スタートアップは広域容易性問題である|困難性の誤解とComplexity

「困難な目標を掲げ、達成する」のがスタートアップであると誤認している人は多いのではないか。確かに局所プレイヤーが広域プレイヤーを見た時にそれは困難に見えるだろう。
しかし広域プレイヤーは構造的なギャップをついているだけなので、「そこに仕掛けを置いておけばかならず獲物が入ってくる」という隙間を狙っている。そしてその隙間は技術革新やグローバル経済の富の書く拡大と共に、時間と共に拡大していくのだ。
例えば人材不足とは局所プレイヤーにとっては正解だが広域プレイヤーにとって人材は選ぶほどいる。人材がいないと言っている会社は古い局所課題の焼き直ししかしていないために新たな広域問題に取り組んでいる会社に人材を取られているだけなのだ。
広域プレイヤーは局所プレイヤーよりもより大きな、難しい問題を「簡単に」解いていくから勝てるのである。つまり、「局所的視野では絶対に解くことのできない困難な問題を設定して、広域的視野から簡単に解く」ことこそスタートアップの醍醐味であって、スタートアップは困難性を容易性に因数分解する点にその主眼があるとあって良い。つまり、Complexity Reduction(複雑性の分解)とExponential Conversion(指数関数への転換)がスタートアップの基本ルールであり、これは規模の経済(law of scale)そのものである。
規模の経済には局所的には解決が困難な問題が必ずある。局所的に困難な問題が見えていない場合は必ずそこにはまる。事前に局所困難性を特定して、広域容易性に変換できているプレイヤーでないと、広域最適によるフリーキャッシュフローを得ることは難しい。
スタートアップは新しい問題を解くわけでもない。局所プレイヤーがいればいるほど広域解が発生するという前提条件を理解すれば、スタートアップは古典的な問題を分類し、局所困難性を広域容易性に昇華するゲームなのである。
つまり、規模の経済を認知できていないほとんどの局所プレイヤーにとってスタートアップは難しい。一方、広域プレイヤーにとってスタートアップは既存の伝統産業よりも容易にフリーキャッシュフローを稼ぐことのできるドル箱である。そしてその流れは自然な合気によって進んでいくものであり、無理したところで稼げるわけではない。稼げるということは自然と進むということである。この認知の差が成果の差を生むのである。