デットキャピタルマーケット|Debt Capital Markets, DCM

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デットキャピタルマーケット|Debt Capital Markets, DCM

日本でもグロース市場やスタンダード市場のムービングストライクワラント発行などのメザニンファイナンス類似の資金調達手段が増えてきており、また、プライム上場企業はデットキャピタルマーケットを活用した新規事業予算の確保を進めている。

通常、現預金があったとしても、大企業の預金には資金使途がついていたり、子会社、支店、海外銀行口座などに分かれているため、1兆円企業ともなると全社の銀行口座が数百種類にも渡り、保有現金を可視化するのが難しい。したがって、M&Aや新規事業の予算として自由に使える100億円をいかに確保するかは、ほとんどの時価総額1000億円〜1兆円超の上場企業にとっても課題となる。

アメリカのデットマーケット

アメリカでは、上場企業の社債発行、デットマーケット、ボンド、コマーシャルペーパー、タームローンのセルサイドアドバイザーは非常に一般的で、多くの投資銀行や専門のアドバイザリー会社がこの分野に積極的に関与している。

セルサイドアドバイザー

セルサイドアドバイザー(Sell-side Advisor)とは、企業が資金調達を行う際に、資本市場に向けて商品を販売(発行)する側のアドバイザーで、アメリカの主要な投資銀行やブティック型投資銀行は、これらの資金調達手段に対して包括的なサービスを提供しており、具体的には以下のような役割を果たす:

1. 社債発行(Bond Issuance)

  • 大手投資銀行は、企業の社債発行においてセルサイドアドバイザーとして重要な役割を果足す。企業が社債を発行する際、アドバイザーは信用格付け取得、発行規模や金利、償還期間、投資家層への販売戦略などを決定します。
  • JPモルガン、ゴールドマン・サックスモルガン・スタンレーバンク・オブ・アメリカシティグループなどのバルジブラケットが主要なアドバイザーとしてこの分野で活躍しています。

2. デットキャピタルマーケット(Debt Capital Markets, DCM)

  • DCM部門は、企業が社債、ローン、コマーシャルペーパーなどを発行する際に必要なアドバイザリーサービスを提供します。この部門は、クライアントに対して最適な資金調達方法を提案し、発行を進めるためのマーケット条件を整えます。
  • 主要なアメリカの投資銀行は、DCM部門を有しており、特に上場企業に対しての支援が豊富です。

3. コマーシャルペーパー(Commercial Paper)

  • コマーシャルペーパーは、短期資金調達の一環として企業が発行する短期証券です。この市場でのアドバイザリー業務も、投資銀行が多く行っています。特に企業のキャッシュフロー管理や運転資金のニーズに応じたアドバイスを提供します。

4. タームローン(Term Loans)

  • タームローンは、一定期間内に返済が行われるローンであり、長期的な資金調達手段として利用されます。投資銀行は、企業が適切な金利と条件でタームローンを発行できるよう支援し、銀行との交渉を行います。

プレイヤー

アメリカでは、以下のような企業がセルサイドアドバイザーとして頻繁に関与しています:

  • 大手投資銀行(ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン、シティグループなど)
  • 独立系ブティック投資銀行(Evercore、Lazard、Houlihan Lokeyなど)
  • 商業銀行(バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴなど)

これらの銀行は、上場企業やプライベート企業の資金調達支援を行うため、非常に積極的にデットキャピタル市場に関与しています。特に、上場企業が社債を発行したり、タームローンやコマーシャルペーパーを利用したりする際、これらのアドバイザーの役割は非常に重要です。

営業CFを投資CFに利用しないのがゴールドスタンダード

大企業において新規事業を始める場合、内部留保や既存収益事業の運転資本の切り崩しによって資本投下する場合がありますが、これだと純利益の大きな既存事業と赤字を垂れ流す新規事業を比較してしまうこととなり、うまく機能しません。金のなる木である収益事業で得られる営業キャッシュフローは基本的に投資家に還元するものであり、投資キャッシュフローは財務調達によって賄うのがグローバル市場におけるゴールドスタンダードといえます。

■【成功例】AmazonのAWS立ち上げ(2003〜)

  • 当初のAWSは赤字続きだったが、Amazonはそれを別事業体として切り出し、独自のPL管理で育成した。
  • 外部調達(社債発行)による設備投資を多用した。
  • 成長後はAWS単体での営業CFが自立し、事業セグメントとして独立採算を実現。

■【注意例】ソニーの新規事業(過去のバイオPCなど)

  • 既存事業(AV機器やエレキ)の営業CFから多数の新規事業に社内投資をしたが、部門間の収益比較に耐えきれず撤退を繰り返した。
  • 現在のソニーは新規事業創出に対しSony Innovation Fund(CVC)等を通じて社外資本と連携するモデルへとシフト。

■【グローバル資本市場のスタンダード】Apple、Google(Alphabet)、Microsoft

  • これらの企業は自社株買いや配当を通じて営業キャッシュフローの多くを株主還元しつつ、
  • 新規事業(例:Waymo, DeepMind, Apple Vision Pro)にはVC的予算配分や分社化による独立会計を適用。
  • 投資判断はNPV、IRR、ROICなどで独立評価され、既存事業と明確に分けて運営

Appleの決算書にもある通り、営業CFは100%配当、投資CFは社債の運用によるスプレッドで賄うというのが適切である。

現にキャピタルマーケッツにおける原理原則は長い上場企業の歴史で証明されている。日本においてもシンジケートローンを例えば運転資本として借りた場合に資金使途制限のコベナンツにより設備資金やM&Aでは使用できない。資金使途の切り分け、インプットとアウトプットの峻別は、金融の基本であるが、この基礎ができていない経営者は多い。基礎ができていない場合にどこがダメなのかを教えてくれる人はいない。キャピタルマーケッツは勝ち馬に乗る市場であり、敗者は無言で去ることを強要されるのみなのである。