ROIC公式の因数分解と3つのパラメーター
ROIC = 税引後営業利益÷投下資本と2変数で扱われるのが教科書的な一般公式ですが、TANAAKKのGAASではROIC(Return on Invested Capital)は以下の3つの因数分解でパラメーター表現します:
ROIC= 1.Invested Capital ×2.Capital Turnover × 3.NOPAT Margin
ここで、
- Invested Capital =投下資本総額
- Capital Turnover = 資本回転率(売上/投下資本)
- NOPAT Margin = NOPAT(Net Operating Profit After Taxes) ÷ 売上高
ROIC=投下資本絶対量×回転数×利益率
という見方ができると、以下が明確になります:
視点 | 説明 |
---|---|
「資本をどれだけ使っているか」 | → インプット(投資の初期資本の重要性) |
「資本を年間何回回転させているか」 | → プロセッサーモデル(資本回転モデル) |
「1回の資本回転でどれだけ利幅を稼いでいるか」 | → マージンモデル(製品・サービスの競争モデル) |
ROIC=1年間を通した資本回転の成果物 | →アウトプット |
仮説分析:ROIC = 100% はどのようなパラメーターで成立するか?
1. ケース:
- 資本回転率(Turnover) = 3
- NOPATマージン = 35%
ROIC=3×35%=105%
これは可能。たとえば、ブランド力を持ち顧客の発注から入金確認後に製造開始ができる受注生産型メーカーや、EC型のD2C事業で固定資産が非常に軽く、仕入れ原価が抑えられている場合などは、この構造に近づくことがあります(資本回転率が極端に高い軽資産モデル)。
Apple、NVIDIAはこの構造を持つ。
2. ケース:
- 投下資本回転率 = 2
- NOPATマージン = 50%
ROIC=2×50%=100%
これは資本回転3回のモデルと一見似ているように見えて理論的には可能ですが、現実の事業モデルとしては非常に稀です。理由は:
- NOPATマージン50%は極端に高く、ソフトウェアSaaSのようなビジネスでも成熟後でようやく到達するレベル。税引き前で75%の営業利益が必要。
- しかも投下資本回転率が2回でも平均よりは回転数が多い。通常0.5-1回の資本回転はありますが、高マージン&中資本回転という組み合わせは類型としてほとんど存在しません。
代表的ビジネスモデルのプロット(参考)
ビジネスモデル | Turnover | NOPAT Margin | ROIC 傾向 |
---|---|---|---|
SaaS (成熟期) | 0.5-1.0 | 20〜30% | 10〜30% |
D2C(ローコスト型) | 5〜10 | 5% | 25〜50% |
ハードウェア製造業 | 0.5〜1.5 | 10% | 5〜15% |
不動産ビジネス(REIT等) | 0.3〜0.5 | 10〜20% | 3〜10% |
結論:
- ROIC = Turnover × NOPAT Margin の式は確定。
- ROIC=100%は理論上可能だが、3×35%型は存在しうるのに対し、2×50%型は現実のビジネスでは成立しにくい。
- 投下資本回転率が低い(≒資本集約的)ほど、高マージンでなければROICは上がらないが、高マージンかつ高資本回転は両立しづらい構造。