TANAAKKアーカイブ|丸の内郵船ビルディング

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TANAAKKアーカイブ|丸の内郵船ビルディング

TANAAKKが次の100年で天下を取るにはどうすべきか?2020年4月29日に新型コロナウイルスのシャットダウン、非常事態宣言により東京都街中が静まり返る中、銀座、六本木、渋谷を散歩して、最終的に見えた一筋の光が丸の内を占領するという計画でした。戦国時代であれば血を流さなければ得られない無血開城を令和の時代であれば、血を流すことなく実現できる。元々丸の内は2018年から入居を検討し、地主企業に足繁く通って連絡したものでした。

2020年5月1日にTANAAKK法律事務所を開所することになり、選んだのが郵船ビルでした。テナントが次々と撤退しており、銀座も丸の内もかつてない空室率。1階路面の角地は坪20万円という水準でしたが、最もエコに丸の内の中心に入るならこの選択しかないと選んだのが5年前。2025年7月26日の今日に引っ越し作業です。隣の丸ビルに引っ越すのに10人がかりで2日の作業です。

近隣の事務所の皆さんには「行幸通 守くん」が有名だったそうで、丸ビルを借りたときに三菱地所の社員の方から、「あの行幸通りの端の会社のヘルメット被ったマネキンあれなんなんでしょうね?」と言われて、「それがうちの本社です」と答えたことがあります。

2020年5月1日にTANAAKKの第二創業が始まりましたが、2名しか社員がいない中で初年度の売上は経営コンサルティングで年商1億円に達していました。ほとんどがプライム上場企業の新規事業プロジェクトで、ほぼ寝れない日が続き、徹夜続きで、マッサージ機で頭を揺らしながら30分だけ仮眠するという生活が続きました。運動不足を解消するためにトランポリンを設置し、懸垂器に足止めをつけて、逆さ吊りぶらさがり腹筋ができる器具もありました。

今から考えると贅沢な話ですが、コロナ期間中で初年度2020年1億円が2年目2021年1.3億円にしか売上が30%しか増えなかったので、一旦経営コンサルティングをやめてミュージシャンになった方がいいのではないかということまで考え、マイク、ドラム、ベース、ギター、キーボードなど楽器一式を買ったのですが、youtubeに音楽をいくつかアップロードして終わり、結局始まったのが今の主力であるGAAS™でした。

一部屋4坪から始まった郵船ビルは、壁を破って隣の部屋を繋げていき、 気づけば2年間で12部屋になっていました。

GAASのリリース後は2022年年商3億、2023年9億、2024年50億と毎年一気に業績が伸び、現在に至ります。この間社員数は2名から630名に。GAASリリースから2022年ちよだビジネス大賞特別賞、2023年千代田区長賞、2024年東洋経済すごいベンチャー選出、2025年フィナンシャルタイムズアジア太平洋急成長企業国内1位をはじめ様々な賞を受賞しました。

郵船ビルはかなり良い立地にあるにもかかわらずタクシーの運転手が郵船ビルに辿り着けないという悩みがありました。丸ビルは新人のタクシー運転手でも必ず辿り着き、新丸ビルと間違える人もいません。さらにタナークレンタカーの福岡支店や沖縄支店の新卒でも知っているのが丸ビルでした。

新しいビルはたくさん立ちますが、人間が土地の地図を記憶するときのハブとなっている要石のような場所はなかなか多くはありません。例えば郵船ビルだと郵政ビルと間違われたり、サンケイビルや経団連ビルと言ってもビルを知らないタクシー運転手も多いです。東京タワーのように必ず間違えない都市のシンボルとなっている建物はそう多くはありません。

記憶や到達にコストがかからない、都市のランドマークであり、東京の伝統的なオフィスと言えば?という質問に丸ビル以外出てこないという点から丸ビル以外の選択肢はありませんでした。新しすぎるものは評価の確立に時間がかかります。伝統的なものは皆がもう飽きたと思った頃からその価値を増し始めます。20年に一回の不況のタイミングで、1923年から100年かけて人々の記憶を作ってきた伝統的なシンボルを獲得できたのは、アービトラージを基本とするタナークの理念にもぴったりな経営アクションでした。

