人間は自動的に最適化を始める。つまり制約条件がないと間違った解を出す。

人間は自動的に問題を解き始める
人間にとってもっとも重要な決断は制約条件である。人間は基本的な最適化を得意とし、問題を与えられると自動的に回答を探し始める。一見偶然に見えるような出来事も、人間は好き好んで自動選択的に実行しているかもしれない。
たとえば病気や怪我や死なども、与えられた条件のもとで最適解を計算して、膨大なリソースを投じた上で、自分の命と矛盾した解を見出し、固執している可能性がある。人間にとって、問題を与えられた瞬間に最適化は自動的に進み、ハードウェアである体の消耗が起きても計算をやめないので、計算資源の使いすぎで病気、怪我になってしまうのだ。本人が元気であっても家族や近親者に影響が出ている場合も往々にしてある。
会社も同様で、問題を与えられると会社は反射的に最適解を探し始める。例えばバイイングパワーの強い業界首位の10兆円企業に指示を出されると、中小企業の社員はもはや大企業側であるかのように、自分たちのリソースに顧みず、奉仕の精神でとにかくなんでも御用聞きになってしまう。たとえ発注者側が間違っていたとしても、その間違いの全てを認知し、相手が傷つかない形で、ナッジにより軌道を変えていくのはとてつもなく困難である。
これを防ぐには事前条件としての制約をインプットするしかない。空間、時間、資源、体、人生には限界があるという事前のインプットがない場合、問題を永遠のリソースをかけて計算し続けてしまいその結果自分の身を犠牲にしてしまうのだ。目標は正しい原動力と制約条件によって正当化される。間違った目標、間違った制約条件をもとにガソリンを燃焼させてしまえば、間違った結果として、体に跳ね返ってくるのである。正しい目標と正しい制約条件を持つことができれば、原動力は省エネルギーで済む。結果的に永久機関的なクリーンエネルギーによる推進力を得ることができる。
始める前にやめる
人間は自動的に最適化してしまう動物だとすると、最適化する対象領域を間違えると、自動的に消耗して死にむかったり、自動的に地球に悪影響を与える局所解を出すこととなる。あるいは、優秀な人が特殊詐欺のリーダーをやってしまったりする。たとえば貧しく戦争のある文化圏で生きていたらCO2の排出量を抑えたクリーンエナジーによる生産など考えないだろう。競争で勝ち残る優秀な人が率先して地球環境を破壊していくのである。所与の制約条件が何であるかによって、人間は自動的に違う回答を出す。世の中で著名になった後に、一気にマスコミに叩かれたり、逮捕されたりなどという例が後を経たない。これは間違った原動力による、制約条件を度外視した目標遂行を実行してしまったことによるしっぺ返しである。当人は器としては優秀である可能性が高い。ただし、優れた器であっても、器の持ち主次第で器は吉と出るか凶と出るか決まってしまう。少しのアクションによって、制約条件を演繹した時、極限の解析により誤っていることに先んじて気づき、「始める前にやめる」ことが人間の意思決定のなせる技で、これこそ、未来と過去を等価に書き換えていく介入技術である。