株式投資3つの基本ストラテジー
株式をはじめとした投資には代表的な3つのストラテジーがある。
🔵 1. バリュー投資(Value Investing)
◼︎ 概要:
- **「企業価値に対して割安な株を買う」**という戦略。
- 市場価格が内在価値よりも十分に低いと判断できる企業に投資。
- 「安全域(Margin of Safety)=内在価値-表面価格」を重視。
◼︎ 特徴:
特性 | 内容 |
---|---|
評価指標 | P/E、P/B、EV/EBITDAなどの低さ。簿外資産及び簿外純利益(Look-Through Earnings) |
投資対象 | 老舗企業、伝統的業種、成熟産業 |
投資家例 | ベンジャミン・グレアム、ウォーレン・バフェット |
🔴 2. グロース投資(Growth Investing)
◼︎ 概要:
- **「将来の成長(売上・利益・市場拡大)に賭ける」**投資戦略。
- 今は割高に見えても、未来の業績成長で回収できると信じて買う。
◼︎ 特徴:
特性 | 内容 |
---|---|
評価指標 | PSR、PERが高いことも許容される |
投資対象 | テクノロジー、AI、SaaS、新興企業 |
投資家例 | キャシー・ウッド(ARK)、ピーター・リンチ(中期型) |
⚫️ 3. ディストレスト投資(Distressed Investing)
◼︎ 概要:
- 「経営危機・破綻・債務不履行に陥った企業への逆張り投資」
- 株式、社債、ローンなど、価値が大きく毀損した資産を安く買い、再建や清算による回収を狙う。
◼︎ 特徴:
特性 | 内容 |
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評価指標 | 債務超過、PER/PBRすら使えない場合あり |
投資対象 | チャプター11申請企業、NPL債権、破綻寸前の企業 |
投資家例 | ハワード・マークス(Oaktree)、ウィルバー・ロス |
✅ その他の派生戦略(補足的に存在する分類)
以下に、**コロケーションを用いたHFT(高頻度取引)**を含む、主要な株式投資ストラテジーの一覧を整理しました:
ストラテジー | 説明 |
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インデックス投資 | 市場全体のパフォーマンスに連動するETFやインデックスファンドへ投資するパッシブ戦略。コストが低く、長期的な資産形成に向く。 |
イベントドリブン | M&A、スピンオフ、IPO、倒産、訴訟など企業の特殊イベントに基づいてリターンを狙う戦略。代表例は合併裁定取引(Merger Arbitrage)。 |
トレンド投資(テーマ投資) | ESG、脱炭素、生成AI、サイバーセキュリティなど、社会や技術の構造的変化に基づいてポートフォリオを構築。責任投資原則(PRI)やサステナビリティを重視。 |
HFT(高頻度取引)/ コロケーション型 | 取引所のサーバーに物理的に近い場所(コロケーション)に自社サーバーを設置し、ナノ秒単位の高速注文を実行。価格乖離・板情報・フラッシュイベントなどを狙って超短期で利ザヤを抜く戦略。特定のマーケットメイキングやアービトラージに特化。 |
マーケットメイカー | 「常に買いと売りの注文を出し続ける存在」であり、流動性供給者(Liquidity Provider)とも呼ばれる。ビッドアスクスプレッドの裁定をとる。特定の株式やETFについて、常に買い気配・売り気配を提示(双方向注文)して市場流動性を提供。 スプレッド(売買差益)・リベート・アルゴ取引により収益を得る。市場安定化にも貢献。 |
✅ 補足:HFT / コロケーション戦略の特徴
- 勝負はミリ秒以下のスピードとアルゴリズム精度
- 取引量は莫大だが保有時間は極端に短い
- マーケットニュートラル(市場全体の動きに左右されにくい)
- 主なプレイヤーはCitadel、Jump Trading、Virtuなど
🔄 戦略の併用
実務では、バリューとグロースを組み合わせたり、バリュー型でも再成長企業を狙ったりするなど、「純粋な分類」よりもハイブリッド型ストラテジーが主流です。
🟦 1.何を買うかよりも、買うタイミングの方が重要
「何を買うかではなく、いくらの価格で買うかが重要である」
▶ 意味
- 事業の質だけではなく、それに対して支払う価格が最終リターンを決定する。
- 素晴らしい企業でも「高すぎる価格」で買えば損をする。
▶ 典型例
- どんなに優れた企業(例:NVIDIA、Apple)でも、将来の成長がすでに株価に100%織り込まれていれば、上値余地は限られる。
- 一方で、経営不振でも割安であればリターンの可能性が生まれる(例:フォード、GEの再評価など)。
🟦 2. 安く買えるポジショニングの方が何を買うかよりも重要
「良い投資とは、良いものを買うことからではなく、それが何であっても上手に買うポジショニングをとることから始まる」
▶ 意味
- 投資は「商品選び」ではなく「価格交渉」に近い。
- どんな資産でも、それが「適切な価格以下」で買えるならば、良い投資になり得る。
- 逆に、最高品質の資産でも、過剰な価格で買えば割に合わない。
▶ 概念的裏付け
- 「どんなに素晴らしい会社でも、間違った価格で買えば、悪い投資になる」
🟦 3. 上がり続ける株はないが、下がり続ける株もない
「永遠に割高になり続けるような資産はなく、逆に、永遠にバーゲンになり続けるような資産はほとんどない」
▶ 意味
- 市場は非効率な瞬間を生むが、長期的にはある程度の効率性に収束する。
- 割高なものはいつか修正され、割安なものは注目されて評価される。
- 「市場の修正力」と「価値の収斂」を前提にした発言。
- 上がる時はみんなで買い、下がる時はみんなで売るため、底値は割安なことが多い
- ディストレスト投資がバリュー投資よりもパフォーマンスが良いのはこの理由から
▶ 投資家としての警句
- 「いま高いからといって永遠に高いとは限らない」
- 「いま安いからといって放置され続けるとは限らない」
- よって、現在の価格が長期的に妥当かどうかを見極める眼が必要
- スナップショット的な内在的価値、動的な将来フリーキャッシュフローの現在価値を判断
✅ 投資原則としてまとめると:
原則 | 内容 |
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価値と価格は別物 | 企業価値 ≠ 株価。常に乖離があると見るべき |
投資の出発点は価格 | 良い資産でも、価格が悪ければ投資すべきではない |
市場は是正される | 異常値(割高・割安)は永続しない(ミーンドリバージェンス) |
公開市場における投資原則と、非公開市場における投資原則は抽象的には同様の原理原則から導かれる。また株式、債券、コモディティ、ビットコイン、美術品など商品に問わず価格の背景にある構造的な価値及びフリーキャッシュフローに着目するという基本的な考え方は同様である。