丸の内郵船ビルディングは2025年12月末まで利用予定ですが、本店は2025/6/1から借りている丸の内ビルディング33階に移転です。丸ビルも、新丸ビル、虎ノ門ヒルズ、六本木ヒルズ、麻布台ヒルズなどを比較した上で丸ビルに決定し、さらに10階や18階を案内されたときには、30階以上の部屋が出るまでは契約しないと伝え、目標を上回りオフィス階では最上階の33階、しかも1番よい西東北3面ガラスの行幸通り側の区画が手に入ったのです。丸ビルのレストランを食堂がわりに使うのであれば食べ物のレベルでもシリコンバレーのテック企業の食堂に勝てます。宣言通り日本のオフィスビルの中でまずは頂点を取ったと言っても過言ではありません。これはこの5年間タナークが疫病、貿易摩擦、経済ショックなど一連の歴史的変動を力強く乗り越え、日本一成長した証左です。ここに至るまでの写真たちも数十年先の未来には社史の1ページとなり、21世紀の日本経済史の1ページになることでしょう。

価格と価値

郵船ビルは1階と3階で、1階は地代にプレミアムが乗っていたため、実は合計金額は丸ビルよりも高かったのですが、同じ金額、同じ敷地面積にもかかわらず、丸ビルの説得力には敵わず、価格と価値の違いを感じる好例でした。社員も取引先も、丸ビルの方が総額が安くなったとは思っていないでしょう。中心に入るためには事前の支払いをたくさんする必要があり、いざ中心に入るとなるとエコなのでしょう。また、丸ビルは敷地面積, 10,029.45 m². 建築面積, 7,562.91 m². 延床面積, 159,907.74 m²あるものの、全部所有すれば良いというわけではなく、あらゆるラグジュアリーホテル、タワーマンション、Sグレードの商業ビルの中でも「シグネチャー」と呼べるキールームは限られているように思います。街のシンボルの中の、さらにたった1%程度しかない上澄を抑える力の重要性のケーススタディでした。

「時間を引き寄せる重力」

全国各地の山の神のアイテムが郵船ビルの会長室に鎮座されていましたが、引っ越しが完了した後の郵船ビル会長室は空っぽになった感じで、一方、最初空っぽだった丸ビルの会長室には、引っ越し完了後誰もいないのに誰かいる気配があり、丸ビル会長室にヌシが動いたのを感じました。移動距離にしてみればたったの100mに過ぎませんが、この力は2010年代のシリコンバレーにも感じた力でした。場の空気があるエリアに入ると重くなり、重力が強くなっているように感じるのです。地軸が動く、山が動く、式年遷宮、土地神、ゲニウスロキ(genius loci)など、さまざまな表現ができそうな、重力の力、トポロジカルな質量の移動を今回感じたのでした。これは未来を引き寄せる重力であるともに、過去をも引き寄せる重量です。現在を起点として、歴史と未来の特異点として、空間がたたみ込まれているのを感じるのです。

100年後のTANAAKKは創業の地や歴史に過度にこだわる会社ではなく、時代の中心であり続ける会社であるべきだと考えています。現在と同様に過去と未来は等価で影響しあうため、2020年から2025年のこの時代にTANAAKKが世界的疫病、経済ショック、貿易摩擦、歴史的円安の中で、最も地価の高い日本の経済中心地で勝ち抜いたことは未来のTANAAKKの経営リーダーたちに勇気を与えることでしょう。重力は互いに影響を与え合う力です。未来のTANAAKKが行き詰まった時は、過去のTANAAKKがブレイクスルーを後押しし、過去のTANAAKKが行き詰まったときには未来のTANAAKKがブレイクスルーを後押しするのです。過去、現在、未来は等価で互いに影響しあい、切磋琢磨していくのです。それがタナークがこの時代に発見した、あらゆる力の背後にある真の力の場です。