱い。ゴールや環境の変化を考慮せずに手元の作業に集中するのは大海原で波の力や風の力、天候を考慮せずにひたすら汗をかきながらオールを漕いでいるようなものである。
認知内の力を利用して動けたと思い込めるのはとても小さい領域のみである。ローカルな力学は、広域な力学としては通用しない。勝負が決まるのは認知外のあらゆる力をコントロールする力である。無知の知というが、無知の知をそのまま放置していては凡人である。無知の領域をコントロールする力学があるから、勝負が決するのである。認知外の力学をコントロールすることなしに頂点を維持強化することはできない。