内発的な変化こそが真の組織進化である

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内発的な変化こそが真の組織進化である

文鳥は誰もみていないところでモゴモゴと鳴き声の練習をする。「練習してるの?」と声をかけるとやめてしまうが、またしばらくして1人になるとまた練習を始める。そしてある日突然、はっきりした言葉や音を披露する。

人間の赤ちゃんも誰も見ていないにも関わらず、一生懸命朝から手や足をバタバタと動かし、1人になると自分の声を出して自分で聞いて楽しんでいる。寝返りなどのより難しい動きはいきなりできるようになるのではなく、誰も見てないところで少しずつ「試行錯誤」している結果としてある日急にできるようになる。一番最初の寝返りは目を離したすきに、親ですら見ていないところで達成する。赤ちゃんは親が見ていないところで成長し、鳥は親鳥や飼い主が見ていないところで成長する。

これは組織においても同様に言えることである。動物や人間は、他者の介入なく自己学習し、壁(限界や課題)を乗り越え、不可逆的な進化の閾値を超える。

つまり、「内発的な変化こそが真の進化を促す原動力である」

■ 命題:「真の進化は内発的変化によってのみ成立する」

● 肯定的観点(内発性重視)

  1. 自己組織化(Self-Organization)
    • 複雑系では、外部からの指示なしに内部の相互作用によって秩序が生まれる
    • 組織・意識・生命進化の例でも、内部構造の非線形変化が大きな飛躍を生む。
    • → 変化は外部に「反応」するのでなく、「創発」される。
  2. 内発的動機(Intrinsic Motivation)
    • 人間や動物は、外的報酬がなくとも好奇心や探索心から行動を起こし、成長する
    • 真の学びや創造はこの内発性から生まれ、外的条件はそれを妨げも促しもし得るが、エネルギーとしては一瞬であり、恒常性はない
  3. オートポイエーシス(Autopoiesis)
    • システムは外部の影響を「内部の構成に従って」解釈し、自己を更新する。
    • 外部はあくまで内的変容の引き金にすぎない。環境と構造は構成的カップリングするが、因果的ではない。

● 相関否定の視点:「外部と内部は“見かけの相関”にすぎない」

  • つまり、外部変数が内的進化に影響を与えているように見えるのは、外部の変化を“意味づける”内面の解釈枠があるから
  • 相関とは内部が投影した外部の反映にすぎず、本質的な進化は内側からのみ不可逆的に起こる

真の進化とは、外部の影響を材料としつつも、それを構造的・意味的に「内部で取り込んだとき」にのみ成立する不可逆な変容である。つまり、進化は常に「内発」であり、外部はそれを導く鏡の一部の断片にすぎない。

命題:

「組織の変容は外部環境への反応ではなく、内部構造の必然として起こるべきである」

● 1. 外的変化に追随するだけの変容は“模倣”であって、進化ではない

  • 外部の流行、競合の動向、政策の変更などに機械的に反応する企業は、主体性を欠いた模倣戦略を繰り返す。
  • これは変化に見えるが、構造的進化ではなく、表層的適応にすぎない。
  • その結果、外部条件が変わるたびに方向性を見失い、原理を見失う危険性が高い。

● 2. 真の変容は、内部の整合性要求(矛盾、抵抗、摩擦)から生まれる再構成である

  • 企業の目的は環境への適応ではなく、内部体系を創造することである
  • 優れた組織は、外部への単純反応により自己組成することはない。内部の本質的葛藤や未処理課題、価値の進化に対する応答として再構成される。

● 3. 外部環境はあくまで“変容のトリガー”であり、“方向”を決めるものではない

  • 優れた組織は、外部の変化を材料にするが、その意味づけ・再解釈は内部の価値構造に従う
  • 「何に反応するか」「どのように再構成するか」は内発的な意味体系の問題である。

結論:

組織変容の正しいアプローチとは、「内部の構造的必然に基づく不可逆的な自己再構築」であり、外部の変化に反応し続ける姿勢は、長期的には統合の崩壊と戦略の空洞化を招く危険な擬態である。つまり、企業のエネルギー生産の基本姿勢として、外界への反応とは局所解のみを生み出す分かりやすい罠であり、より広域における組織的真実は局所解をヒントとした内部構造の最適化にある。

資本収益率であるEVA(ROIC-WACC)は企業の至上命題として内部と外部ともに影響を与える力学であるが、この力学は外界からの刺激で生まれるものではなく、内部関係により成立するものであるということであり、その原動力は一人一人の構成員が、隠れて練習する鳥のように人知れず試行錯誤を繰り返した結果の積み上げである。つまり、マネジメントの役割とは、外的変化のモニタリングではなく、構成員の内的変化の観測である。

これを個人の目標や実現に置き換えると、年収やポジションはその人の何も表現しない。本来的な生き方の指標とは、発した言葉や、動作が、外界に影響を及ぼすかという内部→外部への影響という逆ベクトルである。満足度や幸福度というものは、自分自身の一挙手一投足が外界に影響を与えることができるかどうかであり、内部更新が外界に影響を全く与えない場合、それは無力感や自己否定感につながってしまう。

つまり、

「外界の変化」→内部構成の変更→外界の変化 では方針を誤る

「内部構成の変更」→外部環境の変化フィードバック→内部構成の再変更

というように、回帰した場合の出発点が外にあるのか?内にあるのか?という二者択一は、ほとんど全ての人が盲目的に見誤ってしまう最も大きなパフォーマンスイシューとなる。内発的動機によって動いており、(偶然)その習慣を獲得したことによりうまくいったマネージャーだとしても、部下、構成員、子供たちに再現性を持って導くことができない場合にはそのエネルギー生産方式は一世代で終了してしまう。外界への反応の方が一見観測しやすいため、内的構成の変更による外界へのアプローチは困難なように見え(事実よりエネルギーを要求するので困難である。)

外界への反応という一見単純な答えを選んでしまうというのが市場の失敗である。(例えば、値が上がり切った株式を購入する、給与を増やすために転職する、売上を伸ばすために営業会議をする、など)

外界への反応ではなく、内部事情を取り扱うことで、一見関係していないように思える外界を変化させるというのが内発的動機に基づくマネジメントである。

例えば、新卒であれば、

・人生100年に寿命が伸びていく中、80年後、どうやって死にたいか?

・その残り半分40年間の人生の中で、職業を最後どのような実感を持ってキャリアを終了させたいか?

・まずは現在所属している企業とは全く関係のない問いである

→今働いている会社を100年存続させるとか、1000年企業にするなど考えられる思考方法はあるが、あくまで自分の人生が主体であるとすると副次的な問いである、自分の人生にフィードバックとして利益がもたらされるのであれば、今いる会社に貢献するメリットが出てくる。

→例えば、自分が踏んだ軌跡は社会的にも評価されるべきであるとすると、現在いる会社の業績にやっとつながる。エゴはEVAと相関することにより真の価値になるということである。つまり、エゴはプラスの原動力ということである。

内部事情とは、外界の事情とは全く関連性のないように見える、一見狭義のエゴ(≒自己顕示欲の暴走の意味で)のように思えて忌避してしまう問題である。しかし内部構成というものが実はエゴよりも前に存在する前提であり、人が動くという原理原則、原動力であるとしたらどうだろうか。世間で回避される傾向のある自分勝手や自己中心的な振る舞いというのは、自己を核に置かないこと、逆にエゴを肯定しない事から始まっていると言っても過言ではない。自己が主体にない場合、外界との距離感がわからなくなるため、何が自分勝手の暴走で、何が一般的価値(EVA)である正解のエゴかの距離感もわからなくなってしまうのである。

EVAを生み出すとき、それは必ず自分自身の富も同時に増えるということを意味するのである。つまり、EVA20%を主体的に生み出しているマネジメントの個人資産は少なくとも20%、あるいはそれ以上増えるのである。これはエゴが社会的価値と整合性を持ったと言い換えて差し支えない。